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9. 宣戦布告
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仁を上から下まで舐めるようにして見つめる声の主を見て、龍馬は驚きを隠せず思わず走り寄った。
「武市はん!こがなとこで何しゆうがじゃ?!元気にしよったがかえ?!」
声の主は、龍馬が東京へ来ることを聞きつけ待っていた、武市半平太だった。
武市は、かつて『土佐勤王党』を結成し、龍馬と共に幕府に対抗していた人物だ。
「龍馬、皆も待っちょったぜよ」
武市は、日本が近代化に進んでいく中で、武士道を捨てきれない数多くの侍たちを率いていた。
その中には、倒幕派に対立した立場にあったはずの『新撰組』の面々らがいた。
新撰組局長を務めていた近藤勇、鬼の副長として恐れられた土方歳三、若くして天才的な剣術家である沖田総司、三番隊隊長を任されていた武闘派の斎藤一。
彼らもまた、新撰組解散後、急速に進む近代化に疑念を抱き、土佐勤王党に合流した武士道の精神を貫く漢たちであった。
「こりゃあ驚いた…新撰組までおるとは」
龍馬がそう言うと、一人の男が前に出てきた。
「坂本龍馬、久しぶりだな」
近藤勇が、穏やかな笑みを浮かべていた。
その隣には、土方歳三が立っており、冷徹な視線を龍馬に向けていた。
「ふんっ……まさか、お前と手を組むことになるとは思わなんだわ」
後ろには沖田総司と斎藤一が静かに佇んでいた。
沖田が少し前へ出て、龍馬に話し掛ける。
「龍馬さん、我々は仲間です。みな同じ志を持って政府に抗おうとしています。天皇のお姿を見られたでしょう?このままでは近代化に乗じて、マッカーサーに……いや、米国に日本ごと乗っ取られてしまいかねない」
その場にいた者たちがみな深く頷いた。
龍馬にとって彼らとの再会は心強いものであった。
みな武士道の精神を胸に、政府の急速な近代化に対抗する決意を固めていた。
斎藤がゆっくりと口を開く。
「若き天皇のみならず皇室全体を牛耳る勢いのマッカーサーは、土佐勤王党を反乱軍とみなしている。この意味が分かるな?」
マッカーサーの役割は日本の近代化を進め、米国以外の海外からの圧力に対抗できるだけの軍隊を作ることだった。
彼の成果によって、日本は米国と武器の独占販売権の契約を結ぶという手筈になっていたのだ。
武士たちの反発は、米国の計画にとって脅威であった。
龍馬は、もはや政府軍との対決は避けられないと悟った。
マッカーサーの手によって、彼らは国家反逆者として見なされ、追われる身となることを覚悟しなければならなかった。
「これでえいがじゃ。儂一人でも片をつけるつもりやったき。……西郷どんの仇も討たないかん。それより、仁。皆おまんが珍しいみたいじゃき、挨拶したり」
「お、お初にお目にかかります。伊作 仁と申します。師匠の龍馬さんとは--」
「りょ、龍馬が師匠じゃて?!」
武市は吹き出し、からかうようにして龍馬を指差し笑っている。
「おい、仁!弟子にとったつもりはないぜよ!」
その時、先程の町の騒ぎを聞きつけたマッカーサーが護衛を連れて走ってきた。
「コレがあなたの答えデスカ?その人数で政府軍と本気で戦えると思っているのデスカ?」
仁が威嚇するように、マッカーサーの前に立ちはだかる。
「貴様なんぞに、この国をくれてやるものか!武士の誇りはこの国の宝ぞ!それが分からん貴様が皇室を牛耳るなぞ言語道断!」
仁は方天戟を地面に突き刺すように叩き付け、鬼の形相で町中に叫んだ。
「みな、よう聞け!近代化もいいだろう!着物を脱ぎ、洋服を着るのも自由だ!しかし、日本人としての魂まで捨て置くのか?!武士の心まで奪う権利が誰にあると言う!誠にそれでよいのかぁ!!」
仁の声が響き渡ると同時に、マッカーサーが護衛から銃を奪い空に向かって発砲した。
