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第一章 黒い髪のメイド
メイドの日常(4')
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僕の名前はクロ、今はあの黒い魔女の使い魔として働いているんだ。
ほんとは猫じゃなくて、パンサーデビルっていう豹の魔物。
とても強いんだよ、大きくてかっこよくて人間になんて負けたことなかったのに あの魔女にコテンパンにされて、こんなに小さな姿にかえられてしまった。
名前もせっかくならもっとかっこいい名前がよかったんだけど、あんな怖い魔女のきめたことに逆らえるわけがないよ。
でも・・・・・・最初に出会ったあの時と違って、あの魔女とってもやさしいんだけど?
どうしちゃったんだろう?
僕はエルクの街から、遠く離れたエドナ火山のふもとに生まれて育った。
そこはつねに噴気が立ち上る、人や獣は立ち入れないような厳しい環境ではあったんだけれど、大地から吹き出すマナの量が豊富で、僕達のような熱に強い魔物にはとてもすごしやすかったんだ。
たしかそこで10歳くらいまで、群れの中ですごした記憶がある。
記憶があるっていう変な言い方をしているのは、訳があるんだ。
それは群れの友達と一緒になって遊んでいたときのことだったんだけど、僕は少し仲間とはぐれてしまって、いつもはいかないような場所まで足を踏み入れてしまっていた。
そこで、白く光り舞い踊るとてもきれいな光の妖精たちを見つけてしまった。
その美しい出会いに心を奪われた僕は、その舞の中心までふらふらと足を運んでいた。
でもそれが罠だったんだ。
僕は神の手という、マナの意思が仕掛けた罠に捕らえられてしまったんだ。
マナの意思っていうのは、この世界はマナに満たされているんだけど、じつは大地や大気中のマナは意思を持っているような動きをすることがあるんだ。それは生き物みたいな好き嫌いとか、悲しい、怒ったりなんかを考えるようなものじゃなくて平穏な何かを望んでいる、そんな漠然とした考え方をするみたい。
なぜそんなことにくわしいのかって? 僕はマナの意思に捕らえらてれたからね。
マナの意思につかまると、ほとんどの自由は奪われるんだけど、かわりに膨大なマナと屈強な身体や知力が与えられて、またマナの意思が保有する知識のほんの一部だけれど、つながることもできるようになる。
だからこの世界のことわりについて、僕は少しは知識があるんだ。
大きな戦いや天災がおこると、世界に満たされているマナ自体が大きく揺らぐことがあるんだけれど、そんなときにマナの意思は危機を感じて、この神の手を使って多くの魔物を捕らえ、魔物のもつ魔石を支配し自分の分身をかまえる。
そしてとらえた魔物たちを軍隊のように扱い、その揺らぎ原因を壊して、平坦なものにならそうとするんだ。
それが魔物のスタンピートとなるってわけ。
ただそのスタンピートで神の手によって捕らえられた者のほとんどは、その争いや、また生き残ったものも同士討ちによって死んでしまう。
だけれどほんのごく一部、僕みたいな生き残りがでることがあるんだ。そんな生き残りは次の戦いまで、マナの意思の奴隷として、使役されることになる。
そしてそんな状態のときに、僕はあの黒い魔女に出会ってしまったんだ。
ある夜のこと、僕の主であったマナの意志はエルクの街にマナのわずかなゆがみを見つけた。僕はその原因を探るべく、郊外の森を調べている時だった。
突然、闇夜からフードをかぶった黒のローブ姿に小さな杖を持つ魔女が姿を現した。
「近くに妙な力を感じるなぁと思ってきてみたら、クソ野郎の下僕じゃない」
その女は僕をみて、口角を少し上げたにやけた顔でそういったんだ。
