異邦の13人ーThe 13 of Etranzeー

1章3部アラビア海航海編ーインド･ヴァルダナ王朝ー

第三十三話 キツツキを追って…

「ぶち殺せッ！」
　周りの不良少年達は一斉に黙橋切也の方へ走った。すると黙橋切也は軽々と余裕に攻撃を交わし次々と不良少年達をボコボコにしていく。
　腕を折り、顔面を殴り、川へ投げ飛ばしたりとまるで踊りを踊っているかのように攻撃を繰り出す。
「す、すごい…。」
　不良少年らは黙橋先輩の服に触れることも無く全員撃退してしまった。
　すると黙橋先輩は奇襲をかけてきた不良少年らの第一ボタンを引きちぎり奪ってきた。
「大丈夫ですか？」
「俺は平気だ。さっさとここから逃げるぞ。警察が来る前にな…。」
　黙橋先輩はそう言うとバイクに戻り僕も後を追いバイクの後ろに跨った。そして黙橋先輩もバイクに乗り走らせた。
　すると黙橋先輩は語部優に背中で語る。
「お前絶対に鍵を無くすなよ。」
「……はい。絶対になくしません先輩。」
　(―そしてこの約束を交わした二日後突如として黙橋先輩は行方不明になった。)

「黙橋とい言う男はそれから見つかっていないのか？」
　アウロラが語部優に聞いた。
「はい。僕が初めて尊敬できる先輩、そしてかっこい良くて強く逞しい先輩でした。」
「ふん～。」
「神様ちゃんと聞いていました？」
　暇そうに返事をするアウロラに語部優が怒るように言った。
「聞いてる。しかし少年よ。朕が見ていたら主の口調や雰囲気はかなり今と異なっていると見た。やはりあの黙橋の影響か？」
「……はい。」
　語部優は少し恥ずかしがりながら言うと首にぶら下げていたあの時の鍵を服から出した。
「この鍵があるから僕は頑張れるのです。」
「………。そうな、さてそろそろ行くか？そこで長々としているとヴァルダナ軍に見つかるかもしれんからな。」
　アウロラは語部優に言うと「そうですね。行きましょう。」と答え立ち上がる。
　すると空から鳥の囀りが聞こえ語部優が上を見上げる。するとそこにはあの時のキツツキが停滞飛行をしていた。
「あれはあの時…。」
「なんだ？あのキツツキ、少年を見て確認をしている。」
　キツツキは語部優と目が合うと左方向へ羽ばたいて行った。
「なんだろ…僕を導いているのか？」
「間違いない、あのキツツキを追え。」
　語部優はキツツキを追い走り出した。