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第一部
その121 ミケラルドの真骨頂
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「という訳で、神話の時代から新たな魔法を蘇らせちゃいます! いぇい!」
「「いぇーい!」」
再び調査拠点に戻った俺はナタリーへ謝罪した後、新たな作戦を考案していた。
リィたんは言った。「神話の時代の魔法を蘇らせた」と。当然それは転移魔法の事だ。
しかし、今回は別の魔法を蘇らせる。ただそれだけだ。
「ミ、ミケラルド殿……?」
俺の変貌ぶりに驚いたのか、バルトは困った顔で聞いてきた。
「ずっと肩肘張ってたら頭が追いつかなくなるのも当然ですよね。ノンストレスでやらなくちゃ仕事は上手くいかない。そうでしょう、バルトさん!」
「え、あぁ……まぁそうですな」
「という訳で、申し訳ありませんがここでは皆のミックとして進めたいと思います」
「わ、わかりました。しかし神話時代の魔法を蘇らせるとは……?」
「こちらにいるリィたんは神話時代の魔法に詳しいんですよ」
「ほぉ、聡明な方だとは思っておりましたが、古代魔法を専門とされていたのですな?」
神話時代とは即ち、遙か昔……人間と魔族が、勇者と魔王が戦っていた古代の事。その中には、使った者が限定的過ぎて使えなかった魔法もある訳だ。
その大半は、人間代表の一角――賢者が使っていた魔法である。
「して、その魔法とは?」
バルトの質問にリィたんが答える。
「魔法鑑定魔法――【解析】」
俺が持っている【鑑定】は人や物体を調べる特殊技能だが、魔法を調べる事は出来ない。
魔法を調べるには、専門の鑑定魔法が必要。それが【解析】だ。
「つまりその魔法を使い、杭に封じられた魔法の中身を知る訳ですな? がしかし……ミケラルド殿。新たなる魔法を作るにはそれ相応の時間が必要。いつ発動するかわからない魔法を前にしたこの状況では……」
バルトが言いにくそうに言葉を詰まらせる。
しかし、そんな雰囲気を砕くような明るい声で、俺に賛同した者がいた。
「ミックなら大丈夫!」
張りのある快活な声は、皆の耳に優しく触れる。
「ありがとう、ナタリー」
「うんうん! ミックならすぐ出来ちゃうんだから!」
短くも長いこれまでが、ナタリーの中に何を生んだのか。
だが、信頼を言葉にしてくれるくらいには、俺は何かを示せたのかもしれない。
大の大人が雁首そろえる中、ナタリーの発言は皆にどう映ったのか。
流石にこれはわかる。俺の仲間たちが微笑むのだ。そう映ってるに決まっている。
バルトやディーン、ダドリーやクレアが困惑する中、俺はリィたんに説明を求めた。
「解析の魔法は一瞬で発動するものらしい。何せ、相手が魔法を発動する瞬間にその魔法を特定するのだからな」
「後の先として使える魔法……なら雷魔法、もしくは光魔法ですね。その二つなら速攻性の魔法として使えます」
「……ミック、流石に魔法の特定が早すぎるぞ」
「褒めてるのか貶してるのかわからないなぁ」
とぼけた俺に苦笑するリィたん。
「ならば私の中でも答えが出たかもしれん」
「どういう事?」
「全属性の魔法を使える賢者だが、ある記お――記録が残ってる」
今、「記憶」って言おうとしたな。
「他の龍族との戦闘記録はあるが、聡明で崇高で偉大なる水龍リバイアサンとは……戦った事がない」
自分の持ち上げ方が凄いな、リィたん。
「っ! そうか、龍の弱点属性魔法!」
ジェイルがリィたんの意図に気付く。
「そうか、龍族にはそれぞれ弱点となる魔法がある。木龍には火魔法、炎龍には水魔法、雷龍には土魔法、地龍には水魔法、そして水龍には……雷魔法」
ジェイルの説明を聞き俺も理解出来た。
「つまり勇者一行は水龍との戦いを避けていた?」