ひと目でマナの意思に縛られている魔獣ということを見抜いたようだった。
そして僕はこの魔女がゆがみの原因だと悟ったんだ。
「私はね、昔あなたの主に何度も殺されかけたんだ。まあもうあの程度に殺される私じゃないけど……。ただ、目をつけられると少し面倒よね。あなたにはやっかいなことになる前に死んでもらっちゃおうかなぁ」
魔女はそういうと軽く杖を一振りする、僕は一瞬にして巨大な青い炎につつまれた。
逃げる間もなくその炎に焼かれ全身は大やけど、ほとんど意識を失いかけた。
でもしばらくすると、突然、炎が消失して周りは平穏を取り戻したように見えた。
「ええっ、この炎で焼かれてまだ生きているの。あなたすごいね」
エドナ火山のふもとで生まれた僕らは、パンサーデビルと呼ばれる種の中でもとりわけ熱に強かったことが、魔女の目を引いたようだ。
「あなたのその力、あんな奴にはもったいないわ。私がもらってあげる」
「私の可愛いナーシャの使い魔になってもらおうかな」
魔女はうれしそうにそういうと、僕に向かってさらにもう一回杖をふった。
身体の火傷が一瞬で治り、そして体のサイズが子猫ほどになってしまった。
またマナの意思が切断された感触があったかと思うと、目の前の魔女との新たな主従の印が、僕の魔石刻まれていた。
信じられなかった。強大なマナの意思の力を切断できることも、僕ほど強いマナをもつ魔物の魔石に、いとも簡単に主従の印を刻むことも……。
そしてその主従の印から流れてくる神をも超えるかというその力の前には、己の力などまるで意味を持たないということを思い知らされた。
僕は悪魔の持つ力を前に、恐ろしさに身を震わせていた。
そして黒いオーラに浮かぶ魔女の頭にかけたフードに見え隠れするその怪しげな笑みが見えたところで、僕は気を失った。
そして気がつくと、あの魔女がそばで寝ていた。
僕は、あわてて逃げ出そうとしたけれど、主従の印はそれを許しはしない。
やがて永遠とも感じられた長い時がすぎ、魔女が目を覚ました。
僕は恐怖のあまり失禁してしまった……。
ほんとは猫じゃなくて、パンサーデビルっていう豹の魔物。
とても強いんだよ、大きくてかっこよくて人間になんて負けたことなかったのに あの魔女にコテンパンにされて、こんなに小さな姿にかえられてしまった。
名前もせっかくならもっとかっこいい名前がよかったんだけど、あんな怖い魔女のきめたことに逆らえるわけがないよ。
でも・・・・・・最初に出会ったあの時と違って、あの魔女とってもやさしいんだけど?
どうしちゃったんだろう?
僕はエルクの街から、遠く離れたエドナ火山のふもとに生まれて育った。
そこはつねに噴気が立ち上る、人や獣は立ち入れないような厳しい環境ではあったんだけれど、大地から吹き出すマナの量が豊富で、僕達のような熱に強い魔物にはとてもすごしやすかったんだ。
たしかそこで10歳くらいまで、群れの中ですごした記憶がある。
記憶があるっていう変な言い方をしているのは、訳があるんだ。
それは群れの友達と一緒になって遊んでいたときのことだったんだけど、僕は少し仲間とはぐれてしまって、いつもはいかないような場所まで足を踏み入れてしまっていた。
そこで、白く光り舞い踊るとてもきれいな光の妖精たちを見つけてしまった。
その美しい出会いに心を奪われた僕は、その舞の中心までふらふらと足を運んでいた。
でもそれが罠だったんだ。
僕は神の手という、マナの意思が仕掛けた罠に捕らえられてしまったんだ。
マナの意思っていうのは、この世界はマナに満たされているんだけど、じつは大地や大気中のマナは意思を持っているような動きをすることがあるんだ。それは生き物みたいな好き嫌いとか、悲しい、怒ったりなんかを考えるようなものじゃなくて平穏な何かを望んでいる、そんな漠然とした考え方をするみたい。
