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第一章 新しい生活
第二話 今世での初めての町
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とうとう僕たちの順番が来た。
門番は僕たちの格好を見て少し眉間に皺が寄った。
「身分を証明するものを出してくれ。」
と門番はこちらに手を向けた。
やはりか。
僕たちは身分証明ができるものが無い。
「ごめんなさい、何も持っていません。」
「なに? 君達のような子を見たことはなかったが、どこから来たのだ? 君達だけで移動できるようなところに村はないだろう?」
「どうにかこうにかここまで来ました。長い道でしたが大きな町で働きたいと思って頑張りました……。」
ちょっと同情を引けるような調子で話してみる。
「遠くから? そんなきれいな格好でか? 着ている物こそどこにでもあるような服だが、汚れが少ないと思うが?」
忘れていた……。
もっと薄汚れさせる場面だったか?
演技と格好があっていなかった。
「それは頑張りを見せるために一着の服を大切に持ってきて、ここに来る前に着替えたんです!」
この答にもいぶかしげな表情をしているが、それ以上時間を使うのも嫌なのか、次の言葉を発した。
「それでは身分証明がない者は仮身分証を発行しているが、発行代金の銅貨一枚はあるか?」
「それが、お金がないのです……。」
「それでは通すことはできないんだ。いくら子供でも、子供に見せかけた大人もいるのでな。」
子供に……いろんな種族がいるのかな?
今はそれどころではなく、どうしようか?
「素材を代わりに納める事ではいけませんか?」
「ん~、門でそう言った事はしていないが、本当に子供のようだし、何がある?」
僕はポケットに手を入れて取り出すふりをして亜空間収納から途中で拾っていた薬草を見せた。
この世界の植物や生き物は微妙に前世とは違うが、近い形をしている。
おそらく微量の魔力を含んでいるから、薬草で良いはずだが。
僕の前世からのアイテムボックスX(今世では亜空間収納と呼ぶが)ではそう表示される。
「薬草か。この薬草であれば、ん~五つの根を持っているか?」
そう言われ僕は五つの根を取り出し門番に渡した。
「うむ、それではこれは俺が買い取り、銅貨二枚を君達に渡すことにする。これで二人は町に入ることが出来る。」
「ありがとう! ごめんなさい時間をとらせて……。でも、入っていいんだね?」
「うむ、いいぞ。だが、俺の時間をとったと言うが、もう少し俺の時間をやろう。他の奴が今は通常の検査に回っているからな。」
たしかに、僕たちに手を取られ、この門番は役を外れている。
「君達は子供で間違いないな?」
「はい、十二歳です。」
「ん~十二歳か…………ギリギリ冒険者ギルドに登録できるな……。では君達のような子供がこの町で過ごすにはどういった方法があるか?」
「身分証明書? お金? 仕事?」
「そうだ。君達は誰かの紹介があってこの町に来て働き口があるのか?」
「いえありません。」
「そうだろ。そんな場合はどうするべきか?」
「わかりません。」
「それでよくここまで来たな……。まあ来てしまったものはどうにもならないな。では一つの生き方を教えてやろう。君達はつてがないのであれば商会は無理だ。そしてそんな子供がどこに行くかと言うと孤児院だ。」
「孤児院は嫌です。働きます。」
「そうであれば、冒険者ギルドが一番だろう。苦労はするだろうが、どうにか生活できるかもしれない。そして暮らすためのお金の他に、冒険者ギルドで簡易的な鑑定を受けることで身分証明ができるプレートが手に入る。」
「冒険者ギルドでプレートを作るために鑑定?」
「そうだ。ある程度の村でも個人を証明するプレートを教会で作成するのだがな……。君達はそれも持っていないと言うのだろ?」
「はい、ありません。」
「だったら、今から教会でプレートをもらうことはできない。あれは教会がある村がお金を納めて作ってもらうものだからな。子供がどのような適性があるか知るためにな。適性に合った仕事をするのが大体の村の決まりだからな。」
へ~、適性が分かるなんて、どんな世界なんだろ。
「時々いるのだが、君達みたいに何も知らない子供は悪い奴らにつかまって奴隷になることもあるんだよ? そうならないためにも冒険者ギルドに行くと良い。初めての登録は無料でできる。困ったことも相談できるから、どこにも所属しないよりは良いだろう。なにせ、薬草は採取できるようだしな。」
もしかして、薬草を一定数出させたのはこの先僕たちがどうやって暮らすことが出来るか考えてくれた?
「ありがとう! じゃあついでに冒険者ギルドのあるところも教えてくれたらありがたいんだけど。」
そう聞くと門番は親切に教えてくれた。
何度も僕たちに聞き返し、ちゃんと覚えているかを確認しながら。
僕たちは門番から道を聞き町の中に入った。
町は前世とそこまで変わらないように見える。
良くある中世ヨーロッパな景色。
早く環境を確かめたいところだが、ひとまず冒険者ギルドに行き登録をしないと。
そして、お金がないから野宿しかなくなるので、早く稼ごう。
まーいざとなったら魔法でどうにでもなりそうだけどね。
そう考えながらサクラと手をつなぎ冒険者ギルドへ向かった。
門番は僕たちの格好を見て少し眉間に皺が寄った。
「身分を証明するものを出してくれ。」
と門番はこちらに手を向けた。
やはりか。
僕たちは身分証明ができるものが無い。
「ごめんなさい、何も持っていません。」
「なに? 君達のような子を見たことはなかったが、どこから来たのだ? 君達だけで移動できるようなところに村はないだろう?」
「どうにかこうにかここまで来ました。長い道でしたが大きな町で働きたいと思って頑張りました……。」
ちょっと同情を引けるような調子で話してみる。
「遠くから? そんなきれいな格好でか? 着ている物こそどこにでもあるような服だが、汚れが少ないと思うが?」
忘れていた……。
もっと薄汚れさせる場面だったか?
演技と格好があっていなかった。
「それは頑張りを見せるために一着の服を大切に持ってきて、ここに来る前に着替えたんです!」
この答にもいぶかしげな表情をしているが、それ以上時間を使うのも嫌なのか、次の言葉を発した。
「それでは身分証明がない者は仮身分証を発行しているが、発行代金の銅貨一枚はあるか?」
「それが、お金がないのです……。」
「それでは通すことはできないんだ。いくら子供でも、子供に見せかけた大人もいるのでな。」
子供に……いろんな種族がいるのかな?
今はそれどころではなく、どうしようか?
「素材を代わりに納める事ではいけませんか?」
「ん~、門でそう言った事はしていないが、本当に子供のようだし、何がある?」
僕はポケットに手を入れて取り出すふりをして亜空間収納から途中で拾っていた薬草を見せた。
この世界の植物や生き物は微妙に前世とは違うが、近い形をしている。
おそらく微量の魔力を含んでいるから、薬草で良いはずだが。
僕の前世からのアイテムボックスX(今世では亜空間収納と呼ぶが)ではそう表示される。
「薬草か。この薬草であれば、ん~五つの根を持っているか?」
そう言われ僕は五つの根を取り出し門番に渡した。
「うむ、それではこれは俺が買い取り、銅貨二枚を君達に渡すことにする。これで二人は町に入ることが出来る。」
「ありがとう! ごめんなさい時間をとらせて……。でも、入っていいんだね?」
「うむ、いいぞ。だが、俺の時間をとったと言うが、もう少し俺の時間をやろう。他の奴が今は通常の検査に回っているからな。」
たしかに、僕たちに手を取られ、この門番は役を外れている。
「君達は子供で間違いないな?」
「はい、十二歳です。」
「ん~十二歳か…………ギリギリ冒険者ギルドに登録できるな……。では君達のような子供がこの町で過ごすにはどういった方法があるか?」
「身分証明書? お金? 仕事?」
「そうだ。君達は誰かの紹介があってこの町に来て働き口があるのか?」
「いえありません。」
「そうだろ。そんな場合はどうするべきか?」
「わかりません。」
「それでよくここまで来たな……。まあ来てしまったものはどうにもならないな。では一つの生き方を教えてやろう。君達はつてがないのであれば商会は無理だ。そしてそんな子供がどこに行くかと言うと孤児院だ。」
「孤児院は嫌です。働きます。」
「そうであれば、冒険者ギルドが一番だろう。苦労はするだろうが、どうにか生活できるかもしれない。そして暮らすためのお金の他に、冒険者ギルドで簡易的な鑑定を受けることで身分証明ができるプレートが手に入る。」
「冒険者ギルドでプレートを作るために鑑定?」
「そうだ。ある程度の村でも個人を証明するプレートを教会で作成するのだがな……。君達はそれも持っていないと言うのだろ?」
「はい、ありません。」
「だったら、今から教会でプレートをもらうことはできない。あれは教会がある村がお金を納めて作ってもらうものだからな。子供がどのような適性があるか知るためにな。適性に合った仕事をするのが大体の村の決まりだからな。」
へ~、適性が分かるなんて、どんな世界なんだろ。
「時々いるのだが、君達みたいに何も知らない子供は悪い奴らにつかまって奴隷になることもあるんだよ? そうならないためにも冒険者ギルドに行くと良い。初めての登録は無料でできる。困ったことも相談できるから、どこにも所属しないよりは良いだろう。なにせ、薬草は採取できるようだしな。」
もしかして、薬草を一定数出させたのはこの先僕たちがどうやって暮らすことが出来るか考えてくれた?
「ありがとう! じゃあついでに冒険者ギルドのあるところも教えてくれたらありがたいんだけど。」
そう聞くと門番は親切に教えてくれた。
何度も僕たちに聞き返し、ちゃんと覚えているかを確認しながら。
僕たちは門番から道を聞き町の中に入った。
町は前世とそこまで変わらないように見える。
良くある中世ヨーロッパな景色。
早く環境を確かめたいところだが、ひとまず冒険者ギルドに行き登録をしないと。
そして、お金がないから野宿しかなくなるので、早く稼ごう。
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そう考えながらサクラと手をつなぎ冒険者ギルドへ向かった。
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