「アナタたちの気持ちは分かりました。コチラも正々堂々とアナタ方に挑みマス。次は戦場で会いまショウ。今日のところはココまでデス」
そう言い残し、持っていた銃を護衛に押し付けマッカーサーは去っていった。
「武市はん!こがなとこで何しゆうがじゃ?!元気にしよったがかえ?!」
声の主は、龍馬が東京へ来ることを聞きつけ待っていた、武市半平太だった。
武市は、かつて『土佐勤王党』を結成し、龍馬と共に幕府に対抗していた人物だ。
「龍馬、皆も待っちょったぜよ」
武市は、日本が近代化に進んでいく中で、武士道を捨てきれない数多くの侍たちを率いていた。
その中には、倒幕派に対立した立場にあったはずの『新撰組』の面々らがいた。
新撰組局長を務めていた近藤勇、鬼の副長として恐れられた土方歳三、若くして天才的な剣術家である沖田総司、三番隊隊長を任されていた武闘派の斎藤一。
彼らもまた、新撰組解散後、急速に進む近代化に疑念を抱き、土佐勤王党に合流した武士道の精神を貫く漢たちであった。
「こりゃあ驚いた…新撰組までおるとは」
龍馬がそう言うと、一人の男が前に出てきた。
「坂本龍馬、久しぶりだな」
近藤勇が、穏やかな笑みを浮かべていた。
その隣には、土方歳三が立っており、冷徹な視線を龍馬に向けていた。
「ふんっ……まさか、お前と手を組むことになるとは思わなんだわ」
後ろには沖田総司と斎藤一が静かに佇んでいた。
沖田が少し前へ出て、龍馬に話し掛ける。
「龍馬さん、我々は仲間です。みな同じ志を持って政府に抗おうとしています。天皇のお姿を見られたでしょう?このままでは近代化に乗じて、マッカーサーに……いや、米国に日本ごと乗っ取られてしまいかねない」
その場にいた者たちがみな深く頷いた。
龍馬にとって彼らとの再会は心強いものであった。
みな武士道の精神を胸に、政府の急速な近代化に対抗する決意を固めていた。
斎藤がゆっくりと口を開く。
「若き天皇のみならず皇室全体を牛耳る勢いのマッカーサーは、土佐勤王党を反乱軍とみなしている。この意味が分かるな?」
マッカーサーの役割は日本の近代化を進め、米国以外の海外からの圧力に対抗できるだけの軍隊を作ることだった。
彼の成果によって、日本は米国と武器の独占販売権の契約を結ぶという手筈になっていたのだ。
武士たちの反発は、米国の計画にとって脅威であった。
龍馬は、もはや政府軍との対決は避けられないと悟った。
マッカーサーの手によって、彼らは国家反逆者として見なされ、追われる身となることを覚悟しなければならなかった。
「これでえいがじゃ。儂一人でも片をつけるつもりやったき。……西郷どんの仇も討たないかん。それより、仁。皆おまんが珍しいみたいじゃき、挨拶したり」
「お、お初にお目にかかります。伊作 仁と申します。師匠の龍馬さんとは--」
「りょ、龍馬が師匠じゃて?!」
武市は吹き出し、からかうようにして龍馬を指差し笑っている。
「おい、仁!弟子にとったつもりはないぜよ!」
その時、先程の町の騒ぎを聞きつけたマッカーサーが護衛を連れて走ってきた。
「コレがあなたの答えデスカ?その人数で政府軍と本気で戦えると思っているのデスカ?」
仁が威嚇するように、マッカーサーの前に立ちはだかる。
「貴様なんぞに、この国をくれてやるものか!武士の誇りはこの国の宝ぞ!それが分からん貴様が皇室を牛耳るなぞ言語道断!」
仁は方天戟を地面に突き刺すように叩き付け、鬼の形相で町中に叫んだ。
「みな、よう聞け!近代化もいいだろう!着物を脱ぎ、洋服を着るのも自由だ!しかし、日本人としての魂まで捨て置くのか?!武士の心まで奪う権利が誰にあると言う!誠にそれでよいのかぁ!!」
仁の声が響き渡ると同時に、マッカーサーが護衛から銃を奪い空に向かって発砲した。
「アナタたちの気持ちは分かりました。コチラも正々堂々とアナタ方に挑みマス。次は戦場で会いまショウ。今日のところはココまでデス」
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