なぜそんなことにくわしいのかって? 僕はマナの意思に捕らえらてれたからね。
マナの意思につかまると、ほとんどの自由は奪われるんだけど、かわりに膨大なマナと屈強な身体や知力が与えられて、またマナの意思が保有する知識のほんの一部だけれど、つながることもできるようになる。
だからこの世界のことわりについて、僕は少しは知識があるんだ。
大きな戦いや天災がおこると、世界に満たされているマナ自体が大きく揺らぐことがあるんだけれど、そんなときにマナの意思は危機を感じて、この神の手を使って多くの魔物を捕らえ、魔物のもつ魔石を支配し自分の分身をかまえる。
そしてとらえた魔物たちを軍隊のように扱い、その揺らぎ原因を壊して、平坦なものにならそうとするんだ。
それが魔物のスタンピートとなるってわけ。
ただそのスタンピートで神の手によって捕らえられた者のほとんどは、その争いや、また生き残ったものも同士討ちによって死んでしまう。
だけれどほんのごく一部、僕みたいな生き残りがでることがあるんだ。そんな生き残りは次の戦いまで、マナの意思の奴隷として、使役されることになる。
そしてそんな状態のときに、僕はあの黒い魔女に出会ってしまったんだ。
ある夜のこと、僕の主であったマナの意志はエルクの街にマナのわずかなゆがみを見つけた。僕はその原因を探るべく、郊外の森を調べている時だった。
突然、闇夜からフードをかぶった黒のローブ姿に小さな杖を持つ魔女が姿を現した。
「近くに妙な力を感じるなぁと思ってきてみたら、クソ野郎の下僕じゃない」
その女は僕をみて、口角を少し上げたにやけた顔でそういったんだ。
ひと目でマナの意思に縛られている魔獣ということを見抜いたようだった。
そして僕はこの魔女がゆがみの原因だと悟ったんだ。
「私はね、昔あなたの主に何度も殺されかけたんだ。まあもうあの程度に殺される私じゃないけど……。ただ、目をつけられると少し面倒よね。あなたにはやっかいなことになる前に死んでもらっちゃおうかなぁ」
魔女はそういうと軽く杖を一振りする、僕は一瞬にして巨大な青い炎につつまれた。
逃げる間もなくその炎に焼かれ全身は大やけど、ほとんど意識を失いかけた。
でもしばらくすると、突然、炎が消失して周りは平穏を取り戻したように見えた。
「ええっ、この炎で焼かれてまだ生きているの。あなたすごいね」
エドナ火山のふもとで生まれた僕らは、パンサーデビルと呼ばれる種の中でもとりわけ熱に強かったことが、魔女の目を引いたようだ。
「あなたのその力、あんな奴にはもったいないわ。私がもらってあげる」
「私の可愛いナーシャの使い魔になってもらおうかな」
魔女はうれしそうにそういうと、僕に向かってさらにもう一回杖をふった。
身体の火傷が一瞬で治り、そして体のサイズが子猫ほどになってしまった。
またマナの意思が切断された感触があったかと思うと、目の前の魔女との新たな主従の印が、僕の魔石刻まれていた。
信じられなかった。強大なマナの意思の力を切断できることも、僕ほど強いマナをもつ魔物の魔石に、いとも簡単に主従の印を刻むことも……。
そしてその主従の印から流れてくる神をも超えるかというその力の前には、己の力などまるで意味を持たないということを思い知らされた。
僕は悪魔の持つ力を前に、恐ろしさに身を震わせていた。
そして黒いオーラに浮かぶ魔女の頭にかけたフードに見え隠れするその怪しげな笑みが見えたところで、僕は気を失った。
そして気がつくと、あの魔女がそばで寝ていた。
僕は、あわてて逃げ出そうとしたけれど、主従の印はそれを許しはしない。
やがて永遠とも感じられた長い時がすぎ、魔女が目を覚ました。
僕は恐怖のあまり失禁してしまった……。
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