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第三章 上を目指して
第百十一話 オーション市の誘拐犯は何だ
しおりを挟む僕達はケメドさんが合図をすると眠りの魔法を唱えた。
……
……
「よし、これで皆が寝たはずだけど、魔法耐性が強い人には効いていないかもしれないから、一応気を付けてね。僕達も突入するけどね。」
「私達も行くわ。女の子がいた方が、万が一起きている子がいたときに助かるでしょ?」
「おう! じゃあ頼むぞ! ――皆も頼むぞ!」とケメドさんの再度の合図でグルアクユ商店に突入した。
……
商店の中にはお客さんが入らないようにしていた。中にいる店員に気づかれないようにこっそりと行動していたが、流石に不自然だったのだろう。
強面な人が店の入り口側と、店主の部屋を守るように眠っていた。
そして普通の店員や商人風の人は店の中央に集まり眠っていた。
この眠っている人を移動させる人と、誘拐された子供がいないか捜索する人、誘拐に関わっている証拠を探す人に別れた。
眠っている人は今の時点では全員捕縛されている。事情聴取の後に罪を犯していない人は解放される。
証拠を集める事は手こずっていた。流石に店主の部屋にはなかった。
だがここでクロウが「あの奥の所から下に気配があるよ! 我はあそこが怪しいと思う!」と今まで騎士がいるところでは話さなかったのに、急に話し出した。
これには騎士達は驚いていたが、怪しい場所に向かうのが先だった。
……
店主の部屋の本棚を寄せると扉があった。本棚は簡単に寄せることが出来た。
見つけた扉を横に引くと先には階段があった。扉を開けて左に降りる階段で、これなら建物の外観からも分かりにくい広さだった。
……
僕達とケメドさんと数人の騎士が階段を降りると、下にあった部屋は広かった。一階と同じくらいの大きさで、幾つかの部屋に別れていた。
そこからはまた調査が開始されたが、僕達は数人の気配を感じて移動した。
気配がした一室には、エルフの子供が一人いた。その周りには大人が二人おり、逃げ出さないように見張っていたかと考えられた。
隣の部屋には更に子供が三人いた。種族はバラバラだが、最近誘拐されたのか、エルフの子供よりはやつれていなかった。この部屋にも大人が二人いた。
幸い誰もが眠っており、無駄な戦闘は起きなかった。
「酷いわね……あのエルフは僕達が初めてこの都市の冒険者ギルドに来たときに聞いた子じゃない?」
「……誘拐されたって言ってたわよね……」
「あれからここに閉じ込められてたなら……どれだけ辛かったか……」
「……私の見立てだと……商品と見られていたからか、何もされていなそうだから……それだけはましだったわ。」
「俺が皆殺しにしてくるか!」とヤマトが言うと、クロウは「我だったらもっと苦しめるよ!」と返事をして、ソフィアも「じゃあ私も永遠に醒めない悪夢を見せましょうか。――でも醒めないと罰にはなりませんね。」と物騒なことを言っていた。
そう言いたいのは僕も同じだが、今回の僕達の行動で助けられた子供は十人弱……この期間でその人数を発見したが……一年を通して、今まで誘拐された子供の数はどれ程になるのか……
……
証拠品も集まったようだ。
騎士達が続々と外に証拠品を運びだし、子供達も救出された。
ここから先は騎士で十分と言われて僕達の依頼は終了となった。
依頼完了の証明書をもらい、後は冒険者ギルドに報告するだけだ。まだ時間も昼前だから、みんなと話し合い冒険者ギルドに行くことにした。
……
冒険者ギルドに入るとすでに情報を得ていた冒険者がいたようで、冒険者達から歓声で出迎えられた。
更に誘拐されていた子供の親もすでに冒険者ギルドに来ていたようでお礼を言われた。だから僕は親には「こっちでなく早く子供の所に行ってください。」と言っておいた。
そこからは冒険者ギルド定番のギルドマスターの部屋に通された。オーション市の冒険者ギルドギルドマスターとはまだ話したことがなかったから、今回が初顔合わせだ。
盗賊討伐を続けていたときにギルドマスターが会いたいと言っていたようだが、僕達は盗賊討伐を優先していたから会わなかったのだ。
……
少し待っていると扉が開いて大男が入ってきた。二百センチはありガッチリとした万能型冒険者……SSランクの冒険者で今も現場に出ることがあると言う噂を聞いていた冒険者ギルドギルドマスター。
「初めてだな。俺はジョルジュ、よろしくな。」
「はじめまして。僕達は黒猫です。」僕達は一人ずつ名乗った――クロウ達も……
クロウとヤマト、ソフィアの存在はジョルジュギルマスに知られた方が良いと考えたからだ。
「おう、そこの従魔達もよろしくな。」
「「「よろしくな!」」」
……
「じゃあ――今回はありがとう! お陰で大分誘拐は無くなると思う。まだこれから取り調べが続くが、いくらかは黒幕に近づくだろう……。お前達が盗賊をバタバタ倒してくれたから、良いきっかけになった……」
「そう言っていただけたらありがたいです。僕達は、子供の味方ですから。」
「ふむ、ありがたいな……このオーション市では冒険者の子まで拐われていたからな……どうにかしたかったが、どうにもならなかった……。盗賊の大規模討伐などは事前に察知されて逃げられるしな……。少数で一気に細かな盗賊の拠点を殲滅したからこそ、逃げ道を塞いだんだ。」
「私達はそこまでは考えていなかったけどね。ただただ憎かっただけよ。……でもよかった……もし私達に子供がいて……その子が拐われでもしたら――どんな手を使っても……。今回はその気持ちを考えたときの苦しさがあったから、当然手を貸したわ。」
「……怖いな……お前達はあれだけの力がある……俺より強いだろ?」
「「それは内緒だね(わ)」」
「そうやって否定はしないからな……」
「それよりどんな用件があるの? お礼だけで僕達をわざわざ呼ばないでしょ?」
僕がジョルジュギルマスに用件を聞くと
神妙に話し出した。
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