異邦の13人ーThe 13 of Etranzeー

1章3部アラビア海航海編ーインド･ヴァルダナ王朝ー

第三十五話 負けてはいない

　先に先手を打ち出したのは猿の王様ビカスからだった。
「オラ、行くぞッ！」
　ビカスは思いっきり前へ足を踏み込み語部優の前へ接近し湾刀を突いた。語部優は危なげに避けたが、その突いた湾刀はそのまま語部優の方へ斜めに斬った。
　湾刀の刃は語部優の頭部スレスレを通過し髪の毛の端数本が切られた。
「ほぉ、これを交わすか人間。」
「まぐれです。」
「フッ、次は必ず殺す！。」
　猿の王様ビカスは語部優に言うと瞬速の速さで接近した。そして語部優の腹を殴り後ろへと吹き飛ばした。
　アウロラは「One  dimension,」と呪文を唱えガラスのバリアを語部優の周りを張った。
　しかし一発で前面のバリアにヒビを入れた。
「くっ…ッ、このクソ猿！」
　アウロラは叫けんだ。再び呪文を唱える。
「three dimension.」
　アウロラは語部優の手を操り猿の王様ビカスに向けた。そしてもう一度唱える。
「Impulse Discharge！（衝撃電流放電！）」
　語部優の手の平から電流が放ち猿の王様ビカスの胸に直撃し一気に身体中に高圧電流が流れる。
「ビカス様！」
「ビカス様！大丈夫ですか？！」
　体から黒い煙を上げて猿の王様ビカスに心配して周りの猿らが声をかけた。
　猿の王様ビカスはその言葉に答えるかのように足を踏ん張り渾身の一撃をワン･ディメンション（バリア）に叩きつける。そしてバリアは粉砕した、そして猿の王様ビカスは自慢の長い尻尾で語部優の腰に巻き付けた。
「これで終わりだ人間ッ！」
　猿の王様ビカスはそう言うと語部優を地面へ叩きつけた！。
「グハッ！」
　猿の王様ビカスに叩きつけられた語部優は体全身を打ち口から血を吐いた。
「これで勝敗は決まりだ人間よ！」
　猿の王様ビカスは足を上げ横たわる語部優の頭部に狙いを定め力強く踏みつけるように下げた。
　語部優はギリギリ横に避けて猿の王様ビカスの踏みつけ攻撃を交わした。すると踏みつけた地面は粉砕し小さなクレーターのような凹みが出来た。
「くっ……ッ」
　全身を地に叩きつけられた語部優は大刀契を杖のよう地に刺してふらつく体を支えて立ち上がった。
「まだ立つか愚人。早く殺られて聖なる川「ガンジス川」の流れに乗り仏陀の地を拝み、現聖地に入った愚かな行為を後悔し過ちを犯さぬ弱き蕩児愚人から強き聖人君子へと成り善の人生をやり直せ。」
　猿の王様ビカスは語部優に言った。
「僕はまだこの場では倒れません！貴方にとはまだ戦える力はあります！」
　語部優はそう言うと大刀契を猿の王様ビカスに向けて投げ飛ばした！。
　しかし大刀契は軽々と弾き返されてしまい、猿の王様ビカスの後ろ飛んで行った。
「フッ、馬鹿め。人間はそこまでも脳は衰えたか？」
　猿の王様ビカスは鼻で笑いバカにするように語部優に言う。すると語部優は小さな声で「来い。」と呟く。その時だった、猿の王様ビカスの弾いた大刀契は語部優へ戻る。その際、語部優に戻る大刀契が真ん前に居た猿の王様ビカスの背中を刺した。
「あぁぁッ、な…ッ？！」
　背中に刺さった大刀契は語部優に戻ろうとする力に逆らえず腹部に刃先が飛び出しやがて猿の王様ビカスの腹を大刀契が貫通し腹部中心に大きな空洞ができた。