89 / 168
第三章 上を目指して
第八十八話 キバンのダンジョン百階
しおりを挟む
他の冒険者には無理そうなダンジョンの九十九階から上に上る階段前に到着した。
このまま攻略してしまうと最高到達階まで来た冒険者パーティーを見ずに終わってしまう。
……どうする? 一度戻って十九階くらいに行ってみるか……
だが顔を合わせてしまってから百階を攻略すると、辻褄を合わせるのが大変か?
んーー悩む……
……
……
……
一気に攻略するか。
「サクラ、クロウ、ソフィア、百階に行ってみようか。もし最後ならダンジョンに何か起きるかもしれないけど、ボスを倒してから考えようか?」
「……また難しく考えてるでしょラウール。良いじゃない何が起きても。私達は皆で今後も一緒に過ごす。何が起きても私達の邪魔はさせない。相手が難癖をつけてこない限りは私達も無茶しないし、難癖をつけてきたら排除する。単純にいきましょ。」
「我もそう思うよ! ラウールはこの前から色々考えてるから、我からは何も言わないけどね。」
「そうですよラウール。私達は悪いことはしていません。そんな私達に敵対する人が悪いのですよ。胸を張って先に進みましょう。」
……
「だってさラウール。私達は悩んでいるラウールの気持ちもわかってる。だけどやりたいようにやろうよ!」
「……何かありがとう……。何だろうね僕の踏ん切りのつかなさは……。もうしばらく気持ちが切り替わらないかもしれないけど、ごめんね。」
僕の心の弱さを皆が知って接してくれる。どれだけ人生経験があっても変わらないな……
……
……
百階の攻略は明日にすることにして一晩僕達はゆっくりと休んだ。
……
……
そして心身ともに楽になった今日、僕達はダンジョン百階を攻略する。
……
……
百階に上るとすぐにボス部屋の扉だろう。今までのボス部屋の扉とは格が違うほど豪華な、重厚な扉が目の前にあった。
僕達はやはり百階が最終階だろうと言いながら、扉を躊躇いなく押した。
……
そして中に入るとそこは◯京ドーム五個分とでも表現するか……広い空間にただただ綺麗な岩の壁や床があった。
まーー簡単に表現すると、ボス部屋らしき豪華な空間だった。
その空間には何もいないと思っていたが、正面の突き当たり、ボスを倒した後に通れるだろう扉が開き、莫大な魔力を持つ存在が僕達に向かい歩き始めた。
スッスゥースッスゥー
と滑らかなリズムで近づいてくる……
……
……
ゆっくりとゆっくりと僕達の目の前には現れたのは……人形の……僕にはガイブンに見えた……
鑑定をしてみても初めて何かわからない。
名前も表示されない。
「……ねえ、あれはガイブン?」僕は何なのか自信がなく、皆に聞いてみた。
「我にはただの人形に見えるよ! だけどステータスはわからないよ!」
「私もクロウと一緒ですね。ただの人形に見えますよ。」
「私は前の世界の村長の息子に見えるわ! 私が前の世界で……あーー気分が悪いわね!」
「……ん、見え方が人によって違う? でもクロウとソフィアは人形に見える……あーーそういうことか。でもこんな僕達の頭の中を覗くような真似が出来るって事は……厄介なボスかな?」
僕は気合いを入れ直しボスに攻撃をすることにする。
……
僕がそう思い気合いを入れていると、ガイブン人形が素早く斬りかかってきた。お腹の揺れもないまま真っ直ぐに飛びかかってきた。
「っと! いきなり出てきたその大剣! 何処から出したんだよ! それにその速さ! 」
僕は少し焦った!
今までの戦った中で一番強い!
ガイブン人形のくせに!
心が乱れる……
そんな僕の心の乱れを感じたのか、右に左に何度も斬りつけてくる!