「なるほど、それで水龍との戦闘記録がない訳ですな。確かに賢者にも苦手な魔法があったと聞いた事があります。それ即ち、人間であるから。人間が不得手とする魔法は闇魔法と水魔法、最後に……雷魔法。ならば、【解析】の魔法属性が雷魔法である可能性は非常に低い。従って、【解析】の魔法は――光魔法」
俺はバルトの要約に頷く。
中にはリーガルのギルドマスターディックのように雷魔法を使える者もいる。
しかし、それはほんの一握りだ。一瞬で発動たりえるならば、雷魔法はない。
「では早速だ。ミック、外に出よう」
「おっけー」
リィたんの誘いに俺がのると、バルトは驚いた様子で目を見開いた。
「何と! もう実施段階へっ!?」
「後は試行錯誤するだけですよ」
そして――――、
◇◆◇ ◆◇◆
「――ウォーターだね」
俺はリィたんの人差し指の先にある魔力の塊を見ながら言った。
「ふむ、ひとまず完成と見るべきだな」
意外な事に、始めて十数分で【解析】の魔法が出来てしまった。
それもそのはずで、魔法自体は非常に簡単なものだったから。
というか、簡単な魔法じゃなければ後出しで相手の魔法を理解する事なんて出来ないのだ。
何回かの試行の中で、光魔法の光によるフラッシュのような一瞬の閃光を放つと、魔法にも薄く繊細な影が出来る事が判明した。【解析】はその影にある情報を読み取るもの。
【鑑定】という特殊能力が目に発動する事を知っていた俺は、すぐにその答えを導き出せた。
そのほとんどが手から発動する魔法だが、こと【解析】に至っては、目から発動するものだと……!
「……す、素晴らしい」
「……古代魔法を一つ、たったこれだけの時間で完成させてしまったのですか」
バルト、そしてクレアは俺を称賛するが、ダドリーとディーンは言葉を失っているようだ。
いや、ディーンは違う。流石族長の息子なだけはある。あの瞳の奥にあるのは驚き以上の恐れ。出来ればそれは、「敵に回すべきではない」の方向に向かってくれると助かるんだが……まぁ、後は誠意の問題だろう。
「ではこれより、杭に掛けられた魔法の再調査をしてきます」
この夜より深い闇魔法――一体どんな魔法が?
「「いぇーい!」」
再び調査拠点に戻った俺はナタリーへ謝罪した後、新たな作戦を考案していた。
リィたんは言った。「神話の時代の魔法を蘇らせた」と。当然それは転移魔法の事だ。
しかし、今回は別の魔法を蘇らせる。ただそれだけだ。
「ミ、ミケラルド殿……?」
俺の変貌ぶりに驚いたのか、バルトは困った顔で聞いてきた。
「ずっと肩肘張ってたら頭が追いつかなくなるのも当然ですよね。ノンストレスでやらなくちゃ仕事は上手くいかない。そうでしょう、バルトさん!」
「え、あぁ……まぁそうですな」
「という訳で、申し訳ありませんがここでは皆のミックとして進めたいと思います」
「わ、わかりました。しかし神話時代の魔法を蘇らせるとは……?」
「こちらにいるリィたんは神話時代の魔法に詳しいんですよ」
「ほぉ、聡明な方だとは思っておりましたが、古代魔法を専門とされていたのですな?」
神話時代とは即ち、遙か昔……人間と魔族が、勇者と魔王が戦っていた古代の事。その中には、使った者が限定的過ぎて使えなかった魔法もある訳だ。
その大半は、人間代表の一角――賢者が使っていた魔法である。
「して、その魔法とは?」
バルトの質問にリィたんが答える。
「魔法鑑定魔法――【解析】」
俺が持っている【鑑定】は人や物体を調べる特殊技能だが、魔法を調べる事は出来ない。
魔法を調べるには、専門の鑑定魔法が必要。それが【解析】だ。
「つまりその魔法を使い、杭に封じられた魔法の中身を知る訳ですな? がしかし……ミケラルド殿。新たなる魔法を作るにはそれ相応の時間が必要。いつ発動するかわからない魔法を前にしたこの状況では……」
バルトが言いにくそうに言葉を詰まらせる。
しかし、そんな雰囲気を砕くような明るい声で、俺に賛同した者がいた。
