StandAloneFake

電柱

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起因

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 相棒であり同僚であった武田が殺されたのは、ある猟奇事件の捜査中のことであった。
 血文字事件。この事件の被害者は、死ぬ間際まで痛みを感じるように殺害されていて、現場には、被害者の血液で書かれた「SAF」という血文字が残されているという事件だった。
 当時、これだけ派手な犯行を起こしながら、有力な容疑者も見つからず、被害も拡大し始めていたため、本庁で特別捜査本部が作られた。
 俺と武田はそこに配属されていた。
 特捜設置から数日後、武田は血文字事件の十人目の犠牲者となった。発見されたのは殺された翌朝、住宅街にある小さなトンネルの中であった、もともと人通りが無く、犯行も深夜に行われたため、目撃証言は得られなかった。
 俺が知らせを聞いて現場にとんでいくと、冷たいコンクリの壁に野垂れかかった武田の遺体があった。
 この事件において、遺体の顔はわりかし損傷が少ない。この事件の犯人は殺しよりも、痛みを与えることに目的が傾いているからだ。だが、その分ホトケの表情は壮絶で、武田の死に顔も、瞳孔が開ききり、頬には涙の跡がくっきりとついていて、端から泡を吹いている口は、何かを大声で叫ぼうとしたかのように、大口を開けていた。検査の結果、死因は睾丸粉砕によるショック死だった。
 そして、トンネルのコンクリ壁には武田の血で大きく「SAF」と刻まれていた。
 武田は妻帯者だった。火葬場で夫を見送る若い妻の顔は、生霊のようだった。3才になる子供がいたのは、幸いだったのだろうか…
 
 後日、資料を整理していると、一件のメールがPCに送られてきていた。武田からだった。
 内容は一言だけこう書かれていた。

 「standalonefake」
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