攻撃はすべて避けることが出来ているが、一撃でも当たると傷くらいはつきそうだ。
僕はガイブン人形だとわかっているが、あのガイブンの見た目で攻撃をされておりなかなか反撃できない。
攻撃を避けながらガイブンの事を考えてしまう。
鋭い突きを避け…………僕は何故イライラさせられただけのガイブンをあそこまで憎んだのだろう。
右からの横一閃に斬る一撃を後ろに避け…………僕のあの選択は正しかったのだろうか。
縦に大剣を振り下ろした一撃を横に避け…………家族と思っている者を奪われそうになって僕の心が病んでいた?
いきなり火の玉が無数に飛来したから結界で防ぐ…………詐欺師まがいな会話で何を言っても無駄だと思った?
結界を解いてすぐに前蹴り攻撃を足で止める…………口で言いあっても敵わないと感じて物理的に亡きものにした?
ちょっとガイブン人形が下がってからもう一度火の玉が飛んでくる…………あーーよくわからなくなってきた。
ガイブン人形は攻撃が当たらないからか一度動きを止めて僕を見ている。
そのガイブン人形と目を合わせ僕も頭の中を整理する。
僕の被害は奪われそうになったこと。もし僕が力も人との繋がりも無かったら…………大切なものが奪われていた。
ガイブンは僕以外の人から大事なものを奪い、絶望させていた。
ある人物は自分で命を絶ち、ある人物はガイブンに命令された人に殺されてもいた。
……あーーやっぱり僕は自分勝手でもあるけど、わかっていながら他の人を不幸にする人が嫌いなんだな!
ガイブンみたいな人が生き残って、不幸な人が増えないようにする事……他の人でも出来るかもしれないが、僕の目の前で起こっていることを見逃す事が出来ないんだな。
小さな、自分勝手な正義……だけど今はその思いに身を任せよう!
……
……
「あーースッキリした! ありがとうガイブン人形! ありがとうサクラ、クロウ、ソフィア! ようやくスッキリした。何処まで行っても人は人、自分は自分だね! 僕は人の迷惑にならないならやりたいようにやる!」
「やっと戻ってきたねラウール! そうよ、人に言われてもなかなかわからないだろうから、待っていたのよ! 結果が今とは違う言葉が出てきても、私はあなたの味方よ!」
ガイブン人形と見つめ合った僕だが、ようやく決着をつけても良いと感じた。
このまま攻略してしまうと最高到達階まで来た冒険者パーティーを見ずに終わってしまう。
……どうする? 一度戻って十九階くらいに行ってみるか……
だが顔を合わせてしまってから百階を攻略すると、辻褄を合わせるのが大変か?
んーー悩む……
……
……
……
一気に攻略するか。
「サクラ、クロウ、ソフィア、百階に行ってみようか。もし最後ならダンジョンに何か起きるかもしれないけど、ボスを倒してから考えようか?」
「……また難しく考えてるでしょラウール。良いじゃない何が起きても。私達は皆で今後も一緒に過ごす。何が起きても私達の邪魔はさせない。相手が難癖をつけてこない限りは私達も無茶しないし、難癖をつけてきたら排除する。単純にいきましょ。」
「我もそう思うよ! ラウールはこの前から色々考えてるから、我からは何も言わないけどね。」
「そうですよラウール。私達は悪いことはしていません。そんな私達に敵対する人が悪いのですよ。胸を張って先に進みましょう。」
……
「だってさラウール。私達は悩んでいるラウールの気持ちもわかってる。だけどやりたいようにやろうよ!」
「……何かありがとう……。何だろうね僕の踏ん切りのつかなさは……。もうしばらく気持ちが切り替わらないかもしれないけど、ごめんね。」
僕の心の弱さを皆が知って接してくれる。どれだけ人生経験があっても変わらないな……
……
……
百階の攻略は明日にすることにして一晩僕達はゆっくりと休んだ。
……
……
そして心身ともに楽になった今日、僕達はダンジョン百階を攻略する。
……
……
百階に上るとすぐにボス部屋の扉だろう。今までのボス部屋の扉とは格が違うほど豪華な、重厚な扉が目の前にあった。
僕達はやはり百階が最終階だろうと言いながら、扉を躊躇いなく押した。
……
そして中に入るとそこは◯京ドーム五個分とでも表現するか……広い空間にただただ綺麗な岩の壁や床があった。
