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第一部
その38 競争
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翌朝、ジェイルとナタリーが頑張っている中、開拓地に山から流れる川の水を水路として流した。
因みに、リィたんはクロード家の方に水路を引いていた。
これで、この家族が水に困る事はないだろう。
「やったぁ! 念願の畑が作れるよ!」
「おぉ、美味しい野菜期待してるからな、ナタリー!」
ナタリーは堆肥などの農業技術を知っているのだろうか。あとでテレパシーで聞いてみるか。
何故ここで聞かないか。それは、時間が有限だからである。
事の始まりはリィたんの提案から。
「ミック。どうやらここらでミックの手に余る事態は少ないようだ。そこで、私から一つ提案がある」
「ん?」
「競争しよう!」
「……へぇ、面白そうじゃん」
という簡単な流れで、どちらが早くランクAになれるか、勝負が始まったのだ。
競争は既に始まっている。
それは、各自水路を引き終わった段階でスタートなのだ。
「それじゃあ行ってくる!」
「うむ、精進しろ」
「行ってらっしゃい! ミック頑張ってねー!」
ジェイルとナタリーに見送られ、俺は早速シェンドの町に着いた。
「何っ!?」
俺の隣を通り過ぎる美女。
巨大な麻袋を片手に、俺を横目で見ながらニヤリと笑う。
くそ、リィたんに先を越されたか!
「なんだ、あの二人、パーティ解散したのか!?」
「ならあのイケメンは私のパーティに!」
「お、おい、リィたんを誘ってみようぜ!」
とか言われてるが、そんな訳ないだろう。
しかし、今は競争の時。外野に構ってる暇はない。
俺はランクCの適当な依頼をとり、受付に持って行く。
「あ、ミケラルドさんちょうどよかった!」
「へ?」
俺の登場に、何故かギルド受付嬢のネムが喜んで迎えたのだ。
「リィたんさんは聞く耳もってくれるような状況じゃなかったので、ミケラルドさんにお願いしちゃおうかな~?」
少し遠回しに話すネム。
おそらくこれがリィたんの「聞く耳もたなかった」理由なのではないだろうか?
「急いでランクAに上がる必要があるんです。時間かかるようでしたら別の人にお願いします」
おそらく、ネムが提案しようとしているのは、ギルド受付嬢が、その特権で選ぶ【特殊依頼】。
これは、信頼出来る冒険者をギルド側が選んで依頼するといった、重要な依頼という事だ。つまり、言い換えれば、絶対に失敗出来ない、もしくは失敗して欲しくない依頼なのだ。
「わわわっ! すみません。って、ミケラルドさんランクCですよね? ランクB通り越してランクAって……一体どういう事なんです?」
「リィたんとの勝負です。負けたら俺が罰ゲームなんです」
「……あぁ~、道理で」
リィたんが強引にとった依頼の原因と、俺たちがソロで動いている理由を察したようで、ネムは呆れながら納得したようだ。
「依頼というのは、実はこれなんです」
受付側に置いてあった依頼書の一枚を俺に見せるネム。
特殊依頼案件――西の山を根城にする盗賊の討伐、か。
黙読する俺を窺うネム。
「いいですよ。報酬も金貨三十枚と、悪くなさそうな案件です」
「やったぁ~♪ それじゃあ受理しちゃいますね!」
「あ、受理する前に確認したい事があります」
「はい? 何でしょう?」
「盗賊の生死、奪われた物の所有権、人質がいた場合の対応についてです」
「生死は問いません。生け捕りに出来るのであればそれに越した事はありませんが、これまで成功したケースは限りなく少ないです。あくまで冒険者の生存が大前提です。そして、盗品に関してはミケラルドさんの所有物としてもらって結構です。依頼内容が盗品の奪還などでしたら話は別ですが、今回そういった特殊事項はございません。最後に、人質や捕虜がいた場合ですが、これも出来る限り救って下さい。先に述べた、あくまで冒険者の生存が前提ですが、人質を無視して行動するような事は可能な限り避けてください」
盗賊は殺して構わない。盗品の所有権は手に入れた場合俺の物。人質優先の行動……か。
「わかりました。手続きをお願いします」
「はい、宜しくお願い致します」
「あ、ついでにこれも」
「え?」
ランクCになった事で、一人が受けられる最大依頼数は三件となったのだ。利用しない手はないだろう?
