異邦の13人ーThe 13 of Etranzeー

ロン・インディー

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1章1部 プロローグ編

第一話 神アウロラ

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 二千四十年八月、蒸し暑い大雨の後の真夏日。道を歩くだけで汗が滴るこの炎天下の中で一人の青年がお気に入りのバックを片手にこの田舎の町唯一の図書館へ向かっていた。
「あッ…つ。」
 僕は全面から溢れる汗を拭い言った。
 永遠と続く田園とひまわり畑、太陽の周りを旋回する鷹に風のない農道をひたすら歩いた。
「はぁ。あれこんなに歩き慣れた道は長かったけ…?。…うん?」
 蜃気楼で揺れる農道の向こう、ゆらゆらと暑さに揺れる景色に真っ黒い何かが落ちていた。それを見た青年は「あれは…本。」と口に出して言った。
 青年はそれを本だとすぐに分かり本の元へ向かった。炎天下に晒されていた本は傷み質が悪くなってしまうため急いで本を手に持った。
 案の定、本はとても暑く熱しられどれだけ長時間放置されていたのかが変わらないほどだった。青年はさりげなく本の表紙を見てみるとそこにはルーン文字でタイトルが書かれていた。
 青年はルーン文字を読めるはずもないが中身をとても気になり見てみたくなる衝動に走ってしまった。
 青年はゆっくりと中身を見た。そこにはびっしりとルーン文字が書かれていた、青年は開けてみてしまったら最後のページまでパラパラと中身を見てみた。すると最後のページに近づいた時だった。周囲の自然音が沈黙し何も聞こえなくなった。青年は本に向かって一瞬き、本から目を逸らし正面に目を向ける。
 そこはさっきまで居た田園の農道ではなく真っ暗な無音の少し霧かかった、少し濁ったような朧月の光が天にあるだけの匂いも何も無い密室。
 急な出来事に思考停止し困惑していると「私の声聞こえるか少年。」急に女性の声で問いかけられ青年は左右を周囲を見渡した。
「青年後ろを見ろ」
「……えっ。」
 そこに居たのは、少し宙に浮く立派な椅子に腰掛け優雅に足を組みながらローマ時代の服装のトガを着て隣に赤いルビーの着いた黄金金箔の杖を添えた女神が目全体を白布で覆う顔でこちらに目を向けて見ているのか、見ていないのか分からない澄ました無表情でこちらを顔を向けていた。
「だ、だれ?」
「最初に出会って開口一番がそれか少年。まぁこんな暗い無空間の密室に転送されて見知らぬ女が見知らぬ少年に話しかけられたらそのような反応は当たり前か」
「誰?何者ですか?!」
「先に名乗るのが礼儀だろ?人間。」
 少し頭にきたが自分の名を名乗った。
「僕は語部優。語りは言うに吾と書いて…」
「それ以上言わなくても少年の名は前から知っている。」
「何故名前を聞いたんですか?!」
 語部優は女にキレ気味に言った。
 女はふっと鼻で笑い椅子の肘置きに肘を立てて掌に顎を乗せて語部優に名を教えた。
「朕は知恵の神アウロラ。」
「神…何故神が僕をこの場所に招いたんですか?」
「朕は少年を助けるために白衛から呼ばれた。君は今神々の遊戯盤の上に立っている。君は神々に遊ばれているんだよ少年。」
「神々?遊戯盤?何言っている。意味わからないよ!」
 神や遊戯盤や白衛など何を言っているのかわからないアウロラに文句つけた。
「少年よ。元の現世に戻りたいか?」
 語部優は即答に「戻りたい!」と叫んだ。
 アウロラはニタリと笑うと次のように語部優に言った。
「朕が負けたら君を現世へ返してやろう少年。もし朕が勝ったら主の体を朕が好きなように使わしてもらう。」
 長い金髪の横髪をさらっと払って言った。
「勝つってどうやって?」
「君にはこれを貸そう少年。」
 アウロラは長い何かを投げられ語部優の足元に金属音が密室に反響して鳴り響く。
「これは…」