まーー簡単に表現すると、ボス部屋らしき豪華な空間だった。
その空間には何もいないと思っていたが、正面の突き当たり、ボスを倒した後に通れるだろう扉が開き、莫大な魔力を持つ存在が僕達に向かい歩き始めた。
スッスゥースッスゥー
と滑らかなリズムで近づいてくる……
……
……
ゆっくりとゆっくりと僕達の目の前には現れたのは……人形の……僕にはガイブンに見えた……
鑑定をしてみても初めて何かわからない。
名前も表示されない。
「……ねえ、あれはガイブン?」僕は何なのか自信がなく、皆に聞いてみた。
「我にはただの人形に見えるよ! だけどステータスはわからないよ!」
「私もクロウと一緒ですね。ただの人形に見えますよ。」
「私は前の世界の村長の息子に見えるわ! 私が前の世界で……あーー気分が悪いわね!」
「……ん、見え方が人によって違う? でもクロウとソフィアは人形に見える……あーーそういうことか。でもこんな僕達の頭の中を覗くような真似が出来るって事は……厄介なボスかな?」
僕は気合いを入れ直しボスに攻撃をすることにする。
……
僕がそう思い気合いを入れていると、ガイブン人形が素早く斬りかかってきた。お腹の揺れもないまま真っ直ぐに飛びかかってきた。
「っと! いきなり出てきたその大剣! 何処から出したんだよ! それにその速さ! 」
僕は少し焦った!
今までの戦った中で一番強い!
ガイブン人形のくせに!
心が乱れる……
そんな僕の心の乱れを感じたのか、右に左に何度も斬りつけてくる!
攻撃はすべて避けることが出来ているが、一撃でも当たると傷くらいはつきそうだ。
僕はガイブン人形だとわかっているが、あのガイブンの見た目で攻撃をされておりなかなか反撃できない。
攻撃を避けながらガイブンの事を考えてしまう。
鋭い突きを避け…………僕は何故イライラさせられただけのガイブンをあそこまで憎んだのだろう。
右からの横一閃に斬る一撃を後ろに避け…………僕のあの選択は正しかったのだろうか。
縦に大剣を振り下ろした一撃を横に避け…………家族と思っている者を奪われそうになって僕の心が病んでいた?
いきなり火の玉が無数に飛来したから結界で防ぐ…………詐欺師まがいな会話で何を言っても無駄だと思った?
結界を解いてすぐに前蹴り攻撃を足で止める…………口で言いあっても敵わないと感じて物理的に亡きものにした?
ちょっとガイブン人形が下がってからもう一度火の玉が飛んでくる…………あーーよくわからなくなってきた。
ガイブン人形は攻撃が当たらないからか一度動きを止めて僕を見ている。
そのガイブン人形と目を合わせ僕も頭の中を整理する。
僕の被害は奪われそうになったこと。もし僕が力も人との繋がりも無かったら…………大切なものが奪われていた。
ガイブンは僕以外の人から大事なものを奪い、絶望させていた。
ある人物は自分で命を絶ち、ある人物はガイブンに命令された人に殺されてもいた。
……あーーやっぱり僕は自分勝手でもあるけど、わかっていながら他の人を不幸にする人が嫌いなんだな!
ガイブンみたいな人が生き残って、不幸な人が増えないようにする事……他の人でも出来るかもしれないが、僕の目の前で起こっていることを見逃す事が出来ないんだな。
小さな、自分勝手な正義……だけど今はその思いに身を任せよう!
……
……
「あーースッキリした! ありがとうガイブン人形! ありがとうサクラ、クロウ、ソフィア! ようやくスッキリした。何処まで行っても人は人、自分は自分だね! 僕は人の迷惑にならないならやりたいようにやる!」
「やっと戻ってきたねラウール! そうよ、人に言われてもなかなかわからないだろうから、待っていたのよ! 結果が今とは違う言葉が出てきても、私はあなたの味方よ!」
ガイブン人形と見つめ合った僕だが、ようやく決着をつけても良いと感じた。
0
お気に入りに追加
262
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中

生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる