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14. 最終決戦【完】
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俺に刺さっていた針に毒を重ね、俺を取り囲んでいた幻影達に無数の針を飛ばし返した。
俺の体から針が抜ける度、血が吹き出る。
「呪詛返しか……毒が……回っていく……」
「はぁはぁ……厭魅術を祓うのが本来の呪言師の役割なんでな。そもそも俺達は相性悪いんだよ!」
「……"解毒"」
「手足の回復より解毒を選んだってことは、その状態でもいいってことか」
雨暗は相変わらず手足のない状態でふわふわと浮かんでいる。
こちとら、血が出すぎて倒れそうってのによ。
あぁ、なるほど……
「"傷塞"」
針で空いた傷がみるみるうちに塞がっていく。
「……何故、吸血を選ばなかった」
「やっぱりそれ狙いか。お前の血を俺の体に取り込めば、お前は俺に成り代わって簡単に俺ごと乗っ取っれるって算段だろ」
「ふんっ……そう上手くはいかぬか。では、これでどうだ。好きなだけ食べてくるがよい!"魑魅魍魎"」
雨暗が大きく口を開けると、そこから無数の怨霊や妖怪が次々と出てきた。
今までに取り込んだ浄化されていない魂たちの、悲鳴にも似た声が響き渡る。
このまま俺を飲み込むつもりだろうが……
「言ったろ、呪言師は厭魅術を祓うんだってな。"読経浄化"」
俺は両手を合わせ拝みながら、魂たちの成仏を願った。
すると、初めこそ抵抗していた魂たちは次々に光に包まれた。
隙を見て、俺は叫んだ。
「"成仏降霊"」
天に昇りかけていた魂たちは、一斉に雨暗に向かって突撃した。
「小賢しい……!!連続で呪言を唱えるだと……?!やはり貴様の力は、目障りだな ……取り込めぬなら、消してくれるわ……っ!!」
片膝を地面につきながら喚く雨暗。
「そんな力、残ってんのか?これで終いだ、公卿雨暗!」
俺はまた背後まで一瞬で移動し、手のひらを雨暗に向ける。
「しまった──っ!この私が遅れを取るなぞ……!」
「"弾け散れ"」
「ち、畜生があああああぁぁー!」
恒星爆発のような激しい衝撃。
世界を破壊するかのようなその強力な呪言は、色即是空の光景を作り出した。
辺りに燐光が舞い散る。
袈裟の男──
公卿雨暗は消え去った。
アミダ、ヒョウ、そして新田……
俺は彼らの亡骸を一箇所に集めて、残る力全て振り絞って叫ぶ。
今なら、出来そうな気がしたから。
「……御霊よ、"蘇れ"!!!」
ドクンっと大きく心臓の鼓動がこだまする。
3人の身体は浮き上がり、身体は光に包まれる。
優しく包み照らす光が彼らから消え後……
3人はゆっくりと目を開けた。
「あ、あれ? 私は殺されたはずじゃ……」
「な、なんか生き返ってますよ?!」
アミダとヒョウは何が何だか分かっていないようだ。
「……言慈、なのか?」
新田は俺の顔を覗き込む。
表情で察したのか、その怪訝な顔は徐々に笑顔へと変わっていく。
「やったんだな? お前が……奴を倒したんだな!」
「お陰様でな。ありがとな、護」
「うおおおー! それだよ、それ!!すげえよ言慈!お前はいつだって俺のヒーローだな」
新田と俺はハイタッチを交わす。
長きに渡る因縁は、遂に決着したのだ。
────
──
時は少し流れ、新田と俺は自宅で共に祝杯をあげていた。
「身体平気か? 頭痛とかもないか?」
「あぁ、すっかり元通りだよ」
「しっかし……力を取り込んだ袈裟の男を葬って、俺たちまで生き返らせるんだから、相変わらずお前の呪言はすげぇよ……天界の2人はなんて言ってた?」
「……確かに呪言師は危険に変わりない。けど多くの命を救われた。自分達も含めて……だからありがとうってさ」
「そっか……けど、アミダとヒョウ、俺たちのこと相打ちにして消そうとしてたらしいじゃん」
「天界に蔓延ってた雨暗の残滓のせいで、護の呪言が厭魅術に見えてたんだってよ。天界人も完璧じゃないってこったな」
「まぁ体張って俺らのこと守ってくれたしチャラにしてやるか」
「あと、雨暗みたいなのを生み出さない為にも、今後は呪言師の見極めについて改めるってさ。って言っても、もう呪言師は本当に俺達2人だけだしなぁ……」
「じゃあ作ればいいじゃん、子孫を」
「はあ? 野郎2人でどうやってだよ……お前、まさか?!」
「ばーか。変な想像すんなよ。別に血は片方でいいんだよ。俺達が結婚して、そんで健全な呪言の力を次世代に継いでいけばいいだろ」
「はぁ、また気が遠くなる話だな……健全な呪言の力か……」
「まぁ、善は急げだ。……という訳で、また会社で飲み会開催するから。次は相手持ちはなしで!てなことで、参加しろよ、言慈! 今度は途中で"逃げるな"よ!」
「はぁ?!それ、ただの合コンじゃねぇかよ!……あぁもう。飲み会って、また結局そこに行き着くのかよ! あんな面倒な場所にまた俺を放り込むんじゃねえ! てかお前今、呪言使ったろ!待て、護!人前で呪言使って会場ぶっ壊してやろうか?!」
「別に合コンくらいいいじゃねぇか!子孫繁栄させようぜぇ!」
「ふっざけんな! 新田護!!やっぱてめえは嫌いだぁぁーっ!」
呪言師としての在り方……
そして健全な呪言の力……
まずは、俺たちが正しくあることだ。
世に蔓延る厭魅術を祓うことが、本来の呪言師の役割なのだから。
けど、前のような抑鬱的な日々と比べると、少しだけ前を向いてる気がする。
一歩一歩進んでやろう。
唯一無二の親友と共に。
---終---
俺の体から針が抜ける度、血が吹き出る。
「呪詛返しか……毒が……回っていく……」
「はぁはぁ……厭魅術を祓うのが本来の呪言師の役割なんでな。そもそも俺達は相性悪いんだよ!」
「……"解毒"」
「手足の回復より解毒を選んだってことは、その状態でもいいってことか」
雨暗は相変わらず手足のない状態でふわふわと浮かんでいる。
こちとら、血が出すぎて倒れそうってのによ。
あぁ、なるほど……
「"傷塞"」
針で空いた傷がみるみるうちに塞がっていく。
「……何故、吸血を選ばなかった」
「やっぱりそれ狙いか。お前の血を俺の体に取り込めば、お前は俺に成り代わって簡単に俺ごと乗っ取っれるって算段だろ」
「ふんっ……そう上手くはいかぬか。では、これでどうだ。好きなだけ食べてくるがよい!"魑魅魍魎"」
雨暗が大きく口を開けると、そこから無数の怨霊や妖怪が次々と出てきた。
今までに取り込んだ浄化されていない魂たちの、悲鳴にも似た声が響き渡る。
このまま俺を飲み込むつもりだろうが……
「言ったろ、呪言師は厭魅術を祓うんだってな。"読経浄化"」
俺は両手を合わせ拝みながら、魂たちの成仏を願った。
すると、初めこそ抵抗していた魂たちは次々に光に包まれた。
隙を見て、俺は叫んだ。
「"成仏降霊"」
天に昇りかけていた魂たちは、一斉に雨暗に向かって突撃した。
「小賢しい……!!連続で呪言を唱えるだと……?!やはり貴様の力は、目障りだな ……取り込めぬなら、消してくれるわ……っ!!」
片膝を地面につきながら喚く雨暗。
「そんな力、残ってんのか?これで終いだ、公卿雨暗!」
俺はまた背後まで一瞬で移動し、手のひらを雨暗に向ける。
「しまった──っ!この私が遅れを取るなぞ……!」
「"弾け散れ"」
「ち、畜生があああああぁぁー!」
恒星爆発のような激しい衝撃。
世界を破壊するかのようなその強力な呪言は、色即是空の光景を作り出した。
辺りに燐光が舞い散る。
袈裟の男──
公卿雨暗は消え去った。
アミダ、ヒョウ、そして新田……
俺は彼らの亡骸を一箇所に集めて、残る力全て振り絞って叫ぶ。
今なら、出来そうな気がしたから。
「……御霊よ、"蘇れ"!!!」
ドクンっと大きく心臓の鼓動がこだまする。
3人の身体は浮き上がり、身体は光に包まれる。
優しく包み照らす光が彼らから消え後……
3人はゆっくりと目を開けた。
「あ、あれ? 私は殺されたはずじゃ……」
「な、なんか生き返ってますよ?!」
アミダとヒョウは何が何だか分かっていないようだ。
「……言慈、なのか?」
新田は俺の顔を覗き込む。
表情で察したのか、その怪訝な顔は徐々に笑顔へと変わっていく。
「やったんだな? お前が……奴を倒したんだな!」
「お陰様でな。ありがとな、護」
「うおおおー! それだよ、それ!!すげえよ言慈!お前はいつだって俺のヒーローだな」
新田と俺はハイタッチを交わす。
長きに渡る因縁は、遂に決着したのだ。
────
──
時は少し流れ、新田と俺は自宅で共に祝杯をあげていた。
「身体平気か? 頭痛とかもないか?」
「あぁ、すっかり元通りだよ」
「しっかし……力を取り込んだ袈裟の男を葬って、俺たちまで生き返らせるんだから、相変わらずお前の呪言はすげぇよ……天界の2人はなんて言ってた?」
「……確かに呪言師は危険に変わりない。けど多くの命を救われた。自分達も含めて……だからありがとうってさ」
「そっか……けど、アミダとヒョウ、俺たちのこと相打ちにして消そうとしてたらしいじゃん」
「天界に蔓延ってた雨暗の残滓のせいで、護の呪言が厭魅術に見えてたんだってよ。天界人も完璧じゃないってこったな」
「まぁ体張って俺らのこと守ってくれたしチャラにしてやるか」
「あと、雨暗みたいなのを生み出さない為にも、今後は呪言師の見極めについて改めるってさ。って言っても、もう呪言師は本当に俺達2人だけだしなぁ……」
「じゃあ作ればいいじゃん、子孫を」
「はあ? 野郎2人でどうやってだよ……お前、まさか?!」
「ばーか。変な想像すんなよ。別に血は片方でいいんだよ。俺達が結婚して、そんで健全な呪言の力を次世代に継いでいけばいいだろ」
「はぁ、また気が遠くなる話だな……健全な呪言の力か……」
「まぁ、善は急げだ。……という訳で、また会社で飲み会開催するから。次は相手持ちはなしで!てなことで、参加しろよ、言慈! 今度は途中で"逃げるな"よ!」
「はぁ?!それ、ただの合コンじゃねぇかよ!……あぁもう。飲み会って、また結局そこに行き着くのかよ! あんな面倒な場所にまた俺を放り込むんじゃねえ! てかお前今、呪言使ったろ!待て、護!人前で呪言使って会場ぶっ壊してやろうか?!」
「別に合コンくらいいいじゃねぇか!子孫繁栄させようぜぇ!」
「ふっざけんな! 新田護!!やっぱてめえは嫌いだぁぁーっ!」
呪言師としての在り方……
そして健全な呪言の力……
まずは、俺たちが正しくあることだ。
世に蔓延る厭魅術を祓うことが、本来の呪言師の役割なのだから。
けど、前のような抑鬱的な日々と比べると、少しだけ前を向いてる気がする。
一歩一歩進んでやろう。
唯一無二の親友と共に。
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M-赤井翼様
感想ありがとうございます!
もう少し天界人を深掘りして描写する予定だったのですが、途中で力尽きてとりあえずゴールまで筆を走らせた次第です😅
次回投稿予定作品は、「弥助」が関係しているものなのでお時間ある時にでも読んでくださると嬉しいです📕✨
赤井先生、痛風無理なさらずですー😣
ぱにゃにゃんだーฅ^•ω•^ฅ