 語部優はアウロラに投げられた物に一瞬息が止まりそうになった。その投げられた物の正体は鋼が鋭く尖った刃の剣だった。
「それは神々に継承されてきた大刀契ー通称・三公闘戦剣ー。それで朕にかすり傷でも与えてみたまえ。そしたら帰らせてやる。」
 アウロラからのかすり傷を付けろというお題が出され語部優は「分かった。」と承認しアウロラから投げられた神の剣、«大刀契»を手に取り青銅に巻かれた麻布の持ち手にガッチリと掴みアウロラに戦いに挑んだ。
「かかってきなさい少年」
 アウロラが語部優に挑発をした。
 語部は容赦なく剣を片手で持ちながらアウロラの方へ走り剣を大きく横へ振りかぶった。
 その瞬間、アウロラは呪文のような言葉を唱えた。
「"one dimensions,"」
「なァ!」
 アウロラを囲むように周囲の大気が見えないバリアを張り、空間に歪み盾のような役割りになっていた。
「神に抗うことは出来ない」
 アウロラは指を鳴らしと、見えない波動が周囲に放たられ語部優はすごい力で押し返された。
「朕にはまだ勝てない。」
「……」
「勝負は着いた。少年の負けです。」
「まだ負けてない。」
「朕に傷を一つも付けられない少年に朕を従わせる権利などない」
 アウロラは椅子の方へ向かって歩き始めた。それを見た語部優は今がチャンスと思い卑怯な手口でありながら背を向けているアウロラの首に大刀契を横に振る。
 その時、一瞬きする隙のないほどの速さで語部優の顔面に女神の回し蹴りが炸裂、語部優は全身が捻れるような勢いでぶっ飛ばされた。
 語部優は歯茎から血を流し回し蹴りで食らった顔面の激痛を耐えながら起き上がろうとした。だがアウロラは語部優の右頬に力強く素足の裏を押さえつけ頬骨と顎の間に土踏まずをねじ込ませてきた。
「どう、朕に踏まれる気持ちは?」
「痛いです。とても…」
「もう懲りた?少年。」
「はい、僕は神に抗いません。なのでその足をどかしてくれませんか?」
 語部優はアウロラに抗わないと誓い、語部優の顔から足をどかしてくれた。
「痛たた…」
 語部優は赤く足跡の着く頬を撫でた。
「約束通り朕は少年を好きなように使わせて貰うとしよう。」
 アウロラは人差し指を立ててまた呪文を唱えた。
「FrameIgnitedBurn,」
 指先に小さな炎が燃え語部優の右手の甲に向け放った。
 炎は渦を巻き吸い込まれるように手の甲に不気味な赤みを帯びた黒い刺青が浮かび上がった。
「な、なんだこれ…」
「それは神の烙印。その烙印を付けておけば少年の体は朕の物。」
 アウロラは烙印について軽く説明を始めた。
「その烙印は朕にも焼かれている。その烙印を焼かれているもの同士は一心同体だ。少年には手の甲に焼かれているが朕は胸に焼かれている。少年よ見てみるか?」
「あ、ちょっとここで脱ぐのは!」
 アウロラはその場で脱衣しようとし語部優は目を瞑り言った。
「ふふ。冗談だ少年。神は人をからかうのが好きでな」
「悪魔かよ…」
 語部優は少し怒りの口調で言った。
「しかしここからは真面目な話だ少年。その烙印には三つの能力を使える。」
「三つ?」
「一つ目は、さっき少年に渡した大刀契を操る力だ。」
「大刀契を操る力?」
 するとアウロラは指をパチンッ鳴らした後で語部優の手の甲の烙印が燃えるように光り始めるとアウロラは「大刀契をどこでもいいから遠くへ投げて」と語部優に言った。
 語部優は言われた通りに左側へ大刀契を勢いよく投げた。
 するとアウロラは「来い!」と声に出して言うと大刀契は急に方向転換しブーメランのようにまたこちらへ戻って飛んできた。大刀契はアウロラの方へ戻り大刀契を綺麗にキャッチした。
「大刀契は朕と同じ烙印を焼かれたものにはちゃんと指示に従って操ることが出来る。」
「すごい!」
 語部優は目をキラキラさせて言った。
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