今世は夫婦で冒険者パーティー黒猫 ~前前世は冴えなかったが前世は最強! で、今世も最強で旅をする。気ままに弟子を育てながら気まぐれに生きてい

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第三章 上を目指して

第八十八話 キバンのダンジョン百階

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他の冒険者には無理そうなダンジョンの九十九階から上に上る階段前に到着した。
このまま攻略してしまうと最高到達階まで来た冒険者パーティーを見ずに終わってしまう。

……どうする? 一度戻って十九階くらいに行ってみるか……
だが顔を合わせてしまってから百階を攻略すると、辻褄を合わせるのが大変か?


んーー悩む……

……
……
……

一気に攻略するか。

「サクラ、クロウ、ソフィア、百階に行ってみようか。もし最後ならダンジョンに何か起きるかもしれないけど、ボスを倒してから考えようか?」


「……また難しく考えてるでしょラウール。良いじゃない何が起きても。私達は皆で今後も一緒に過ごす。何が起きても私達の邪魔はさせない。相手が難癖をつけてこない限りは私達も無茶しないし、難癖をつけてきたら排除する。単純にいきましょ。」


「我もそう思うよ! ラウールはこの前から色々考えてるから、我からは何も言わないけどね。」


「そうですよラウール。私達は悪いことはしていません。そんな私達に敵対する人が悪いのですよ。胸を張って先に進みましょう。」


……


「だってさラウール。私達は悩んでいるラウールの気持ちもわかってる。だけどやりたいようにやろうよ!」


「……何かありがとう……。何だろうね僕の踏ん切りのつかなさは……。もうしばらく気持ちが切り替わらないかもしれないけど、ごめんね。」


僕の心の弱さを皆が知って接してくれる。どれだけ人生経験があっても変わらないな……


……
……

百階の攻略は明日にすることにして一晩僕達はゆっくりと休んだ。

……
……

そして心身ともに楽になった今日、僕達はダンジョン百階を攻略する。

……
……

百階に上るとすぐにボス部屋の扉だろう。今までのボス部屋の扉とは格が違うほど豪華な、重厚な扉が目の前にあった。

僕達はやはり百階が最終階だろうと言いながら、扉を躊躇いなく押した。

……

そして中に入るとそこは◯京ドーム五個分とでも表現するか……広い空間にただただ綺麗な岩の壁や床があった。
まーー簡単に表現すると、ボス部屋らしき豪華な空間だった。


その空間には何もいないと思っていたが、正面の突き当たり、ボスを倒した後に通れるだろう扉が開き、莫大な魔力を持つ存在が僕達に向かい歩き始めた。


スッスゥースッスゥー
と滑らかなリズムで近づいてくる……

……

……


ゆっくりとゆっくりと僕達の目の前には現れたのは……人形の……僕にはガイブンに見えた……

鑑定をしてみても初めて何かわからない。
名前も表示されない。

「……ねえ、あれはガイブン?」僕は何なのか自信がなく、皆に聞いてみた。

「我にはただの人形に見えるよ! だけどステータスはわからないよ!」

「私もクロウと一緒ですね。ただの人形に見えますよ。」

「私は前の世界の村長の息子に見えるわ! 私が前の世界で……あーー気分が悪いわね!」

「……ん、見え方が人によって違う? でもクロウとソフィアは人形に見える……あーーそういうことか。でもこんな僕達の頭の中を覗くような真似が出来るって事は……厄介なボスかな?」


僕は気合いを入れ直しボスに攻撃をすることにする。


……


僕がそう思い気合いを入れていると、ガイブン人形が素早く斬りかかってきた。お腹の揺れもないまま真っ直ぐに飛びかかってきた。


「っと! いきなり出てきたその大剣! 何処から出したんだよ! それにその速さ! 」

僕は少し焦った!
今までの戦った中で一番強い!
ガイブン人形のくせに!
心が乱れる……

そんな僕の心の乱れを感じたのか、右に左に何度も斬りつけてくる!

攻撃はすべて避けることが出来ているが、一撃でも当たると傷くらいはつきそうだ。

僕はガイブン人形だとわかっているが、あのガイブンの見た目で攻撃をされておりなかなか反撃できない。


攻撃を避けながらガイブンの事を考えてしまう。

鋭い突きを避け…………僕は何故イライラさせられただけのガイブンをあそこまで憎んだのだろう。

右からの横一閃に斬る一撃を後ろに避け…………僕のあの選択は正しかったのだろうか。

縦に大剣を振り下ろした一撃を横に避け…………家族と思っている者を奪われそうになって僕の心が病んでいた?

いきなり火の玉が無数に飛来したから結界で防ぐ…………詐欺師まがいな会話で何を言っても無駄だと思った?

結界を解いてすぐに前蹴り攻撃を足で止める…………口で言いあっても敵わないと感じて物理的に亡きものにした?

ちょっとガイブン人形が下がってからもう一度火の玉が飛んでくる…………あーーよくわからなくなってきた。

ガイブン人形は攻撃が当たらないからか一度動きを止めて僕を見ている。


そのガイブン人形と目を合わせ僕も頭の中を整理する。

僕の被害は奪われそうになったこと。もし僕が力も人との繋がりも無かったら…………大切なものが奪われていた。

ガイブンは僕以外の人から大事なものを奪い、絶望させていた。

ある人物は自分で命を絶ち、ある人物はガイブンに命令された人に殺されてもいた。

……あーーやっぱり僕は自分勝手でもあるけど、わかっていながら他の人を不幸にする人が嫌いなんだな!

ガイブンみたいな人が生き残って、不幸な人が増えないようにする事……他の人でも出来るかもしれないが、僕の目の前で起こっていることを見逃す事が出来ないんだな。

小さな、自分勝手な正義……だけど今はその思いに身を任せよう!


……
……

「あーースッキリした! ありがとうガイブン人形! ありがとうサクラ、クロウ、ソフィア! ようやくスッキリした。何処まで行っても人は人、自分は自分だね! 僕は人の迷惑にならないならやりたいようにやる!」


「やっと戻ってきたねラウール! そうよ、人に言われてもなかなかわからないだろうから、待っていたのよ! 結果が今とは違う言葉が出てきても、私はあなたの味方よ!」


ガイブン人形と見つめ合った僕だが、ようやく決着をつけても良いと感じた。
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