114 / 566
第一部
その113 ミケラルド子爵
しおりを挟む
翌日の昼、俺はランドルフと共にリーガル城へ登城していた。
幾人かの貴族たちに囲まれ、玉座にはあの……リーガル王。
「面をあげい」
跪いた俺は、リーガル王の許可をもらい顔を上げる。
立ち並ぶ貴族のお歴々。見知った顔はランドルフのみ。
しかしながら、これからは彼らの顔を覚えておかねばならない。
「王商ミケラルド、召致に応じ参上致しました」
「うむ、先程バルト殿はリーガルを発たれた。ミケラルド商店の礼を重んじる厚意に大いに感謝していた」
「過分な言葉にございます」
「そう改まるでない。此度の功績を余は高く評価している」
「ありがたき幸せ」
「さて、褒美は何が良いかのう……ランドルフ?」
相変わらず狸な王様だ事。
まぁ、それ以上に侯爵に信頼を置いている王を演じているんだろうけどな。
「はっ、今後の事を踏まえ、ミケラルド殿に爵位をお与えになってはいかがでしょうか」
「ほう、それは良き考えだな。なぁ皆の者?」
侯爵が提案して王が納得したら首を縦に振るしかないんだよ。
ほら見ろ、皆ぎこちない笑い浮かべてるじゃないか。
腹の中はどうかわからないが、快く思わない者もいるだろう。
しかし、言い返せるだけの功績を持った者がいないのも事実。
「ミケラルド殿、立ち上がられい」
「はっ」
「御前へ」
ランドルフの指示により、俺はリーガル王の前まで歩きまた跪く。
リーガル王は俺の頭部を右手で軽く触れ、低く、しかし通る声で言い放つ。
「我、ブライアン・フォン・リーガルがミケラルドに任ずる。これより其方は子爵の地位を以て余に尽くせ」
「……謹んで拝命致します」
「ミケラルド、其方の双肩に民の命がある事、努々忘れるでないぞ……!」
「はっ!」
◇◆◇ ◆◇◆
「づ、づがれだぁ……」
「はっはっはっは! 遂にミケラルド殿も貴族か! いや、ミナジリ卿と呼べばよろしいかな?」
「ホント、勘弁してくださいよ……でも、本当に良かったんですか? オードの名前貰っちゃって?」
「構わぬよ。これも一種のパフォーマンスみたいなものだ。いいではないか。【ミケラルド・オード・ミナジリ】……耳に慣れれば心地良いものだぞ? はっはっはっは!」
帰りの馬車の中、俺は豪快に笑うランドルフを前に、ぐったりと肩を落としていた。
貴族階級というのはこれだから嫌いだ。
当然、サマリア侯爵であるランドルフには好意的だ。しかしそういう問題でもない。あの空気感はどうも好きになれない。これからあの世界にも浸からなくちゃいけないと考えると、溜め息も出ようものだ。
貴族ともなれば大層な名前も必要である。ファーストネームこそミケラルドであるが、ミドルネームはサマリア侯爵家のミドルネームでもある【オード】を貰った。そして、ラストネームは当然【ミナジリ】である。まだあの村の名前が広まっている訳でもない。
だが、このラストネームが、全世界に広まるため、ここから先も頑張らなくてはいけないだろう。
「ミナジリ卿」
「それ、返事しなくちゃいけないやつです?」
「はっはっはっは! 何事も慣れだぞ、ミナジリ卿!」
「やっぱり呼んだだけじゃないですか!」
「はっはっはっはっは!」
◇◆◇ ◆◇◆
ったく、あのランドルフめ……いつか仕返ししてやる。
まぁ、これからはあの人の力をもっと頼る事になるし、無下には出来ないけどな。
さて、ランドルフに言われた合流場所はここら辺だが?
