【怒りのその先】~完璧な優男に愛されたけどクズ男の残像が消えない!病室で目を覚ますとアイツがアレで私がこうなって…もう訳分からん!~【完結】

みけとが夜々

文字の大きさ
2 / 29

2. 愛せない完璧な人

しおりを挟む
 すっごい優しいんだよな。
 取引先の東堂さん。ちなみに社長さん。
 そんでもってこの人も既婚者。
 私に好意を持ってくれてるようで、何かと優しい。
 がっちりしててスーツ越しにでも筋肉質だなって分かる。
 整った顔をしてて爽やかだけど、髭とか生やしてもワイルドで結構さまになると思う。
 普通にかっこいい。
 今の私の目の保養。

 お茶出しとかでほんとたまーにしか顔を合わさないけど、会った時なんかはいつも声をかけてくれて先日遂に連絡先を聞かれた。
 断る理由もないのでさらっと連絡先を交換。
 あ、でも既婚者って時点でそれが断る理由になるのかって後から気付いたけど時すでに遅し。

 誰かさんと違ってすごくスマートにデートのお誘いをしてくれて、街中を歩いてる時も体をきちんとこっちに向けて私の話を目を見て聞いてくれる。
 誰かさんは歩いてる時そんな風に振り返ってくれないよ?
 食事をしても、私が財布を出す頃にはこっそりお会計を済ませてくれてたり。
 誰かさんと違ってほんとスマート。
 確実に女慣れしてるし、他にキープ的なのもいるとは思うんだけれど別に恋愛的に好きってわけでもないし、どうでもよかった。

 ただ、一緒にいて嫌な気持ちにならないし、心がすさまない。
 むしろ嘘でも大事にされてる気がして、自己肯定感を上げてくれる。
 同じ不倫でも、東堂さんとだったらなんだかいい女になれそうだななんて特に望んでもない事を想像した。

 何度目かのデートっぽい食事の後、まぁそういう流れになるよね的な流れで、それでいてあくまでも自然にホテルへと誘導された。
 ラブホテルみたいな露骨なところじゃなくて、普段から御用達ですか?みたいなスイートルーム。
 拒まずすんなりついてったからね。
 まぁそうなってもいいかなって思っちゃったからね。
 誘った東堂さんだけが悪いんじゃない。
 私も同罪だと思う。

 シャワーを浴びて、ベッドに行くまでにももう前戯が始まってるかのように雰囲気作りが上手い。

「大丈夫ですか?」

 とか

「キレイですね」

 とか前戯中に囁かれる言葉のいちいちが優しすぎて、あー誰かさんもこんなこと言えんもんかねと萎えてしまう。
 結局濡れなくて「今日はやめておきましょうか」と言わせてしまった。
 その上、腕枕までしてくれて頭も撫でてくれた。
 すごく申し訳なかった。

 東堂さんにとって、
 こんな女つまらないだろうな、
 もう次はないだろうって考えてたら気付いたら朝になってた。
 あ、寝れたんだって思った。

 その後、しばらく連絡が途絶えて、
『あ、やっぱそうですよね』って特に気にしてなかったものの、いざ職場で顔を合せちゃったら絶対気まずいよなぁとは思ってた。

 でもよっぽど時間を持て余してたのか、キープの女が誰か切れたのか、理由はわからないけども再度デートのお誘いをされた。
 高そうなディナーに見合う服を選ぶのは少々面倒くさい。

 目の前には豪華な前菜。
 なんの草か分からないし、前菜のくせに豪華。

「連絡なかなか出来なくてすみません。ちょっと仕事で立て込んでて。いつ会えるかなって楽しみにしてたんです」

 サラっとこんなこと言えちゃう東堂さん、そりゃモテますわ。
 知らないけど。

「東堂さんって絶対モテますよね。優しいし、イケメンだし、優しいし」

「イケメンも優しいも嬉しいけど、優しいが二回入っちゃってます」

 笑ってる顔もイケメンだよ。
 あなたに抱かれて濡れなかった私なんて、女として欠陥品だよ。
 ホテルまでついてってセックス出来ない女に存在価値なんてあるんだろうか。
 私が男なら思うもん、ここまできて?って。
 私なら『めんどくせー女だな』とか心の中で舌打ちしながら唾でも付けて無理矢理入れてるかもな。
 出し入れしてる間に濡れるかもだし。