俺が受けた依頼は「盗賊討伐」、「キラーウルフ討伐」、「ゴブリン集落の破壊」だ。
正直、北西の山を根城にする、ゴブリン集落の破壊が一番大変なんじゃないかって思うあたり、俺はまだ人界に慣れていないのだろう。
ギルドが盗賊討伐を特殊依頼にしたのは、人間の知恵故だろうな。ゴブリンも頭が回るが、人間には及ばない。群れを作った場合、どちらが怖くなるのかは瞭然だ。
北西の草原に出現するキラーウルフは、ダイアウルフの上位種で、人間を常食とする狼だ。ダイアウルフと同じで大きな牙を持ち帰れば問題ないだろう。
どれも西に集中する依頼だ。クロード家に近い依頼は、安全のため出来るだけ消化しておきたい。
「よし! それじゃあ早速とりかかるか!」
因みに、リィたんはクロード家の方に水路を引いていた。
これで、この家族が水に困る事はないだろう。
「やったぁ! 念願の畑が作れるよ!」
「おぉ、美味しい野菜期待してるからな、ナタリー!」
ナタリーは堆肥などの農業技術を知っているのだろうか。あとでテレパシーで聞いてみるか。
何故ここで聞かないか。それは、時間が有限だからである。
事の始まりはリィたんの提案から。
「ミック。どうやらここらでミックの手に余る事態は少ないようだ。そこで、私から一つ提案がある」
「ん?」
「競争しよう!」
「……へぇ、面白そうじゃん」
という簡単な流れで、どちらが早くランクAになれるか、勝負が始まったのだ。
競争は既に始まっている。
それは、各自水路を引き終わった段階でスタートなのだ。
「それじゃあ行ってくる!」
「うむ、精進しろ」
「行ってらっしゃい! ミック頑張ってねー!」
ジェイルとナタリーに見送られ、俺は早速シェンドの町に着いた。
「何っ!?」
俺の隣を通り過ぎる美女。
巨大な麻袋を片手に、俺を横目で見ながらニヤリと笑う。
くそ、リィたんに先を越されたか!
「なんだ、あの二人、パーティ解散したのか!?」
「ならあのイケメンは私のパーティに!」
「お、おい、リィたんを誘ってみようぜ!」
とか言われてるが、そんな訳ないだろう。
しかし、今は競争の時。外野に構ってる暇はない。
俺はランクCの適当な依頼をとり、受付に持って行く。
「あ、ミケラルドさんちょうどよかった!」
「へ?」
俺の登場に、何故かギルド受付嬢のネムが喜んで迎えたのだ。
「リィたんさんは聞く耳もってくれるような状況じゃなかったので、ミケラルドさんにお願いしちゃおうかな~?」
少し遠回しに話すネム。
おそらくこれがリィたんの「聞く耳もたなかった」理由なのではないだろうか?
「急いでランクAに上がる必要があるんです。時間かかるようでしたら別の人にお願いします」
おそらく、ネムが提案しようとしているのは、ギルド受付嬢が、その特権で選ぶ【特殊依頼】。
これは、信頼出来る冒険者をギルド側が選んで依頼するといった、重要な依頼という事だ。つまり、言い換えれば、絶対に失敗出来ない、もしくは失敗して欲しくない依頼なのだ。
「わわわっ! すみません。って、ミケラルドさんランクCですよね? ランクB通り越してランクAって……一体どういう事なんです?」
「リィたんとの勝負です。負けたら俺が罰ゲームなんです」
「……あぁ~、道理で」
リィたんが強引にとった依頼の原因と、俺たちがソロで動いている理由を察したようで、ネムは呆れながら納得したようだ。
「依頼というのは、実はこれなんです」
受付側に置いてあった依頼書の一枚を俺に見せるネム。
特殊依頼案件――西の山を根城にする盗賊の討伐、か。
黙読する俺を窺うネム。
「いいですよ。報酬も金貨三十枚と、悪くなさそうな案件です」
「やったぁ~♪ それじゃあ受理しちゃいますね!」
「あ、受理する前に確認したい事があります」
「はい? 何でしょう?」
「盗賊の生死、奪われた物の所有権、人質がいた場合の対応についてです」
「生死は問いません。生け捕りに出来るのであればそれに越した事はありませんが、これまで成功したケースは限りなく少ないです。あくまで冒険者の生存が大前提です。そして、盗品に関してはミケラルドさんの所有物としてもらって結構です。依頼内容が盗品の奪還などでしたら話は別ですが、今回そういった特殊事項はございません。最後に、人質や捕虜がいた場合ですが、これも出来る限り救って下さい。先に述べた、あくまで冒険者の生存が前提ですが、人質を無視して行動するような事は可能な限り避けてください」
盗賊は殺して構わない。盗品の所有権は手に入れた場合俺の物。人質優先の行動……か。
「わかりました。手続きをお願いします」
「はい、宜しくお願い致します」
「あ、ついでにこれも」
「え?」
ランクCになった事で、一人が受けられる最大依頼数は三件となったのだ。利用しない手はないだろう?
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どれも西に集中する依頼だ。クロード家に近い依頼は、安全のため出来るだけ消化しておきたい。
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