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24.ラシーア帝国の貴族

外伝13 ダイヤ伯爵視点

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俺はダイツク・ダイヤ。

簡単に説明すると日本の都会で産まれた。
優しくも厳しい、尊敬できる両親が俺を一人前に育ててくれた。

俺は数字で計ると一流と言われている大学を卒業し、一流と言われる企業で働いていた。順調に出世し、そのあともその時の役割で頑張った。

そして突然俺の環境が変わる出来事があった。

俺はその日の業務を終え夜になったが買い物をし、比較的人通りのない道を歩いていた。

真っ暗で、それでいて規則的に街灯が並ぶ道。なんとなく誰かに見られていると、科学では証明できない感覚があった。

気味が悪く早足で自宅という目的地に急いでいると、道の真ん中に寝そべっている老人がいた。

いくら車通りが少ないところとは言え、轢かれ、死ぬ可能性がある。
ここで何も行動をせずに明日のニュースで流れるのは気分が悪いと思い、声をかけた。

声をかけた人物は想像通り酒臭く、泥酔して眠りこけてしまったようだった。

俺はしょうがなく力が入っていない思い老人を担ぎ道路脇に移動しようとした。

老人の脇に腕を入れ「よっ!」と一人で呟いたとき、少し先の十字路からこちらに曲がってくる車がいた。

俺はさすがに気づくだろうと高をくくっていたが、一定の速度で近づいてきた。

段々車が近くに来るにつれ景色がスローモーションに感じる、「ヤバイ!」と声が出たときには宙を待っていた・・・。

死んだ・・・。


不思議と生命の終わりを感じたとき、真っ白な部屋にいた。

その部屋ではどこから出現したのか、魔法の神と名乗る人型がシチランジンに転移してあげると言いった。

・・・・
・・・・

気づいたときには森にいた。
俺は今何が起きているのかわからなかったが、不穏な気配を感じ、移動を開始した。
移動してすぐに気づいたのは、足取りが軽いことだった。
不思議に思い水たまりがあったので覗いてみると、若返っていた。
綺麗に姿が映っているわけではないが、二十歳ころの自分の姿に思えた。

移動再会後は運が良いのか運命なのか、街に怪我もなく到着した。

到着した街は、本で見た中世の姿で、壁に囲まれた街を守っているのか、鎧を着た男が立っていた。

その男は厳ついわりに親切で、アドバイス通り俺は冒険者となった。
ここでは身分証がないと行動しづらいようだった。

ここで手に入れた身分証。たかが身分証だが手に入れたからには行動しないといけないと思い、依頼と言われるものを受けてみた。

その依頼は薬草を規定の数納めてもらいたいと書いており、俺は群生地を調べ、できる限り多く運べるように準備した。

薬草採取をしている間に、冒険者ギルドで学習した魔物と呼ばれる生き物が出現した。

出現した魔物はゴブリンと呼ばれ、忌み嫌われていた。

そんな魔物だったから、目についたゴブリンは全て倒していた。

俺にとっての初依頼は採取だったが、納めた量で驚かれた。

・・・

初依頼は無事に終えお金に余裕が出たから必要な物を買うため店を回った。

お金にどれくらい余裕があるかわからなかったので、日本で言うフリーマーケットの様なところを見て回った。

その中で俺はヴィンテージな鞄が気に入り安く購入すると、魔道具と呼ばれるものだったらしい。コンテナ一台分は入るバック。

これはあとから知ったのだが、買うとなるとあのときの金額では絶対に手に入れられる物ではなかった。

たまたまあのときは会話をして店主に気に入られたが、運が良かったのだろう。

・・・

俺は装備を整えたことで浮かれ、依頼の最中目的の魔物以外も倒していた。

少しでも生活が楽になるかとその大きな魔物を冒険者ギルドに納めると驚かれた。

・・・・

そのあとも一生懸命生きた。
魔法の神と名乗る者が関わっていたので魔法が使えるかと思っていると、簡単に魔素魔力を感じた。
その魔素魔力を自然、化学、物理現象を基にコントロールしようとすると、魔法と呼ばれるものを使うことが出来た。

そうやってソロで冒険者として活動し、魔法の可能性を探っていると、近くで襲われている人がいる気配がした。
それは皇帝の娘が移動中に魔物に襲われ、絶体絶命の危機だった。
俺は魔法を練習していたこともあり、簡単に皇帝の娘を助けることが出来た。


その後も困っている商人を助けた。
商売のイロハが分かっていない商人だったから、前世の経験をもとに指導した。

困っている集落で金銭を得る方法を一緒に考えた。
おいしいくなる植物が自然にある環境だったので、調理方法を教えた。
他にも貴重な鉱石があったようで、採掘の仕方を教えた。