「ミックなら大丈夫!」
張りのある快活な声は、皆の耳に優しく触れる。
「ありがとう、ナタリー」
「うんうん! ミックならすぐ出来ちゃうんだから!」
短くも長いこれまでが、ナタリーの中に何を生んだのか。
だが、信頼を言葉にしてくれるくらいには、俺は何かを示せたのかもしれない。
大の大人が雁首そろえる中、ナタリーの発言は皆にどう映ったのか。
流石にこれはわかる。俺の仲間たちが微笑むのだ。そう映ってるに決まっている。
バルトやディーン、ダドリーやクレアが困惑する中、俺はリィたんに説明を求めた。
「解析の魔法は一瞬で発動するものらしい。何せ、相手が魔法を発動する瞬間にその魔法を特定するのだからな」
「後の先として使える魔法……なら雷魔法、もしくは光魔法ですね。その二つなら速攻性の魔法として使えます」
「……ミック、流石に魔法の特定が早すぎるぞ」
「褒めてるのか貶してるのかわからないなぁ」
とぼけた俺に苦笑するリィたん。
「ならば私の中でも答えが出たかもしれん」
「どういう事?」
「全属性の魔法を使える賢者だが、ある記お――記録が残ってる」
今、「記憶」って言おうとしたな。
「他の龍族との戦闘記録はあるが、聡明で崇高で偉大なる水龍リバイアサンとは……戦った事がない」
自分の持ち上げ方が凄いな、リィたん。
「っ! そうか、龍の弱点属性魔法!」
ジェイルがリィたんの意図に気付く。
「そうか、龍族にはそれぞれ弱点となる魔法がある。木龍には火魔法、炎龍には水魔法、雷龍には土魔法、地龍には水魔法、そして水龍には……雷魔法」
ジェイルの説明を聞き俺も理解出来た。
「つまり勇者一行は水龍との戦いを避けていた?」
「なるほど、それで水龍との戦闘記録がない訳ですな。確かに賢者にも苦手な魔法があったと聞いた事があります。それ即ち、人間であるから。人間が不得手とする魔法は闇魔法と水魔法、最後に……雷魔法。ならば、【解析】の魔法属性が雷魔法である可能性は非常に低い。従って、【解析】の魔法は――光魔法」
俺はバルトの要約に頷く。
中にはリーガルのギルドマスターディックのように雷魔法を使える者もいる。
しかし、それはほんの一握りだ。一瞬で発動たりえるならば、雷魔法はない。
「では早速だ。ミック、外に出よう」
「おっけー」
リィたんの誘いに俺がのると、バルトは驚いた様子で目を見開いた。
「何と! もう実施段階へっ!?」
「後は試行錯誤するだけですよ」
そして――――、
◇◆◇ ◆◇◆
「――ウォーターだね」
俺はリィたんの人差し指の先にある魔力の塊を見ながら言った。
「ふむ、ひとまず完成と見るべきだな」
意外な事に、始めて十数分で【解析】の魔法が出来てしまった。
それもそのはずで、魔法自体は非常に簡単なものだったから。
というか、簡単な魔法じゃなければ後出しで相手の魔法を理解する事なんて出来ないのだ。
何回かの試行の中で、光魔法の光によるフラッシュのような一瞬の閃光を放つと、魔法にも薄く繊細な影が出来る事が判明した。【解析】はその影にある情報を読み取るもの。
【鑑定】という特殊能力が目に発動する事を知っていた俺は、すぐにその答えを導き出せた。
そのほとんどが手から発動する魔法だが、こと【解析】に至っては、目から発動するものだと……!
「……す、素晴らしい」
「……古代魔法を一つ、たったこれだけの時間で完成させてしまったのですか」
バルト、そしてクレアは俺を称賛するが、ダドリーとディーンは言葉を失っているようだ。
いや、ディーンは違う。流石族長の息子なだけはある。あの瞳の奥にあるのは驚き以上の恐れ。出来ればそれは、「敵に回すべきではない」の方向に向かってくれると助かるんだが……まぁ、後は誠意の問題だろう。
「ではこれより、杭に掛けられた魔法の再調査をしてきます」
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