異邦の13人ーThe 13 of Etranzeー

1章1部 プロローグ編

第十一話 無生物の力

　ヘリヤはアリババとモルジアナに話した。
「君たちにも消えてもらう。Auf Wiedersehen traurig,（アォフ　ヴィーダアゼーエン　トラオリヒ）」
　ヘリヤはドイツ語で別れの言葉を告げ引き金を押し込もうと指に力を入れた。
　
　語部優は刀の柄に力を入れた、そして語部優は刀を抜くと自分の所へ迫り来る無名に刃を横に振る。すると今まで攻撃の入らなかった無名を切り裂き、上半身と下半身を斬り飛ばした。
　ヘリヤも切り裂く音に後ろに向きを変え「なんだ？！」と声を出して言った。
　ヘリヤのサングラスの下から見る眼には血飛沫を上げて倒れゆく無名の中に語部優が立っていた。
　「殺れ！」
　ヘリヤは銃口で語部優を指して無名らに命令を出した。無名らは語部優に刃物を向け切りかかった。語部優の目にはまるでスローモーションに見え無名らを次々と真っ二つに切り裂いていく。するとアウロラは今の語部を見て脳に直接話した。
「今の主になら朕の能力を扱えるかもしれん。」
　アウロラは呪文を唱えた。
「『地は神が創り大地は巨人が形成。九つの大地は一つの生命を産み第一次元を生成する。』Generation,one-dimensional（生成、一次元）」
　すると語部優の左腕が勝手に前へ突き出し手を広げた。ヘリヤは語部優に銃弾を発射、弾丸は勢いよく回転し空気を切って語部優の胸あたり数十センチに差し掛かった時、高速回転して弾丸はゆっくりと止まり空中に停滞した。
「え？何！」
　語部優は驚いているとアウロラが言った。
「今少年の体を借りている。朕の動きに逆らうと死ぬぞ。」
　語部優はアウロラの言われた通り逆らわずそしてアウロラは語部優の腕を操った。
　語部優の手の平を上に向け捻るように動いた。すると空中に停滞していた弾丸は勢いよくヘリヤの方を向いた。そしてアウロラは「firing」と唱えた。
　すると弾丸はヘリヤのハンドガンから撃たれたと同等の速さで弾丸を弾き返した。
　そしてその弾丸はヘリヤの左手に持つハンドガンを撃ち弾き銃口を破損させた。
　それを見た語部優はヘリヤの方に走り攻撃を仕掛けた。ヘリヤは残りの無名八人に「討て」と命令、無名はヘリヤに向かって走る語部に湾刀を振り上げ襲いかかった。
　語部優は容赦なく抗う無名を次々と押し切った。
　全ての無名を斬り殺した語部優を見てヘリヤは地に落ちている石を一つ持ち上げた。そして石を親指と人差し指でつまみ呪文を唱えた。
「命の宿さぬ物に告ぐ。我に抗う神を討ち殺し地獄へ誘いたまえ。Unbelebtes magisches Feuern,（無生物呪術 発砲）」
　手に持っていた小さな石が弾丸の如く放たれ轟音と共に語部優に目掛けて飛んできた。そして石が弾丸を止めた同じ距離に差し掛かった時、語部優のすぐ左の真横の空間がガラスのようにヒビが入った。
「ッ？！」
　驚く語部優にアウロラが言った。
「気にするな！朕は主を護る、少年は奴を討つことだけを考えろ！走れ！」
　アウロラの言葉に語部優はヘリヤの攻撃に恐れず、まるで我を忘れているような自分の意思でわないような無鉄砲な特攻にヘリヤも驚きを隠せず「クソタレ！」と暴言を吐き出し石を連続で飛ばした。
　パリンッ！パキッ！
　語部優の見えてる視界の全てがヒビが入り今にでも割れそうだった。そしてバリンッ！！。と、語部優の正面が見やすくなった。アウロラの張ったディメンション、次元が破壊されたのだ。
　しかし語部優はそんなことお構い無しにその足を止めず走り続けた。ヘリヤはわずか数メートルの語部優に二つ石を連続して飛ばした、だが語部優は一撃は頬をかすれ二撃の攻撃は奇跡的に腕と脇腹の隙間を通過した。
　そして語部優は渾身の力を大刀契のは先に込めてヘリヤの腹の中央に目掛けて刺した。
　大刀契はヘリヤの腹に突き刺さり背を貫いた。
「ぐはっ…」
「僕は弱くわない…僕は強い。弱いと言ったことを取り消してください…。」
　語部優はヘリヤの腹から溢れ滴り落ちる音と大刀契の刃に溝に沿って柄まで流れてくる生暖かい血が語部優の手の指先に滴る感触を味わいながらヘリヤに自分は弱くないと、弱いと言ったことを前言撤回するよう言った。