何故か女性が困っているところを助けた、一緒に冒険者活動をした。
エルフにドワーフ、獣人、人族、平民から貴族まで助けた。

その後はその女性たちの想いに流された・・・。

結果的に婚約者が増え続けた。

貴族の依頼を受ける日々。
縁ができた皇帝の娘の依頼を受けた。
皇帝の依頼を受けた。
続けて皇帝は依頼を出し続ける。

お金が貯まってきた。
お金は使う。
商会ができた。
日本の知識を使った。

偉い人が俺を無視できなくなった。

皇帝の依頼で偉い貴族が失脚した。

紆余曲折あったが、俺は貴族になった。
貴族になっても依頼を受け続け、位が上がり領土を持った。

その領土で日本の知識を使ったら繁栄した。

・・・

何事も上手くいってしまった。強さも日本の知識を使っていたら回りに負けなくなっていた。体を動かすよりは魔法の技術が上達し、戦い以外にも応用がついた。

~~~~~

そうやって現実を受け止め始めたとき、いつもの戦力強化を図る依頼を出していたが、普段と違う展開があった。

俺が依頼について回る機会を作りレベルアップを図っていたのだが、その時は情報通りの魔物ではなかった。

情報通りの場所で戦いになったが、周りに人がいなければ勝てる魔物なのに苦戦した戦闘になった。

俺が蜥蜴人間の攻撃に気をとられているうちに、象型の魔物が突進してきた。
その重量にはさすがに吹っ飛ばされた。
俺が態勢を整えようとしていると、ある者が参戦した。

その者は軽く重量級の突進を止めていた。
その人物は荷物運び情報ギルド員の黒猫の獣人。
何故あの重い突進に耐えられるのだ?
体重も差があるだろ・・・。

次はまた荷物運び情報ギルド員が出てきた。
女性の体つきだと思っていたが、フードが外れたその姿・・・、日本人か?
もしかして勇者?
それとも俺と同じ日本人か?

興味が湧いたし、ぜひ話したかった。

~~~~~

驚きの連続で平静を保つのが大変だった。

蜥蜴人間、四天王、強敵を行動不能にする魔法、魔道具。荷物運び情報ギルド員だよな?

帰りの馬車も無理を言って一緒に乗った。
本当はあの一見普通に見える不自然な馬車に乗ってみたかったんだがな。

だが会話は失敗した。
何が気にさわったのか、日本人か聞き出す前に怒らせてしまった・・・。

それでも貴族として領主館で後始末をした。
蜥蜴人間から魔王や四天王、今後の方針を聴取したが成果は出なかった。

義理の父となる皇帝陛下にも魔道具で連絡をとりつつ蜥蜴人間の尋問の繰り返しだった。

なかなか新たな情報が得られなかったが、皇帝陛下に活躍してくれた荷物運び情報ギルド員の話をした。
話題は強さから始まり、名前や容姿などを伝えていくと皇帝陛下の声が固くなってきた。

ラウール・・・。
サクラ・・・。
そう呟き、従魔がいなかったか聞かれたが、見ていないことを告げた。
だが、エルフと黒猫の獣人が一緒にいたことを説明すると、「黒猫!」と反応した。

何を考えているか魔道具越しではわからなかったが、落ち着かなくなっていることだけはわかった。

・・・・
・・・・

暫しの沈黙のあと、極秘情報だからと前置きをして教えてくれた。

数年前に皇帝のバカ息子が王国に戦争を仕掛けた。
自分の騎士団だけではなく、取り巻きの貴族や騎士団を巻き込んだ。
それだけでなく、自分や取り巻きが通じていた冒険者ギルドのギルドマスターも取り込み、自由な冒険者も戦場に連れていった。

そこまでしておきながら王国の何者かに一瞬で殲滅された。
しかもバカたちに唆されただけで善良な者は無事だった。
更に、王国で帝国に通じていた者も一緒に殲滅している。

何かの魔法を唱えたようだが、今までそんな魔法は言い伝えにもない。

その者たちは詠唱を終え一瞬で数万の軍隊を殲滅した。
それほどの戦力が国についているとなれば一大事になると、他の国の貴族も自分の物にしようと捜索した。

もちろん我が帝国も情報を集めた。

なかなか情報を得ることが出来なかったが、時間がたつにつれ断片的に耳に入ってきた。

その情報を集めると、冒険者パーティー【黒猫】が行った事と断定出来た。

ダイヤ伯爵が話した荷物運び情報ギルド員の名前や印象が、【黒猫】だと思う。

もしそうであれば絶対に敵対してはならない。味方に引き込めるなら大歓迎だが、下手に藪をつついて蛇が出てきたら不味い。

今は繋がりを持つことを目的にする事と厳命された。

~~~~~

あれがSランク冒険者・・・。
だが、黒猫の獣人とサクラが強かったのはわかるが、残りの二人もヤバイのか?

サクラはラウールが一番強いと言っていたが、サクラの欲目ではないのか?

何はともあれ敵対だけはしないで会話する機会を作ろうと考えた。
呼び出し方法を考えていると、執事が俺を呼びに来た。

執事はたいそう慌てているが、後ろから付いてきたジャネスは怒りを露にしていた。

何事かわからないので執事に言われるがまま門へ行くと・・・。

俺の密偵のうちの一人があの縛りかたをされ、門にくくりつけられていた・・・。
幸い衣類は無事だった・・・。

なかなか丈夫な縄を使っているのか下ろすことに手こずっていると、ジャネスが捲し立ててきた。

ジャネスが言うには勝手に密偵を送ったが、それが門にくくりつけられている女性の密偵なこと。
密偵を館の門にくくりつけたと言うことは、密偵を放ったのはダイヤ伯爵の関係者だと分かったはず。
それでもこんなことをした得たいの知れない荷物運び情報ギルド員は処分するべきだと主張した。

・・・・
・・・・

俺はその話を聞いて頭が痛くなった。
よりにもよってやるなと言ったことをしたのかと。
ヤルナヤルナはやれではない。
本当にしてはいけなかったのだ。

だからこそ慌てて俺が自ら出向いて、勝手なことをしたことを謝るとジャネスに伝えた。

ジャネスは出会ってからも貴族の特権意識が抜けていない。
俺の前では可愛い女性になるのだが、平民相手にはまだ強く出る。
だから任せられないと言ったがジャネスは自分が行くと引かない。

絶対に上手く謝って許してもらうから、次の日にはここに来てもらうから!
そう主張するから止められなかった。
さすがに謝って来るだろう。

・・・・
・・・・

その期待は裏切られた。
更に悪い展開となった。

ジャネスは帰ってくるなり泣き叫び「不敬罪であいつらを処分して!」
そう言い放った。

なかなか要領を得ない話をまとめると、謝るどころかただ呼び出し、密偵を送ったことを謝りもしなかった。
そこからは騎士が丸腰の相手に剣を抜こうとしたり、不敬罪で処罰すると言い放ち、最後は謝らなければ敵対すると言われて帰ってきたようだ。

は~こじれていく・・・。

だが、これは俺が招いたこと。
最後は俺が決めてジャネスを送ったんだから、俺の責任だ。

そうと考えたらさっそく手紙を書いて謝罪しよう。
もう荷物運び情報ギルドにこないかもしれない。
だが直接行くのは悪手だ。

俺の手紙に答えてくれたら面と向かって謝罪しよう。

さっそく俺は手紙を書き執事に持たせた。
執事は上手くことを運んでくれるだろう。
俺が貴族になってから支えてくれた人物だ、信用している。

~~~~~

手紙を読んでくれたようで、今日ここにサクラたちが来る。
もちろん婚約者たちには絶対に会わないようにする。
他にもジャニスには何か罰を与えなければいけない。
おそらくサクラたちはお詫びの品よりもそちらを重視するだろう。

ジャニスの行いは帝国貴族と考えたら悪いことはしていないのだろう。
だが相手が悪かった。

皇帝陛下にも伝えたが、ジャニスを処刑してでも敵対だけは避けろと命令された。
俺に今まで命令したことのない皇帝陛下が命令するんだぞ・・・。

先手を取り頭を下げる。
日本人的行いだ。
だがそれが功を奏したのか態度が軟化した。
そして正体も【黒猫】と聞き出せた。
俺からは、ダイヤは敵対しないことも伝えることが出来た。

昼食時も日本人と聞きだせなかったが、あの日本食の食べ方が今までこちらで見た誰よりもうまかったから、疑惑は残っている。

帰り際、従魔が八咫烏と皇帝陛下に聞いていたので一度見せてほしいと言ってみたが、機会があったらねと返事を返された。

俺は八咫烏を見ることが出来なかったのは残念だが、敵対状態ではないことを認識でき安心した。


とんだ出会いだったが、味方になると心強い冒険者と知り合いになれたことは嬉しい。


あとはジャニスに対する罰だな・・・。
俺の手料理禁止が一番効果があるのだが、相手に対する印象が悪いからダメだろうな・・・。
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