しっかし、短時間でシェンドに行けるって知ってるからってリーガル国からシェンドの町に移動っておかしいだろう。まぁ、ここからが一番シェルフに近いらしいけどな。
「ぷ、くくく……ミ、ミケラルド様っ!」
俺の聞き間違いじゃなければ、俺は今笑われた後呼ばれた気がする。
「サマリア侯爵様よりシェルフまでの護衛を言いつかったマックスと申しますっ! く……くくくく……」
「やっぱりお前かマックス……」
「だ、だめだっ! ぷっはっはっはっは! ミ、ミケラルドがき、貴族……!」
「よし、クマ鍋にしてやるからそこに直れ」
「じょ、冗談だよ冗談。くくくく……」
自分の冗談でそこまで笑えたら幸せだろうな。
「だけど何でマックスなんだ?」
「サマリア侯爵様の気遣いだろ?」
「やっぱりそういうものか」
「ミックには私兵がいるから公的な護衛は俺だけだ」
「私兵……ね」
「んま、あんなほんわかしてる私兵は初めて見たけどね」
シェンドの町の西門で待つ我が私兵たち。
「ミック! 待ったぞ!」
水龍リバイアタンのリィたん。
「新たな食材が……待っている!」
イケオッサンへとチェンジした、勇者殺しことリザードマンのジェイル。
「ミケラルドさーん!」
人妻エメラ。
「懐かしき故郷へ……」
その夫でありエルフのクロード。
「ミックゥ~! 早く早くーっ!」
そして、チェンジで人間にしているが、本当はハーフエルフのナタリー。
これから行く先はエルフの国、シェルフ。
何が起きるかはわからない。けど、仲間と一緒ならば、何でも乗り越えられる気がするのは気のせいだろうか。
いや、気のせいではない。
彼が、彼女が、皆がいれば、俺は何でも出来るんだ。
「行こう、シェルフへっ!!」
幾人かの貴族たちに囲まれ、玉座にはあの……リーガル王。
「面をあげい」
跪いた俺は、リーガル王の許可をもらい顔を上げる。
立ち並ぶ貴族のお歴々。見知った顔はランドルフのみ。
しかしながら、これからは彼らの顔を覚えておかねばならない。
「王商ミケラルド、召致に応じ参上致しました」
「うむ、先程バルト殿はリーガルを発たれた。ミケラルド商店の礼を重んじる厚意に大いに感謝していた」
「過分な言葉にございます」
「そう改まるでない。此度の功績を余は高く評価している」
「ありがたき幸せ」
「さて、褒美は何が良いかのう……ランドルフ?」
相変わらず狸な王様だ事。
まぁ、それ以上に侯爵に信頼を置いている王を演じているんだろうけどな。
「はっ、今後の事を踏まえ、ミケラルド殿に爵位をお与えになってはいかがでしょうか」
「ほう、それは良き考えだな。なぁ皆の者?」
侯爵が提案して王が納得したら首を縦に振るしかないんだよ。
ほら見ろ、皆ぎこちない笑い浮かべてるじゃないか。
腹の中はどうかわからないが、快く思わない者もいるだろう。
しかし、言い返せるだけの功績を持った者がいないのも事実。
「ミケラルド殿、立ち上がられい」
「はっ」
「御前へ」
ランドルフの指示により、俺はリーガル王の前まで歩きまた跪く。
リーガル王は俺の頭部を右手で軽く触れ、低く、しかし通る声で言い放つ。
「我、ブライアン・フォン・リーガルがミケラルドに任ずる。これより其方は子爵の地位を以て余に尽くせ」
「……謹んで拝命致します」
「ミケラルド、其方の双肩に民の命がある事、努々忘れるでないぞ……!」
「はっ!」
◇◆◇ ◆◇◆
「づ、づがれだぁ……」
「はっはっはっは! 遂にミケラルド殿も貴族か! いや、ミナジリ卿と呼べばよろしいかな?」
「ホント、勘弁してくださいよ……でも、本当に良かったんですか? オードの名前貰っちゃって?」
「構わぬよ。これも一種のパフォーマンスみたいなものだ。いいではないか。【ミケラルド・オード・ミナジリ】……耳に慣れれば心地良いものだぞ? はっはっはっは!」
帰りの馬車の中、俺は豪快に笑うランドルフを前に、ぐったりと肩を落としていた。
貴族階級というのはこれだから嫌いだ。
当然、サマリア侯爵であるランドルフには好意的だ。しかしそういう問題でもない。あの空気感はどうも好きになれない。これからあの世界にも浸からなくちゃいけないと考えると、溜め息も出ようものだ。
貴族ともなれば大層な名前も必要である。ファーストネームこそミケラルドであるが、ミドルネームはサマリア侯爵家のミドルネームでもある【オード】を貰った。そして、ラストネームは当然【ミナジリ】である。まだあの村の名前が広まっている訳でもない。
だが、このラストネームが、全世界に広まるため、ここから先も頑張らなくてはいけないだろう。
「ミナジリ卿」
「それ、返事しなくちゃいけないやつです?」
「はっはっはっは! 何事も慣れだぞ、ミナジリ卿!」
「やっぱり呼んだだけじゃないですか!」
「はっはっはっはっは!」
◇◆◇ ◆◇◆
ったく、あのランドルフめ……いつか仕返ししてやる。
まぁ、これからはあの人の力をもっと頼る事になるし、無下には出来ないけどな。
さて、ランドルフに言われた合流場所はここら辺だが?
しっかし、短時間でシェンドに行けるって知ってるからってリーガル国からシェンドの町に移動っておかしいだろう。まぁ、ここからが一番シェルフに近いらしいけどな。
「ぷ、くくく……ミ、ミケラルド様っ!」
俺の聞き間違いじゃなければ、俺は今笑われた後呼ばれた気がする。
「サマリア侯爵様よりシェルフまでの護衛を言いつかったマックスと申しますっ! く……くくくく……」
「やっぱりお前かマックス……」
「だ、だめだっ! ぷっはっはっはっは! ミ、ミケラルドがき、貴族……!」
「よし、クマ鍋にしてやるからそこに直れ」
「じょ、冗談だよ冗談。くくくく……」
自分の冗談でそこまで笑えたら幸せだろうな。
「だけど何でマックスなんだ?」
「サマリア侯爵様の気遣いだろ?」
「やっぱりそういうものか」
「ミックには私兵がいるから公的な護衛は俺だけだ」
「私兵……ね」
「んま、あんなほんわかしてる私兵は初めて見たけどね」
シェンドの町の西門で待つ我が私兵たち。
「ミック! 待ったぞ!」
水龍リバイアタンのリィたん。
「新たな食材が……待っている!」
イケオッサンへとチェンジした、勇者殺しことリザードマンのジェイル。
「ミケラルドさーん!」
人妻エメラ。
「懐かしき故郷へ……」
その夫でありエルフのクロード。
「ミックゥ~! 早く早くーっ!」
そして、チェンジで人間にしているが、本当はハーフエルフのナタリー。
これから行く先はエルフの国、シェルフ。
何が起きるかはわからない。けど、仲間と一緒ならば、何でも乗り越えられる気がするのは気のせいだろうか。
いや、気のせいではない。
彼が、彼女が、皆がいれば、俺は何でも出来るんだ。
「行こう、シェルフへっ!!」
0
お気に入りに追加
447
あなたにおすすめの小説
辺境の農村から始まる俺流魔工革命~錬金チートで荒れ地を理想郷に変えてみた~
昼から山猫
ファンタジー
ブラック企業に勤め過労死した俺、篠原タクミは異世界で農夫の息子として転生していた。そこは魔力至上主義の帝国。魔力が弱い者は下層民扱いされ、俺の暮らす辺境の農村は痩せた土地で飢えに苦しむ日々。
だがある日、前世の化学知識と異世界の錬金術を組み合わせたら、ありふれた鉱石から土壌改良剤を作れることに気づく。さらに試行錯誤で魔力ゼロでも動く「魔工器具」を独自開発。荒地は次第に緑豊かな農地へ姿を変え、俺の評判は少しずつ村中に広まっていく。
そんな折、国境付近で魔物の群れが出現し、貴族達が非情な命令を下す。弱者を切り捨てる帝国のやり方に疑問を抱いた俺は、村人達と共に、錬金術で生み出した魔工兵器を手に立ち上がることを決意する。
これは、弱き者が新たな価値を創り出し、世界に挑む物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
最弱テイマーの成り上がり~役立たずテイマーは実は神獣を従える【神獣使い】でした。今更戻ってこいと言われてももう遅い~
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティーに所属するテイマーのカイトは使えない役立たずだからと追放される。
さらにパーティーの汚点として高難易度ダンジョンに転移され、魔物にカイトを始末させようとする。
魔物に襲われ絶体絶命のピンチをむかえたカイトは、秘められた【神獣使い】の力を覚醒させる。
神に匹敵する力を持つ神獣と契約することでスキルをゲット。さらにフェンリルと契約し、最強となる。
その一方で、パーティーメンバーたちは、カイトを追放したことで没落の道を歩むことになるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる