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第一章 新しい生活
第五話 初めてのギルドマスター
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「何か騒がしいと思って降りてきたが、これは何だ!」
上の階から降りてきた男は冒険者ギルド内を見渡した。
でかい男だ。百九十センチはありそうな男。筋肉もりもりでバリバリの前衛職のような体。短髪でいかつい顔をしている中年の男が話しを続けた。
「俺のギルドで騒ぎを起こすなどどういうつもりだ? そっちの子供にお前が絡んだように見えるがどうなんだ!」
そう言われた僕達に絡んできた男は顔をしかめながらも声を絞り出した。
「俺はただ仲間にならないか誘っただけだ……。そうしたらこいつらが殺気を放って来たんだ……。俺より先に攻撃の意思を示したのはこいつらだ……。」
いつも通りの展開だな。
絡んできたやつが俺は悪くないと言う。
さてギルドマスターと名乗ったあのいかつい男はどう判断するのか?
「それは本当の事か! どうなんだお前ら!」
ギルドマスターは辺りを見渡し反応を確かめた。
誰も何も言えない雰囲気があり、受付さんも口を挟まない。
冒険者同士の諍いには介入しないのか?
いや、ギルドマスターがこう言っているから違うな。
もしかして、受付さんは絡んできた冒険者の味方か?
あくまでも予測になるが考え事をしていると、ようやくベテランの雰囲気を漂わせている冒険者が話し出した。
「ギルマス、その子達に下品に絡み始めたのがそこにいるDランクの、何といったか、そいつだ。そして先に殺気を飛ばしたのがそこにいる子供たちだ。だが先に剣で切りかかったのはDランクのそいつだ。どちらかと言えばDランクのそいつが悪いが、殺気を飛ばしたのも少し対応を誤ったように感じる。」
「ふむ、他に何か言う事がある奴はいないか!」
その後に誰も発言する者はいなかった。
「それでは判決を言い渡す! 子供達には悪いが喧嘩両成敗だ! 何か不服はあるか!」
Dランクの冒険者はお咎めがなかったのをいいことに首を縦に振る。
しかし僕達は納得できない。
殺気を飛ばすことと実際に武器を振るう事は事の大きさが違うだろう。
「私は納得できないわ!」
「僕も納得できない! 武器を抜いても不問なのか!」
辺りの冒険者達が少しざわついた。
おそらく僕達のような子供が反対するとは思わなかったのだろう。
「何が不服なのだ! お前らも殺気を飛ばしたのだろ!」
「殺気を飛ばす事で武器を向けられるなんて、ここで喧嘩とはどういうことを言うのですか? それなら攻撃を防ぐのではなく、反撃してた方が良かったよ!」
僕は不満だ。
なにを丸く収めようとしているんだ。
「殺気は攻撃の意思だろ? じゃあ続きをやるか? 決闘として処理してやるぞ!」
そうギルドマスターはにやりと笑った。
はっ!
ちょっとはめられたかも。
僕達の力を図ろうとしている?
前世の年齢を含めたらこんな若造にと言いたいが、僕達は森に引きこもっていたから、会話の駆け引きが苦手だったんだ。
ほぼ力技だったしね。
それは置いておいて、どうしようか……。
「受けるわ! こんな奴一瞬で倒してやるわ! どこに行けばいいのよ! ほら、そこのDランクも仲間を連れてきたら!」
サクラが挑発した。
この言葉を聞いたDランクの冒険者も表情をゆがめ、酒場にいた仲間に声をかける。
そこにいたのに今まで出てこないのか……。
「うむ、それでは場を用意してやろう。だが、お前らは素手でいいのか? 冒険者に見えないが、大丈夫なのか?」
またにやりとしている。
「なんでもいいわよ! もし貸してくれるなら大鎌でも貸してちょうだい!」
サクラも調子のいいことに交渉している。
「はっはっはっは~! いいだろう。決闘は訓練場で行う。相手を殺す、大怪我を負わせることは禁止だ。刃引きをした武器をお互い使うように。訓練場にある武器を使用しろ!」
さすがに僕達を格下と思っているDランクの冒険者は同意した。
しかし条件を出してきた。
「ただの決闘なのかギルドマスター。勝った場合に何か得る物はないのか。俺達DランクがFランクのガキに付き合ってやるんだぞ?」
少しギルドマスターは考えて答えた。
「おいガキども! お前らは何か良い物を持っているか?」
「持っていませんよ。だから僕達は今日冒険者登録に来たのですから。」
「じゃあ無料奉仕だな! 純粋な下働きだけさせることを約束し、一月あいつらの元で働くのだ!」
「一月? じゃあ、僕たちが勝った時は何かを得られるの?」
「一月で二人の子供が冒険者の下働きをした場合は、ん~、一日五千Eとして、一月は三十日....。二十万Eか?」
「計算を間違っているじゃない! 一人十五万Eで二人で三十万Eよ!」
「ふむ、計算が早いな。」
そこにDランク冒険者も口を挟む。
「さすがに負けるわけはないが、ガキどもの下働きでその金額は高いぞ! 十万Eまでだ俺達が賭けるのは!」
「そう言っているがお前らはいいのか?」
さすがにこれ以上はどうでもいいので、同意した。
この世界の人の強さはどんなものかまだ分からないが、さっきの攻撃を見るとこの程度の相手には負けないだろう。
「それでは訓練場に移動するぞ! 周りで見ていたお前らも気になるなら一緒に来い!」
ギルドマスターのその言葉でぞろぞろと冒険者ギルドの一階の奥にある訓練場にみんなで移動した。
上の階から降りてきた男は冒険者ギルド内を見渡した。
でかい男だ。百九十センチはありそうな男。筋肉もりもりでバリバリの前衛職のような体。短髪でいかつい顔をしている中年の男が話しを続けた。
「俺のギルドで騒ぎを起こすなどどういうつもりだ? そっちの子供にお前が絡んだように見えるがどうなんだ!」
そう言われた僕達に絡んできた男は顔をしかめながらも声を絞り出した。
「俺はただ仲間にならないか誘っただけだ……。そうしたらこいつらが殺気を放って来たんだ……。俺より先に攻撃の意思を示したのはこいつらだ……。」
いつも通りの展開だな。
絡んできたやつが俺は悪くないと言う。
さてギルドマスターと名乗ったあのいかつい男はどう判断するのか?
「それは本当の事か! どうなんだお前ら!」
ギルドマスターは辺りを見渡し反応を確かめた。
誰も何も言えない雰囲気があり、受付さんも口を挟まない。
冒険者同士の諍いには介入しないのか?
いや、ギルドマスターがこう言っているから違うな。
もしかして、受付さんは絡んできた冒険者の味方か?
あくまでも予測になるが考え事をしていると、ようやくベテランの雰囲気を漂わせている冒険者が話し出した。
「ギルマス、その子達に下品に絡み始めたのがそこにいるDランクの、何といったか、そいつだ。そして先に殺気を飛ばしたのがそこにいる子供たちだ。だが先に剣で切りかかったのはDランクのそいつだ。どちらかと言えばDランクのそいつが悪いが、殺気を飛ばしたのも少し対応を誤ったように感じる。」
「ふむ、他に何か言う事がある奴はいないか!」
その後に誰も発言する者はいなかった。
「それでは判決を言い渡す! 子供達には悪いが喧嘩両成敗だ! 何か不服はあるか!」
Dランクの冒険者はお咎めがなかったのをいいことに首を縦に振る。
しかし僕達は納得できない。
殺気を飛ばすことと実際に武器を振るう事は事の大きさが違うだろう。
「私は納得できないわ!」
「僕も納得できない! 武器を抜いても不問なのか!」
辺りの冒険者達が少しざわついた。
おそらく僕達のような子供が反対するとは思わなかったのだろう。
「何が不服なのだ! お前らも殺気を飛ばしたのだろ!」
「殺気を飛ばす事で武器を向けられるなんて、ここで喧嘩とはどういうことを言うのですか? それなら攻撃を防ぐのではなく、反撃してた方が良かったよ!」
僕は不満だ。
なにを丸く収めようとしているんだ。
「殺気は攻撃の意思だろ? じゃあ続きをやるか? 決闘として処理してやるぞ!」
そうギルドマスターはにやりと笑った。
はっ!
ちょっとはめられたかも。
僕達の力を図ろうとしている?
前世の年齢を含めたらこんな若造にと言いたいが、僕達は森に引きこもっていたから、会話の駆け引きが苦手だったんだ。
ほぼ力技だったしね。
それは置いておいて、どうしようか……。
「受けるわ! こんな奴一瞬で倒してやるわ! どこに行けばいいのよ! ほら、そこのDランクも仲間を連れてきたら!」
サクラが挑発した。
この言葉を聞いたDランクの冒険者も表情をゆがめ、酒場にいた仲間に声をかける。
そこにいたのに今まで出てこないのか……。
「うむ、それでは場を用意してやろう。だが、お前らは素手でいいのか? 冒険者に見えないが、大丈夫なのか?」
またにやりとしている。
「なんでもいいわよ! もし貸してくれるなら大鎌でも貸してちょうだい!」
サクラも調子のいいことに交渉している。
「はっはっはっは~! いいだろう。決闘は訓練場で行う。相手を殺す、大怪我を負わせることは禁止だ。刃引きをした武器をお互い使うように。訓練場にある武器を使用しろ!」
さすがに僕達を格下と思っているDランクの冒険者は同意した。
しかし条件を出してきた。
「ただの決闘なのかギルドマスター。勝った場合に何か得る物はないのか。俺達DランクがFランクのガキに付き合ってやるんだぞ?」
少しギルドマスターは考えて答えた。
「おいガキども! お前らは何か良い物を持っているか?」
「持っていませんよ。だから僕達は今日冒険者登録に来たのですから。」
「じゃあ無料奉仕だな! 純粋な下働きだけさせることを約束し、一月あいつらの元で働くのだ!」
「一月? じゃあ、僕たちが勝った時は何かを得られるの?」
「一月で二人の子供が冒険者の下働きをした場合は、ん~、一日五千Eとして、一月は三十日....。二十万Eか?」
「計算を間違っているじゃない! 一人十五万Eで二人で三十万Eよ!」
「ふむ、計算が早いな。」
そこにDランク冒険者も口を挟む。
「さすがに負けるわけはないが、ガキどもの下働きでその金額は高いぞ! 十万Eまでだ俺達が賭けるのは!」
「そう言っているがお前らはいいのか?」
さすがにこれ以上はどうでもいいので、同意した。
この世界の人の強さはどんなものかまだ分からないが、さっきの攻撃を見るとこの程度の相手には負けないだろう。
「それでは訓練場に移動するぞ! 周りで見ていたお前らも気になるなら一緒に来い!」
ギルドマスターのその言葉でぞろぞろと冒険者ギルドの一階の奥にある訓練場にみんなで移動した。
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