113 / 168
第三章 上を目指して
第百十二話 オーション市で意外な情報が
しおりを挟むジョルジュギルマスが話し出した。
「俺はラーバンスト王子と連絡を取り合っている。……そのラーバンスト王子がお前たちの事を話していた。だが一度話をしたかったが断られたから、この依頼の後だったら話せるだろうと思って呼んだんだ。……そして丁度良いことに、この前お前たちが参加しなかった大規模盗賊討伐で捕まえた男がいたんだが…………捕縛後にどうやったのか魔物人間に変化した奴がいる……。」
初耳だ……
「……場所が冒険者所有の牢だったから箝口令を敷いた。だから情報は漏れなかったろう……」
『我は感じたけどね!』
おい……教えてよクロウ……
「その情報はラーバンスト王子にも伝えたが、お前たちにも教えて欲しいと言われたからな。」
「……それは聞いてもいいの?」
「普通であればただのAランク冒険者が持つ情報ではない。……だが王子の頼みだ……」
そこからジョルジュギルマスが魔物人間について話をしてくれた。
見張りは冒険者と騎士が合同で行っていた。そして先に犠牲になったのは冒険者だった……
……捕縛した大規模盗賊の集団でも頭目と言われた男が、牢に入れて少しすると禍々しい圧を放ち出した。
その気配を感じた騎士の一人が上司に伝えに走り、上司が牢に到着したときには変化を終えていた。
悔しいことに見張っていた残りの騎士と冒険者はもう殺されていて、逃げようとしたタイミングで到着したようだ。駆けつけた上司はケメドともっとランクが高い冒険者で……(あーー、だからケメドさんはあんなに話し方も変わっていたのか? 部下をみすみす殺されたから……)……ケメドがどうにか魔物人間を抑えている時間で、騎士団長が到着してその場を収めた。
……騎士団長は流石に強いか。
今回も話を聞くにゴブリン人間だったようだ。……だが続けて話を聞くと人間から魔物の姿に変化した。――魔物人間は、人族から魔物人間になった方が強いようだな。
そして今回得られた情報の中で、ゴブリン人間がつい漏らしたんだろうが「……俺たちは全世界で活動している。……今俺をどうにかしても、俺たち赤の旅団は無くならない! 今ならお前らも俺と同じになれるだろうがどうだ? 今まで出会ったら逃げていたオーガにも簡単に勝てるだけの戦闘力になるぞ! 俺はまだオーガと戦っていないがな――はっはーー。と言っていたぞ。」と言われた時には驚いた。
『赤の旅団』『オーガ以上の力』『全世界』
何かアルグリアン王国だけの問題ではなくて、世界規模の問題になりそうだ。
更に赤の旅団って……今まで出会った盗賊でそう名乗っていた盗賊がほとんどだったが、もしかして組織の名前になるのか?
オーガ以上の戦闘力になるのも、変化さえしてしまえばオーガ以上になるなら、普通の冒険者では太刀打ち出来ないな……
……
僕達はジョルジュギルマスから得た情報で今後の方針を立てることにした。
盗賊――――赤の旅団と名乗る者は魔物人間に変化する可能性がある。魔物人間――――魔人――――どう呼ぶかはまだ僕達は決めていないが、この世界での敵になりそうだ。
ロード種ならステータスで個体の平均数値が千位だが、SSランク冒険者で――――人間族進化種でようやく立ち向かえるくらいだ。
進化していない人間族ならSランク冒険者になる人間族でようやくオーガと対等な戦闘力くらいだ……
圧倒的ではないか相手の戦力は!
って個人の戦闘力の差で戦争の勝ち負けが決まるわけではないが……
数字だけの戦争だと、平均ステータスが百のゴブリンが五匹いるとSランク冒険者が一人とられることになる…………もちろん実際の戦闘ではそんなことはなく、五倍強い冒険者が一瞬で勝つのだが…………魔物はそれだけ数の暴力で対抗してくる……
どうやって対処したら良いのだろうな。僕達が小さな盗賊の拠点を殲滅していたときは赤の旅団と名乗ってはいたが、魔物人間に繋がる情報はなかったし……おそらく情報を知らされていない末端の盗賊も多いのだろうな。
だとすると頭になる人物は何処にいるのか? ゴブリン人間に変化した奴もその盗賊集団の中では偉いのかもしれないが――もっと根本的に、全体を掌握しているのは誰か? こんなにバラバラな集団をどうやって動かしているのか? 目的は?
遠く離れている盗賊同士連絡を取り合ってもいないし、誰かが命令に来たって言う話もなかったし謎が深まる。
考えたくはないが、ソフィアの魔法から逃れることが出来るほど能力が高いのであればヤバイね。
ジョルジュギルマスは僕達に情報を伝えたとラーバンストに話しておいてくれるそうだ。僕達から何か伝言はないか聞かれたが、今はまだ無いと答えておいた。
……
ジョルジュギルマスとの話はそれで終わった。だがオーション市にいる場合は時々話をして親交を深めたいと言われた。この先何があるかわからないので、少しでも戦力強化になる冒険者とは繋がっていたいと正直に言われた。
もう少しはこの都市で活動しようと思っていた僕達も、特に拒否する必要もないので、何かあれば受付に声をかけてもらうことにした。
さあこれからはまだ盗賊討伐を続けるか……それとも何か別の行動をとるか迷う。討伐の拠点はクロウ達に任せても良いし……。僕達はどうするか話し合った。
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!

生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる