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15 ☆ちょっとだけ接触あり
しおりを挟むとても大事に、愛おしそうに廻はラトヤの腕に抱かれて、居室を後にした。
ジェラストは、悔しさなのか虚しさなのか分からない気分で、背中を見送った。
廻だけが何故?
子守唄で寝る事も初めてだったはずだ。
髪を拭いてもらう事くらいで、あんなに幸せそうな笑顔になる子を、何故?
何故、木村は憎めるのか、ロウナーには見当もつかない。
誰一人、居室から動こうとはしなかった。
寝室のベッドに廻を下ろすと、その隣にラトヤが滑り込んだ。
無理強いする気はない。
同衾した事実が欲しいのだ。
伴侶と宣言した上での同衾じゃないと意味がない。
だから、廻がこのまま目を覚さなければ、くちづけをして、抱きしめながら寝るだけだった。
目を覚まして自分を見てほしい気持ちと、覚まさずに何も知らないまま、自分をゆっくりで良いから、愛してほしい気持ちとが揺れていた。
くちづけて目を覚ましたら、廻は傷つくだろう。
向こうの世界の下衆な奴らと変わらないと、ラトヤは苦々しく目頭に手を当てた。
「ん、ぅん・・、ぁ、れ?」
廻が目を覚ましてしまった。
ラトヤは、廻に問わなければいけない。
伴侶として、自分を愛してくれるか、それとも、ただ庇護下に入るかを。
「廻、ロウナーが子守唄を歌って、髪を拭かれてるうちに、寝てしまったんだよ。」
「え、あ!
すみません!」
起き上がろうとするのを制して、いま、起こっている事を端的に説明した。
木村の事、シュトーレス国の横暴とも言える引き渡し要請を。
聴き終わった後に、ラトヤの顔を見て微笑んだ。
「ラトヤ様は、義務で僕を伴侶にするのですか?」
「愛しているからだ!
誰よりもお前を愛しているからだ!
初めてこの腕に抱き上げた時、お前が流す涙を止めてやりたいと思った。
目を覚まして、謝るお前を護りたいと思った。
幸せにするのも、その笑顔を向ける相手も、愛されて花開くお前を見るのも!
全て、全部、私なら良いと!
廻じゃなきゃ、この世界の色さえ褪せてみえるんだ・・・!
廻を愛している。誰よりも、何よりも、この命より、全てで。」
廻の手を取りその指先にくちづける。
「・・・、はぃ。」
小さくて聞き取れないほどの声で、廻が答えた。
「も、うちいちど、聞かせてもらえないか?」
ラトヤが体を丸めて廻の胸に額を押し当てた。
その身体は、不安で震えていた。
「ラトヤ様、震えてます。」
「当たり前だ。
どんな、魔物より、お前の答えが怖い」
「ふふふ
ラトヤ様、可愛いです。
僕なんかが怖いなんて。
僕は愛される資格なんかないし、自信もない。
それでも、僕はラトヤ様を好きになってもいいですか?」
最後の言葉尻は涙声だった。
「当たり前だ!
廻しか、いらないんだ。
私の全てで、廻しかいらない。」
「僕は、生きていていい?
好きって言ってもいい?」
両手で顔を覆っても、その端から涙が流れてくる。
「廻だけを一生、この命をかけて愛するよ。」
涙で濡れた手をどけて、啄むようにくちづけた。
「私は、信用できない大人か?」
「だっ、て、かっこいいし、歳も教えてくれないし」
初めて、廻は声をあげて泣いた。
ラトヤは、自分のために泣く廻が可愛くて愛しくて、幸せだった。
えぐえぐと涙が止まらない。
好きな気持ちも、惚れやすいとか言われたくなかったし、相手にされる訳ないとか、いろいろ吐き出していた。
「廻、めぐる、めぐ、私はどんなめぐでも、見つけて必ず好きになるよ」
「う、そだぁ~」
「嘘は吐かない。
めぐだけが、好きだよ」
「うぅ~、ずるいー」
「私の歳は1828歳だ。」
ピャっと涙が止まった。
そんなに長生きしたら、置いていかれる、とまた泣き出した。
「愛してるよ
めぐは?」
「好きに、決まってる!
やだ、ラトヤ、キライ
うぅわーん」
あやしながら、困ったな、という幸せ一杯の笑顔で、廻を抱きしめてしっかりとくちづけた。
子供返りしたような廻に、大人のくちづけをする。
むずがる様な仕草で、ラトヤの胸を押した。
「ん、むぅ、んん」
「どうする?
このまま、私にただ抱きしめられて眠るかい?」
少し意地悪く聞いてみた。
-.-.-...-.-.-.-..-..-.-.-..-.-.-.-.-.-.
少し短いですが、廻、子供返りです。
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