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第一部
その118 ミケラルド式包囲網
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「何でこうなった……」
「ふっふ~ん、いいじゃない♪ それだけミックが信用されてるって事だよ! うん! 凄い凄い!」
そう言いながらナタリーは俺の頭を撫でてくる。
何故ナタリーが成人男性の体躯である俺の頭を撫でられたのか。それには理由がある。
ナタリーは俺の肩に乗っているからだ。これは所謂、肩車。
三歳男児が十一歳の淑女を肩車する。言葉にすると不可解極まりないこの現状を、我が公的護衛は失笑しながら見ている。
「エメラさんとクロードさんの許可がなければ……ぬぅ」
「んま、それだけミックの力を当てにしてるって事だろうよ。それに、今後はこういう事が増えていくんだろうし、早めに慣れさせておこうって算段じゃないか?」
クマにしてはまともな事を言う。いや、クマはもっと賢いかもしれん。どこぞの世界で魔王軍の幹部とかしててもおかしくない戦闘力を持ってるしな。
「それで、私たちは東でいいんだよね?」
「あぁ、西の聖域付近はその範囲を知ってるダドリーさんがいるリィたんチームに任せた方がいいしな。俺たちは東から南下して目的の場所まで索敵していく」
「俺って必要あるのかねぇ?」
「大丈夫、ちゃんとこき使う予定だ」
「へぇ、それは……嫌だな」
正直過ぎるマックスの感性はとても羨ましくある。
「私は私はっ?」
ナタリーが俺の頭部を揺すりながら聞いてくる。
「マックスと同じだよ。二人には違和感を探して欲しい」
「「違和感?」」
「俺の【特殊能力】、【固有能力】、【魔法】は確かに便利だけど、これを使ったとしても肉眼や肌で感じて得た情報には勝てないって事。魔族を見つける事は簡単かもしれない。でも、魔族の目的、それとこれまでやってきた事を調べるにはそういう情報も必要って事」
事実、この世界で生きている俺だが、まだこの世界に来て数ヶ月だ。
全てを理解出来る程甘い世界じゃない。特にこういう深い森ではな。
「つまり、人が多いにこした事はないって事だな」
「うん、私頑張るっ!」
「という訳で、ナタリー。降りてくれ」
「えぇ~っ!?」
「帰ったらいくらでもやるから」
「降りた!」
聞き分けがいいのか悪いのか、乙女心というのは本当によくわからない。
さて、マックスとナタリーの同意が得られたところで、俺たちの行動が開始した。
因みに、ダドリーが発見した洞窟については、シェルフの南側にある。
ジェイルとクレアは北側の調査を頼んでいるが、当然それは北東と北西も含まれる。
人数が少ない上に広範囲ではあるが、一番危険が少ない地帯だ。一日で終わらせるつもりもないし、これがちょうどいいと思っている。
そして、リィたん、エメラ、ダドリーは西側。そこから南西へ南下し、南、南東を浚うように調べてもらう。
最後に俺たち。このまま南東に向かい、件の洞窟付近を念入りに調査する。そう、洞窟は南東側にあるのだ。
調査を開始して一時間程経過しただろうか、マックスが変なものを発見した。
それは、木々の合間にあった小さな場所だった。
マックス一人が寝そべられるような二畳程の空間。
「おいミック、こりゃ杭……かな?」
「そうみたいだね。それに変だ」
「どういう事だ?」
「この杭、魔力が込められてる」
地面から少しだけ飛び出た杭。それが人工的に作られたものだという事はすぐにわかった。しかしこの魔力、微量だけれど不可解だ。
深い闇に包まれるような微弱な魔力、おそらく闇魔法に関するものだろうが、情報が読めない。一部だけは読み取れるが、大部分が足りない。そんな印象を受ける。
「迂闊に手を触れない方がいい。とりあえずこの地点を地図にチェックして他を探そう。クロードさんには次の定時連絡の時に伝えておくよ」
「わかった」
その後、定時連絡の情報をまとめたところ、おかしな事がわかった。
『という事は、北と西にも同じ杭があったんですね?』
『はい、ジェイルさんとリィたんさんからそう伺っています』
『わかりました。現状は手を出さないように指示を。それと、定時連絡を一時間から三十分に変更。また不審物を発見した時は、随時連絡をください』
『は、はい、わかりました!』
俺がテレパシーを使ってもいいのだが、今後の事を考えると、クロードに頑張ってもらった方がいい。俺に何かが起こった時、こういった行動が出来るように経験しておくのは重要だ。それが実践出来る機会はあまりないだろうからな。まぁ、俺がいる時はそこまで気を張る必要はないだろう。
さて、微弱なモンスターの気配はあるが、以降何も見つからないな。
そろそろ件の洞窟に着いてしまうのだが……?
直後、ナタリーから連絡が入った。
マックス、ナタリーに対しては常時テレパシーを解放している事もあり、すぐに駆け付ける事が出来た。
「これ、さっきと同じ杭……だよね?」
「…………いや、違うものだ。でも魔力は込められている」
正確には全く同じでないというだけ。雰囲気そのものは同じだが、魔力の中にある情報が違う。しかし、これはどこかで……?
「だ、大丈夫かな……?」
「今のところはね。ナタリー、ありがとう」
「う、うん! 沢山探したよ!」
かくれんぼをしている子供の台詞であればなんと可愛かっただろう。
しかし、魔族を探している子供の台詞と考えてしまうと、何というか情緒というか雰囲気がぶちこわしである。
まぁ、何してもナタリーは可愛いのだけれど。
その後あった定時連絡で、更なる情報が更新された。
「……お父さん、何だって?」
「南西と南でまた杭が発見された……」
一体……何が起こってる?
「ふっふ~ん、いいじゃない♪ それだけミックが信用されてるって事だよ! うん! 凄い凄い!」
そう言いながらナタリーは俺の頭を撫でてくる。
何故ナタリーが成人男性の体躯である俺の頭を撫でられたのか。それには理由がある。
ナタリーは俺の肩に乗っているからだ。これは所謂、肩車。
三歳男児が十一歳の淑女を肩車する。言葉にすると不可解極まりないこの現状を、我が公的護衛は失笑しながら見ている。
「エメラさんとクロードさんの許可がなければ……ぬぅ」
「んま、それだけミックの力を当てにしてるって事だろうよ。それに、今後はこういう事が増えていくんだろうし、早めに慣れさせておこうって算段じゃないか?」
クマにしてはまともな事を言う。いや、クマはもっと賢いかもしれん。どこぞの世界で魔王軍の幹部とかしててもおかしくない戦闘力を持ってるしな。
「それで、私たちは東でいいんだよね?」
「あぁ、西の聖域付近はその範囲を知ってるダドリーさんがいるリィたんチームに任せた方がいいしな。俺たちは東から南下して目的の場所まで索敵していく」
「俺って必要あるのかねぇ?」
「大丈夫、ちゃんとこき使う予定だ」
「へぇ、それは……嫌だな」
正直過ぎるマックスの感性はとても羨ましくある。
「私は私はっ?」
ナタリーが俺の頭部を揺すりながら聞いてくる。
「マックスと同じだよ。二人には違和感を探して欲しい」
「「違和感?」」
「俺の【特殊能力】、【固有能力】、【魔法】は確かに便利だけど、これを使ったとしても肉眼や肌で感じて得た情報には勝てないって事。魔族を見つける事は簡単かもしれない。でも、魔族の目的、それとこれまでやってきた事を調べるにはそういう情報も必要って事」
事実、この世界で生きている俺だが、まだこの世界に来て数ヶ月だ。
全てを理解出来る程甘い世界じゃない。特にこういう深い森ではな。
「つまり、人が多いにこした事はないって事だな」
「うん、私頑張るっ!」
「という訳で、ナタリー。降りてくれ」
「えぇ~っ!?」
「帰ったらいくらでもやるから」
「降りた!」
聞き分けがいいのか悪いのか、乙女心というのは本当によくわからない。
さて、マックスとナタリーの同意が得られたところで、俺たちの行動が開始した。
因みに、ダドリーが発見した洞窟については、シェルフの南側にある。
ジェイルとクレアは北側の調査を頼んでいるが、当然それは北東と北西も含まれる。
人数が少ない上に広範囲ではあるが、一番危険が少ない地帯だ。一日で終わらせるつもりもないし、これがちょうどいいと思っている。
そして、リィたん、エメラ、ダドリーは西側。そこから南西へ南下し、南、南東を浚うように調べてもらう。
最後に俺たち。このまま南東に向かい、件の洞窟付近を念入りに調査する。そう、洞窟は南東側にあるのだ。
調査を開始して一時間程経過しただろうか、マックスが変なものを発見した。
それは、木々の合間にあった小さな場所だった。
マックス一人が寝そべられるような二畳程の空間。
「おいミック、こりゃ杭……かな?」
「そうみたいだね。それに変だ」
「どういう事だ?」
「この杭、魔力が込められてる」
地面から少しだけ飛び出た杭。それが人工的に作られたものだという事はすぐにわかった。しかしこの魔力、微量だけれど不可解だ。
深い闇に包まれるような微弱な魔力、おそらく闇魔法に関するものだろうが、情報が読めない。一部だけは読み取れるが、大部分が足りない。そんな印象を受ける。
「迂闊に手を触れない方がいい。とりあえずこの地点を地図にチェックして他を探そう。クロードさんには次の定時連絡の時に伝えておくよ」
「わかった」
その後、定時連絡の情報をまとめたところ、おかしな事がわかった。
『という事は、北と西にも同じ杭があったんですね?』
『はい、ジェイルさんとリィたんさんからそう伺っています』
『わかりました。現状は手を出さないように指示を。それと、定時連絡を一時間から三十分に変更。また不審物を発見した時は、随時連絡をください』
『は、はい、わかりました!』
俺がテレパシーを使ってもいいのだが、今後の事を考えると、クロードに頑張ってもらった方がいい。俺に何かが起こった時、こういった行動が出来るように経験しておくのは重要だ。それが実践出来る機会はあまりないだろうからな。まぁ、俺がいる時はそこまで気を張る必要はないだろう。
さて、微弱なモンスターの気配はあるが、以降何も見つからないな。
そろそろ件の洞窟に着いてしまうのだが……?
直後、ナタリーから連絡が入った。
マックス、ナタリーに対しては常時テレパシーを解放している事もあり、すぐに駆け付ける事が出来た。
「これ、さっきと同じ杭……だよね?」
「…………いや、違うものだ。でも魔力は込められている」
正確には全く同じでないというだけ。雰囲気そのものは同じだが、魔力の中にある情報が違う。しかし、これはどこかで……?
「だ、大丈夫かな……?」
「今のところはね。ナタリー、ありがとう」
「う、うん! 沢山探したよ!」
かくれんぼをしている子供の台詞であればなんと可愛かっただろう。
しかし、魔族を探している子供の台詞と考えてしまうと、何というか情緒というか雰囲気がぶちこわしである。
まぁ、何してもナタリーは可愛いのだけれど。
その後あった定時連絡で、更なる情報が更新された。
「……お父さん、何だって?」
「南西と南でまた杭が発見された……」
一体……何が起こってる?
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