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37話 スライムリストバンド
しおりを挟むかなり小さくなったな……
いつものダンジョン探索後の気絶から目覚めた俺が最初に感じた感情は"悲しさ"
愛用のスライム座布団がハンカチくらいに薄く小さくなっていた。
今まで徐々に小さくなっていたのが、ここに来て加速したみたいだ。
今回の探索は5階層のボス戦に加え、銀スライムの3日に及ぶ戦闘など今までの探索の中ではトップクラスに頑張ったもんな。
使用したスキルの回数ならはダントツでトップだろう。
となると再びスライム座布団を手に入れる為、ボス撃破マラソンをしないとダメなわけだ。
はぁ……出現率、異常なくらい低いからな
でも、これから先、スライム座布団が無いと俺の肉体と精神が持たないのは確実だしな。
近いうちに本腰を入れて考えないといけない重要課題だな。
まぁ、タムタムのスライム座布団は全然減ってないからそれを使ってもいいが、その瞬間、俺は殺されるだろうな。
あいつ自分のものに対する執着かめっちゃ強いしな
ちなみにタムタムは俺より先に目覚めて、出かけたみたいだ。
ついでにスライム枕も持っていったのだろう。スライム枕ごといなくなっている。全く用心深い奴だ。
おそらく敷地内のどこかにいて、そのうち帰ってくるだろう。
さぁ、いつも同様、ドロップアイテムの確認をしよう。
今回のドロップアイテムはスライム生地のリストバンドだな。
まずは付けてみるとしよう。
手首にスライム生地のリストバンドを取り付ける。
心地良いプニッと感が手首をホールドする。
「ぅおぉ!?……すごいな」
これは付けた瞬間に効果をすぐに感じ取れた。
このリストバンドの効果は"柔軟性"だ。
付けた瞬間に全身の可動域が広がった気がする。
まるで全身の錆が取れたような感覚だ。
さすがスライムシリーズ、予想不能だが期待は裏切らない。
試しに立った状態で前屈をしてみる。
手のひら全体が床にペタッとついた。
ふくらはぎの裏が張るような感覚は一切ない。
体操の選手並みに身体が柔らかくなっている。
柔軟性の向上により、身体が全体的に軽く感じるし、一つ一つの動作が滑らかになった気がする。
この効果は今までの中で一番ダンジョンアイテムっぽいな。
そして、更にこのリストバンドは"良い匂い"がするという追加効果もあるみたいだ。身体のどこを嗅いでも甘くも爽やかな良い香りが全身から香る。
これは香水など人工的なものでは出せない香りだ。
まぁ、ダンジョン探索には全く不要だが、いずれ来るであろう加齢臭を防げるのはかなり嬉しい。
とりあえずこれは常に装着しておこう。
ドロップアイテムの確認を済ませた俺は今回の獲得した魔石を整理し、以前の持ち込みきれなかった魔石も合わせて、換金センターに売りに行くことにした。
*****
「おぉ、かなり高く売れたな」
俺は昼ごはんを食べながら、先ほど換金センターより送られてきた買取明細書を眺める。
買取額はざっと500万円。
魔石の量こそ前回より少なかったが、ボスの魔石が今回は多く、特に5階層ボスの魔石はかなり高く売れたようだ。
これで貯金額はついに目標の"1000万円"を達成した。
まさか貯金額が4桁万円になる日が来るとは……この嬉しさを数ヶ月前の俺に伝えたいくらいだ。
気分次第で理不尽な説教をしてくる上司に苦しんでいた過去の俺よ。
この世に存在するありとあらゆる暴言は浴びた気がする。
あまりに辛すぎて原因不明の発熱で休んだ日もあったな。
だけど今では貯金1000万円……最高だ。
報われたな…
とはいえ、今からの用事で減ることになるんだけどな。
だが、これは未来への投資だと割り切ろう。
「タムタムー!お前の武器を買いに行くぞ!」
俺は少し大きめな声でタムタムを呼ぶ。
この部屋にはいないが、おそらく聞こえているだろう
奴の聴力はすごいからな
「ニャ」
少しして鳴き声と共にどこからともなく現れるタムタム
こいつは本当、家のどこにいるのだろうか
「これから俺の行きつけの武具店にお前も一緒に連れていこうと思うんだけど、どうだ?」
今のタムタムは見た目的にもレベルアップした猫という点でもかなり世間的に珍しい存在になっている。
だが管理局で登録は済んでいるし、外出時も専用リードさえ付けていれば法律的には何も問題無い。
後、今回は車で移動だし、人の目にもほとんど触れないし。
行く予定のモルワン武具店の店主は言葉は荒いが人間としては信用できるしな。
後はこいつの気持ち次第だ
無理強いをするつもりは無い
「ニャ」
あれ?あっさり頷いた。
「いいのか?」
あまりのあっさりさに不安になった俺はもう一度聞き直す。
「ニャ」
うん、どうやら全く問題無いらしい。
この猫、ほんと肝がすわっているというか動じないよな。
出会った時の警戒心はどこにいったんだろう。
「よし、じゃあ行くか!」
俺はタムタムを車に乗せ、モルワン武具店に出発した。
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