今世は夫婦で冒険者パーティー黒猫 ~前前世は冴えなかったが前世は最強! で、今世も最強で旅をする。気ままに弟子を育てながら気まぐれに生きてい

sazae9

文字の大きさ
上 下
112 / 168
第三章 上を目指して

第百十一話 オーション市の誘拐犯は何だ

しおりを挟む

  僕達はケメドさんが合図をすると眠りの魔法を唱えた。


……
……


「よし、これで皆が寝たはずだけど、魔法耐性が強い人には効いていないかもしれないから、一応気を付けてね。僕達も突入するけどね。」


「私達も行くわ。女の子がいた方が、万が一起きている子がいたときに助かるでしょ?」


「おう! じゃあ頼むぞ! ――皆も頼むぞ!」とケメドさんの再度の合図でグルアクユ商店に突入した。

……

  商店の中にはお客さんが入らないようにしていた。中にいる店員に気づかれないようにこっそりと行動していたが、流石に不自然だったのだろう。
  強面な人が店の入り口側と、店主の部屋を守るように眠っていた。
  そして普通の店員や商人風の人は店の中央に集まり眠っていた。


  この眠っている人を移動させる人と、誘拐された子供がいないか捜索する人、誘拐に関わっている証拠を探す人に別れた。

  眠っている人は今の時点では全員捕縛されている。事情聴取の後に罪を犯していない人は解放される。

  証拠を集める事は手こずっていた。流石に店主の部屋にはなかった。
  

  だがここでクロウが「あの奥の所から下に気配があるよ! 我はあそこが怪しいと思う!」と今まで騎士がいるところでは話さなかったのに、急に話し出した。
  これには騎士達は驚いていたが、怪しい場所に向かうのが先だった。


……


  店主の部屋の本棚を寄せると扉があった。本棚は簡単に寄せることが出来た。
  見つけた扉を横に引くと先には階段があった。扉を開けて左に降りる階段で、これなら建物の外観からも分かりにくい広さだった。


……


  僕達とケメドさんと数人の騎士が階段を降りると、下にあった部屋は広かった。一階と同じくらいの大きさで、幾つかの部屋に別れていた。

  そこからはまた調査が開始されたが、僕達は数人の気配を感じて移動した。
  気配がした一室には、エルフの子供が一人いた。その周りには大人が二人おり、逃げ出さないように見張っていたかと考えられた。
  隣の部屋には更に子供が三人いた。種族はバラバラだが、最近誘拐されたのか、エルフの子供よりはやつれていなかった。この部屋にも大人が二人いた。

  幸い誰もが眠っており、無駄な戦闘は起きなかった。

「酷いわね……あのエルフは僕達が初めてこの都市の冒険者ギルドに来たときに聞いた子じゃない?」

「……誘拐されたって言ってたわよね……」

「あれからここに閉じ込められてたなら……どれだけ辛かったか……」

「……私の見立てだと……商品と見られていたからか、何もされていなそうだから……それだけはましだったわ。」

「俺が皆殺しにしてくるか!」とヤマトが言うと、クロウは「我だったらもっと苦しめるよ!」と返事をして、ソフィアも「じゃあ私も永遠に醒めない悪夢を見せましょうか。――でも醒めないと罰にはなりませんね。」と物騒なことを言っていた。


  そう言いたいのは僕も同じだが、今回の僕達の行動で助けられた子供は十人弱……この期間でその人数を発見したが……一年を通して、今まで誘拐された子供の数はどれ程になるのか……


……


  証拠品も集まったようだ。
  騎士達が続々と外に証拠品を運びだし、子供達も救出された。

  
 ここから先は騎士で十分と言われて僕達の依頼は終了となった。
  依頼完了の証明書をもらい、後は冒険者ギルドに報告するだけだ。まだ時間も昼前だから、みんなと話し合い冒険者ギルドに行くことにした。


……


  冒険者ギルドに入るとすでに情報を得ていた冒険者がいたようで、冒険者達から歓声で出迎えられた。
  更に誘拐されていた子供の親もすでに冒険者ギルドに来ていたようでお礼を言われた。だから僕は親には「こっちでなく早く子供の所に行ってください。」と言っておいた。


  そこからは冒険者ギルド定番のギルドマスターの部屋に通された。オーション市の冒険者ギルドギルドマスターとはまだ話したことがなかったから、今回が初顔合わせだ。
  盗賊討伐を続けていたときにギルドマスターが会いたいと言っていたようだが、僕達は盗賊討伐を優先していたから会わなかったのだ。

……

  少し待っていると扉が開いて大男が入ってきた。二百センチはありガッチリとした万能型冒険者……SSランクの冒険者で今も現場に出ることがあると言う噂を聞いていた冒険者ギルドギルドマスター。


「初めてだな。俺はジョルジュ、よろしくな。」

「はじめまして。僕達は黒猫です。」僕達は一人ずつ名乗った――クロウ達も……

  クロウとヤマト、ソフィアの存在はジョルジュギルマスに知られた方が良いと考えたからだ。


「おう、そこの従魔達もよろしくな。」


「「「よろしくな!」」」

……

「じゃあ――今回はありがとう! お陰で大分誘拐は無くなると思う。まだこれから取り調べが続くが、いくらかは黒幕に近づくだろう……。お前達が盗賊をバタバタ倒してくれたから、良いきっかけになった……」


「そう言っていただけたらありがたいです。僕達は、子供の味方ですから。」


「ふむ、ありがたいな……このオーション市では冒険者の子まで拐われていたからな……どうにかしたかったが、どうにもならなかった……。盗賊の大規模討伐などは事前に察知されて逃げられるしな……。少数で一気に細かな盗賊の拠点を殲滅したからこそ、逃げ道を塞いだんだ。」


「私達はそこまでは考えていなかったけどね。ただただ憎かっただけよ。……でもよかった……もし私達に子供がいて……その子が拐われでもしたら――どんな手を使っても……。今回はその気持ちを考えたときの苦しさがあったから、当然手を貸したわ。」


「……怖いな……お前達はあれだけの力がある……俺より強いだろ?」


「「それは内緒だね(わ)」」


「そうやって否定はしないからな……」


「それよりどんな用件があるの? お礼だけで僕達をわざわざ呼ばないでしょ?」


  僕がジョルジュギルマスに用件を聞くと 
神妙に話し出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...