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第一部
その141 二人のギルドマスター
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ミナジリ領で色々済ませた俺は、シェンドの町の冒険者ギルドへやって来ていた。
するとギルド受付員のネムが席から立ち上がって俺を迎えた。
「あ、ミケラルドさん! お待ちしておりました! 奥でディック様とゲミッド様がお待ちですよー!」
……はて? 今日は試作品を届けに来ただけなのだが、何故昨日連絡したはずのディックがいるのだろうか?
俺は首を傾げながら他のギルド職員に案内されるがまま、支部長室へ入って行った。
そこでは、金剛力士像の如く仁王立ちした二人のギルドマスターが俺を待っていた。
え、何ココ? 地獄か何か?
俺は顔を強張らせながらソファーに腰を下ろし、二人に聞いた。
「それで……何でディックさんが? 確かに昨日ネムには連絡をお願いしましたけど、流石に早すぎません?」
そう、ディックの体術では一日で首都リーガルからシェンドまで来る事は不可能だ。
「ちょっとした連絡があってな、昨日の時点でマッキリーにいたんだよ」
「マッキリー……という事はサマリア公爵家に?」
「何でそれだけでそこまでわかるんだよ」
「連絡ならギルド通信がある。それでも、ディックさんが動かざるを得ない理由……と考えれば王家からの依頼だと思いまして」
「……当たりだ」
隠していないという事は、密使の類ではないだろう。
……って、ん? もしかして連絡ってアレか? レティシアを俺の嫁にどうかってあれか?
確かにランドルフは俺と一緒にリーガルを出た。あの会談の後、もう一度会ったというのは考えにくい。そうか、道理で。まったく、雑談レベルだろ、そんな連絡。
……まぁ、周囲に伏せるという意味では冒険者ギルドのディックに頼る事は悪くない。
つまり昨日、俺はディックと行き違いでサマリア公爵家に行ったって事か。
そしてディックがその後向かうであろう先はマッキリー。
ネムがリーガルに連絡し、ディックはマッキリーにいる事を知った。
だから今日ここにいるって事か。
「さて、ミケラルド……ネムを抱き込んでどうするつもりだ?」
「ちょ、人聞きが悪いですよゲミッドさん」
「ギルドマスターに逆らう受付嬢は初めてだったものでな」
「どういう事で?」
「昨日、儂がディックに連絡する事を止めたのは、何を隠そうネムだ」
「あ~、そういう事でしたか」
「あれ程強情なネムを見たのは初めてだ。『明日、ミケラルドさんが来るまで連絡はお控えください』と何度も言われてしまったわい」
ネムには悪い事をしたな。今度何かご馳走しよう。
ちょっと考えれば予想出来た事だが、まぁ過ぎた事は仕方がない。
次にディックが言う。
「さぁ、来てやったぞ。ネムのその態度、理由。洗い浚い吐いてもらおうじゃないか」
「既にギルド通信――【水晶】の代替品の事は?」
「儂が話した」
「その話は【水晶】を通して話していないという事でよろしいですね?」
ディックは肩を竦めて口をへの字にした。これは彼なりの肯定なのだろう。
「ネムには……彼女には昨日話してしまったんですよ」
「何をだ?」
「ギルド通信は第三者に盗聴されてるって」
「「なっ!?」」
俺は人差し指を口に持っていき、彼らの声を抑えさせた。
流石ギルドマスターだ。この情報だけでどうすればいいかがわかっている。
「本当なのか、ミケラルド?」
ディックの言葉に俺は頷く。
「嘘でこんな事言わないですよ」
「なるほど、だからネムは儂を止めたのか。儂が【水晶】を使えば、必ずミケラルドの名前が出る」
頭の回転が早い事早い事。話が早くて助かる。
「そういう事です。犯人はおそらく【水晶】をレンタルしてる張本人。あ、一応確認しておきます?」
「出来るのかっ?」
ゲミッドが片眉を上げて驚く。
俺は【闇空間】から一つのマジックスクロールを取り出し、テーブルに置く。
「解析を付与したこのマジックスクロールで【水晶】を見ればすぐかと」
「古代魔法のマジックスクロールだと?」
「出所は内緒です♪」
「真新しい羊皮紙で何を言う……?」
目の付け所がギルドマスターだよなぁ。感心するよ、ホント。
「ゲミッドさん、目が怖いです♪」
「ディック、任せる」
「あぁ」
ディックはそれを持ち、奥の通信室へ向かう。
一分もしない内に彼は戻り、ゲミッドに向かって頷いたのだ。
「まったく……爺共に何て言えばいいのやら……」
爺が「爺」って言うんだから、ギルド本部の人間たちは相当な高齢者たちで構成されてるのだろう。
「いや、すまなかったなミケラルド。貴殿の忠言がなければ、情報を抜き取られ続けていただろう」
どうやら、これまでゲミッドが俺に抱いていた不信感は拭えたようだな。
ディックは一度交渉してるせいか、感心半分、呆れ半分といった様子だ。
「まぁ、まだ現在進行形ですけどね」
「それで、先の話題にあった代替品、用意出来たのか?」
「既に用意しています。どうぞ」
再び【闇空間】を開き、テーブルに置いたそれは現代地球人にとって見慣れたものだった。
しかし彼ら二人のギルドマスターは異世界人。
これが何かはわかるはずもないのだ。
「「これは一体?」」
「【マイク】です」
木彫りのなんちゃってマイクだけどな。
するとギルド受付員のネムが席から立ち上がって俺を迎えた。
「あ、ミケラルドさん! お待ちしておりました! 奥でディック様とゲミッド様がお待ちですよー!」
……はて? 今日は試作品を届けに来ただけなのだが、何故昨日連絡したはずのディックがいるのだろうか?
俺は首を傾げながら他のギルド職員に案内されるがまま、支部長室へ入って行った。
そこでは、金剛力士像の如く仁王立ちした二人のギルドマスターが俺を待っていた。
え、何ココ? 地獄か何か?
俺は顔を強張らせながらソファーに腰を下ろし、二人に聞いた。
「それで……何でディックさんが? 確かに昨日ネムには連絡をお願いしましたけど、流石に早すぎません?」
そう、ディックの体術では一日で首都リーガルからシェンドまで来る事は不可能だ。
「ちょっとした連絡があってな、昨日の時点でマッキリーにいたんだよ」
「マッキリー……という事はサマリア公爵家に?」
「何でそれだけでそこまでわかるんだよ」
「連絡ならギルド通信がある。それでも、ディックさんが動かざるを得ない理由……と考えれば王家からの依頼だと思いまして」
「……当たりだ」
隠していないという事は、密使の類ではないだろう。
……って、ん? もしかして連絡ってアレか? レティシアを俺の嫁にどうかってあれか?
確かにランドルフは俺と一緒にリーガルを出た。あの会談の後、もう一度会ったというのは考えにくい。そうか、道理で。まったく、雑談レベルだろ、そんな連絡。
……まぁ、周囲に伏せるという意味では冒険者ギルドのディックに頼る事は悪くない。
つまり昨日、俺はディックと行き違いでサマリア公爵家に行ったって事か。
そしてディックがその後向かうであろう先はマッキリー。
ネムがリーガルに連絡し、ディックはマッキリーにいる事を知った。
だから今日ここにいるって事か。
「さて、ミケラルド……ネムを抱き込んでどうするつもりだ?」
「ちょ、人聞きが悪いですよゲミッドさん」
「ギルドマスターに逆らう受付嬢は初めてだったものでな」
「どういう事で?」
「昨日、儂がディックに連絡する事を止めたのは、何を隠そうネムだ」
「あ~、そういう事でしたか」
「あれ程強情なネムを見たのは初めてだ。『明日、ミケラルドさんが来るまで連絡はお控えください』と何度も言われてしまったわい」
ネムには悪い事をしたな。今度何かご馳走しよう。
ちょっと考えれば予想出来た事だが、まぁ過ぎた事は仕方がない。
次にディックが言う。
「さぁ、来てやったぞ。ネムのその態度、理由。洗い浚い吐いてもらおうじゃないか」
「既にギルド通信――【水晶】の代替品の事は?」
「儂が話した」
「その話は【水晶】を通して話していないという事でよろしいですね?」
ディックは肩を竦めて口をへの字にした。これは彼なりの肯定なのだろう。
「ネムには……彼女には昨日話してしまったんですよ」
「何をだ?」
「ギルド通信は第三者に盗聴されてるって」
「「なっ!?」」
俺は人差し指を口に持っていき、彼らの声を抑えさせた。
流石ギルドマスターだ。この情報だけでどうすればいいかがわかっている。
「本当なのか、ミケラルド?」
ディックの言葉に俺は頷く。
「嘘でこんな事言わないですよ」
「なるほど、だからネムは儂を止めたのか。儂が【水晶】を使えば、必ずミケラルドの名前が出る」
頭の回転が早い事早い事。話が早くて助かる。
「そういう事です。犯人はおそらく【水晶】をレンタルしてる張本人。あ、一応確認しておきます?」
「出来るのかっ?」
ゲミッドが片眉を上げて驚く。
俺は【闇空間】から一つのマジックスクロールを取り出し、テーブルに置く。
「解析を付与したこのマジックスクロールで【水晶】を見ればすぐかと」
「古代魔法のマジックスクロールだと?」
「出所は内緒です♪」
「真新しい羊皮紙で何を言う……?」
目の付け所がギルドマスターだよなぁ。感心するよ、ホント。
「ゲミッドさん、目が怖いです♪」
「ディック、任せる」
「あぁ」
ディックはそれを持ち、奥の通信室へ向かう。
一分もしない内に彼は戻り、ゲミッドに向かって頷いたのだ。
「まったく……爺共に何て言えばいいのやら……」
爺が「爺」って言うんだから、ギルド本部の人間たちは相当な高齢者たちで構成されてるのだろう。
「いや、すまなかったなミケラルド。貴殿の忠言がなければ、情報を抜き取られ続けていただろう」
どうやら、これまでゲミッドが俺に抱いていた不信感は拭えたようだな。
ディックは一度交渉してるせいか、感心半分、呆れ半分といった様子だ。
「まぁ、まだ現在進行形ですけどね」
「それで、先の話題にあった代替品、用意出来たのか?」
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しかし彼ら二人のギルドマスターは異世界人。
これが何かはわかるはずもないのだ。
「「これは一体?」」
「【マイク】です」
木彫りのなんちゃってマイクだけどな。
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