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第四章 不思議な世界
第百三十話 船旅は続く
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クロウたちの不思議さが増した航海中だが、まだまだ先は長い。
……
「――海賊だ! おい! 戦える奴は助けてくれ! ――戦うために乗っている奴は打ち合わせ通りだーーー!」
そんな大声が聞こえてくる。
気配は感じていたが海賊か……。そこまで強い気配はないが……。何か他の気配もある気がするけど、僕は海があまり得意じゃあなかったしな……
ドガーーーーン!!
海賊の船が勢いよく衝突した。
「敵――接触! 白兵戦よーい!」
は? 一気に突っ込んできたのは初めてだ!
ちょっと油断した!
「テメーらはもう終わりだ! 俺たちに渡しとけ……。その大事な命と――――お宝とな!」
お宝って……この船は一般人がほとんどでお宝は…………って――――貴族……貴族が何かを持ち込んだのか!
「――お前ら海賊が何を言っているかわからないが、この船には価値が……高く売れる物は無いぞ!」
船長がそう言って説得をし始めたが、犯罪集団の海賊には通じない……
*賊とは:他人に危害を加えたり、他人の財物を奪ったりする者。
昔は言葉の意味を調べるのが好きだったな……
と無駄な事を考えていると、海賊――賊に襲いかかられた。
「白兵戦だ! 頼むぞ冒険者諸君! いくぞお前ら!」
斧を持った船長が掛け声をかけて先頭に立ち、駆けていった。
その早さは中堅の冒険者並みだが、経験なのか最短距離で海賊に近づいている。
「そんな動きの奴に負けるかよ! おい! お前が船長らしいな! お前を倒したら誰も船頭出来る奴がいなくなるな!」
「ああん! 俺がいなくてもどうにかなるから先頭に立つんだよ! っと」と船長の的確な攻撃が海賊に向かう。
他の船員や冒険者も船の上での戦闘に慣れているのか、危なげない足取りで攻撃を繰り出す。
海賊もやはり慣れた戦場。
お互いに一進一退の攻防が続いている。
まだ重傷や死者は出ていないが、傷を負うものが徐々に下がってくる。
僕たちは戦闘にはまだ参加せず見ていただけだったので、回復魔法で援護した。
「はい、傷は治ったと思うからもう一度頑張ってきて!」と切り傷を治して冒険者の背中を押した。
「はい、これでどこも痛くないでしょ! 病気もあったからついでに治しておいたよ!」
「はい、あなたもついでに病気を治しておいたよ!」と何人もの人を治してまた海賊に向かわせる。
……
そんな行動をしていると、負傷した海賊は下がる一方で、こちらが有利になってきた。
だからか海賊の一番強かった人が前に出てきて一騎討ちを申し込んだ。
だがそんな話にのる必要もなく、船長は全員に号令をかけて一気に海賊を倒しきった。
……
倒した海賊は海に落ちた人以外は回収した。懸賞金がかかっている場合は報酬となるし、奴隷として売り払うことも出来る。
商売で成り立っているナイデラ交易国は合法な人身売買も活発だと言う。
オーション市では魔人が関わっている誘拐があったが、それ以外にも人がいなくなる事があった。
それは合法違法、どちらの場合もあるだろうけど、ここナイデラ交易国で売り物にもなるのだ。だからここに連れて来られた人もいるだろう。
で、拿捕した海賊船には非戦闘員の海賊も乗っていた。幸い奴隷と幾人かの船員で航行は出来るため、ナイデラ交易国まで二隻で移動する事になった。
……
……
まだナイデラ交易国までは半分といったところだ。五日の船旅もおそらくもう五日ほどで到着すると話をしてくれた船員。
この船員は海賊との戦いの時に病気まで治した人だ。
おそらく内臓も弱っていたからそれ系の病気だと思うが、良く調べる前に強力な回復魔法で治してしまっていた。
だがこの船員から聞かされた言葉で、もっと良く調べておいたら良かったと思った。
「頼む! ――俺の家族も回復してくれ……。俺と同じ病気だが、俺と違って動けないんだ!」と四十歳?程の厳つい男が頭を下げている。その頭を下げたまま話を続けた。
「俺は病気の事はわからない。だが治療院の人が、これは何とか病だと言ったんだ。名前が難しくて今でも言えないが、家に帰ったら娘が覚えてる。――なー、頼むよ……妻と……孫が……。娘夫婦と俺は稼がなきゃいけないから頑張って動いてるが……。二人は動けないんだよ!」
んー、重い……重いぞ急に……。何故海賊騒ぎが落ち着いたのに……
「ちょっと落ち着くのよ。それだと良くわからないわよ……。ただ治すだけならいいんだろうけど、また同じ病気になったら意味がないじゃない。だからナイデラについたらもう一度話し合いましょ」
「――あ、ああ、ああ診てくれるのか? 頼むよ! お礼はいくらでも! ……と言いたいが、俺の体までにしてくれたらありがたい……」
「そんな体も、体を売るのもいらないわよ……。簡単なら治す。難しいなら諦めて……それだけよ。――で、簡単なら安くてもいいでしょ」
変な屁理屈でサクラは治す気でいた。僕も賛成だから良いが、どんな病気なんだろう?
家族で何人かなっているようだし、他にも患っている人が多いなら、僕たちがいなくとも治す事が出来るように何かを考えないといけないかな。季節によって患ったり、感染するなら更に対策も考えなきゃね。
船員の名はパナック。
幼い頃から船乗りとして生きてきた海の男だと自己紹介が最後にあった。
……
「――海賊だ! おい! 戦える奴は助けてくれ! ――戦うために乗っている奴は打ち合わせ通りだーーー!」
そんな大声が聞こえてくる。
気配は感じていたが海賊か……。そこまで強い気配はないが……。何か他の気配もある気がするけど、僕は海があまり得意じゃあなかったしな……
ドガーーーーン!!
海賊の船が勢いよく衝突した。
「敵――接触! 白兵戦よーい!」
は? 一気に突っ込んできたのは初めてだ!
ちょっと油断した!
「テメーらはもう終わりだ! 俺たちに渡しとけ……。その大事な命と――――お宝とな!」
お宝って……この船は一般人がほとんどでお宝は…………って――――貴族……貴族が何かを持ち込んだのか!
「――お前ら海賊が何を言っているかわからないが、この船には価値が……高く売れる物は無いぞ!」
船長がそう言って説得をし始めたが、犯罪集団の海賊には通じない……
*賊とは:他人に危害を加えたり、他人の財物を奪ったりする者。
昔は言葉の意味を調べるのが好きだったな……
と無駄な事を考えていると、海賊――賊に襲いかかられた。
「白兵戦だ! 頼むぞ冒険者諸君! いくぞお前ら!」
斧を持った船長が掛け声をかけて先頭に立ち、駆けていった。
その早さは中堅の冒険者並みだが、経験なのか最短距離で海賊に近づいている。
「そんな動きの奴に負けるかよ! おい! お前が船長らしいな! お前を倒したら誰も船頭出来る奴がいなくなるな!」
「ああん! 俺がいなくてもどうにかなるから先頭に立つんだよ! っと」と船長の的確な攻撃が海賊に向かう。
他の船員や冒険者も船の上での戦闘に慣れているのか、危なげない足取りで攻撃を繰り出す。
海賊もやはり慣れた戦場。
お互いに一進一退の攻防が続いている。
まだ重傷や死者は出ていないが、傷を負うものが徐々に下がってくる。
僕たちは戦闘にはまだ参加せず見ていただけだったので、回復魔法で援護した。
「はい、傷は治ったと思うからもう一度頑張ってきて!」と切り傷を治して冒険者の背中を押した。
「はい、これでどこも痛くないでしょ! 病気もあったからついでに治しておいたよ!」
「はい、あなたもついでに病気を治しておいたよ!」と何人もの人を治してまた海賊に向かわせる。
……
そんな行動をしていると、負傷した海賊は下がる一方で、こちらが有利になってきた。
だからか海賊の一番強かった人が前に出てきて一騎討ちを申し込んだ。
だがそんな話にのる必要もなく、船長は全員に号令をかけて一気に海賊を倒しきった。
……
倒した海賊は海に落ちた人以外は回収した。懸賞金がかかっている場合は報酬となるし、奴隷として売り払うことも出来る。
商売で成り立っているナイデラ交易国は合法な人身売買も活発だと言う。
オーション市では魔人が関わっている誘拐があったが、それ以外にも人がいなくなる事があった。
それは合法違法、どちらの場合もあるだろうけど、ここナイデラ交易国で売り物にもなるのだ。だからここに連れて来られた人もいるだろう。
で、拿捕した海賊船には非戦闘員の海賊も乗っていた。幸い奴隷と幾人かの船員で航行は出来るため、ナイデラ交易国まで二隻で移動する事になった。
……
……
まだナイデラ交易国までは半分といったところだ。五日の船旅もおそらくもう五日ほどで到着すると話をしてくれた船員。
この船員は海賊との戦いの時に病気まで治した人だ。
おそらく内臓も弱っていたからそれ系の病気だと思うが、良く調べる前に強力な回復魔法で治してしまっていた。
だがこの船員から聞かされた言葉で、もっと良く調べておいたら良かったと思った。
「頼む! ――俺の家族も回復してくれ……。俺と同じ病気だが、俺と違って動けないんだ!」と四十歳?程の厳つい男が頭を下げている。その頭を下げたまま話を続けた。
「俺は病気の事はわからない。だが治療院の人が、これは何とか病だと言ったんだ。名前が難しくて今でも言えないが、家に帰ったら娘が覚えてる。――なー、頼むよ……妻と……孫が……。娘夫婦と俺は稼がなきゃいけないから頑張って動いてるが……。二人は動けないんだよ!」
んー、重い……重いぞ急に……。何故海賊騒ぎが落ち着いたのに……
「ちょっと落ち着くのよ。それだと良くわからないわよ……。ただ治すだけならいいんだろうけど、また同じ病気になったら意味がないじゃない。だからナイデラについたらもう一度話し合いましょ」
「――あ、ああ、ああ診てくれるのか? 頼むよ! お礼はいくらでも! ……と言いたいが、俺の体までにしてくれたらありがたい……」
「そんな体も、体を売るのもいらないわよ……。簡単なら治す。難しいなら諦めて……それだけよ。――で、簡単なら安くてもいいでしょ」
変な屁理屈でサクラは治す気でいた。僕も賛成だから良いが、どんな病気なんだろう?
家族で何人かなっているようだし、他にも患っている人が多いなら、僕たちがいなくとも治す事が出来るように何かを考えないといけないかな。季節によって患ったり、感染するなら更に対策も考えなきゃね。
船員の名はパナック。
幼い頃から船乗りとして生きてきた海の男だと自己紹介が最後にあった。
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