「どうかされました?」

 リッチなディナー中にお下品な事考えてましたとも言えずとりあえず苦笑い。

「ちゃんと優しく出来てるか分からないけど、誰にでも優しいわけじゃないですよ」

「ご自分で気付かれてないだけだと思いますよ。絶対おモテになるでしょうし、遊ぶ子には困らないだろうなぁって。……あ、すみません、いい意味でです」

「うーん、参ったな。僕、そんなに器用じゃないですよ。あなたがいいんです」

 言う相手、間違えてない?
 誘う相手、私で合ってた?
 でも、容赦ない嫌な言葉を耳にするより、嘘でもこんなド直球なセリフの方が何倍も気持ちいいな。
 口説き文句としてはパーフェクトじゃないかな?
 あなたがいいんです、なんてもうこの先、生きてて言われることなんてないと思う。

「いやぁ、私なんて、そんな」

 謙遜というか、ほんとに不釣り合いすぎて、身分不相応すぎて、住む世界が違いすぎて。
 そんな眩しいとこに入れる人間じゃないんだよ。
 私の中にはどす黒い感情とかいっぱいあるし。
 傷付いたらその相手呪いたくなるし。
 東堂さんが気まずそうに

「こんなこと言っといてやっぱり不純ですかね。上に、部屋取ってあって」

 とか言うもんだから、そりゃ不純でしょう。
 そもそもあなた既婚者ですし。
 お気持ちはとっても嬉しいし、あなたの事はキラキラして見えるけど、この行為自体は不純そのものだと思います。
 って心の中で返事しながら、のこのことスイートルームに招かれた私は一体なんなんだろうか。

 この間の続きとでもいうように東堂さんは体を求めてきた。
 部屋まで来て求められない方がおかしいか。

 結論から言うと、東堂さんとのセックスは、また濡れなくて不発に終わった。
 申し訳ない上に、つくづく女として終わってんなぁと思う。


 いや、違うんです、
 人として好きじゃなくて、
 私を見てくれなくて、
 優しくもなくて、
 でもセックス中だけはたまに頭を撫でてくれる人で、
 私の体、他の男性に上書きされたくないんです
 東堂さんとセックスしたら、
 きっと身も心も満たされそうだけど、
 やっと彼とセックス出来て、
 もう彼以外のモノを挿れたくないんです



 なんて、言えないんだけど、私の心はそう叫んでたみたいで、自分のことなのに『へぇ、そんな風に思ってたんだ』って、つくづく私は馬鹿だよなぁって思った。

「もちろんあなたとしたい気持ちはあります。でもあなたの中に誰かがいて、僕を受け入れられないんだろうなと感じてます。今後、もうそういった行為に期待したりしないので、あなたの時間を僕に少し下さい」

 途中までは理解出来たのだけど、最後の方ちょっと何言ってるのか分からなかった。
 時間を下さいってなに?
 セックスも出来ない女を、なんで?

「あの……どういう意味でしょう?」

「時間をくれだなんて失礼な言い方ですよね、すみません、えっと……。あなたの望むことは出来る限り叶えます。その代わり、というか、一緒にいてもらえませんか?という意味です。お時間頂く分、相応のものをお与えしたいという意味です」

「私に、そこまでの価値ありますか?どうして東堂さんのような方に私なんかがそこまで言っていただけるのか、理解に苦しむというか……」

「ただ、好きなんです。どうしようもなく。惚れてるんです。既婚の身で中途半端な事を言っているのは分かっています。……そういう気持ちってありませんか。好きで好きで、どんな形でもそばにいたいって」

 私なんかにはすごく勿体ないお言葉を頂戴してる気がする。
 でも、分かるよ。
 それって私が真島さんを思う気持ちと似てるもんな。
 東堂さんも『なんでこんな奴好きなんだろう』って、思ってるのかな。

「東堂さんは……寂しいが、怒りに変わることってありますか?」

「え?いや、寂しいは、寂しい……ですね。あるんですか?」

 この人は純粋だ。
 イケメンで、優しくて、純粋ってハズレのない福袋みたいな人だな。
 あ、でもその福袋に奥さん入ってるからそれは最大のハズレか。

「あります。私、そういう人間なんです。寂しいが怒りに変わるような。どうしようもなく好きになった相手だからこそ、寂しいとそいつを呪っちゃいたいくらい心が怒っちゃうんですよね。……あ、だから多分もう、生き霊とか飛んでるんじゃないかなぁとかたまに思ったり、ははは……」

 今まで東堂さんの前で取り繕っていた自分を、あまりにもさらけ出してしまったんじゃないかと途中で怖くなって生き霊なんて笑いながら冗談めかしてみたけど、笑いながらこんな事言ってる方がよっぽど怖いよな。

「そう…ですか。私は、あなたを否定しません。呪えばいいじゃないですか。生き霊だって、どんどん飛ばしましょう。生き霊って一番厄介だって聞きますし」

「あ、いや、なんていうか、例えばの話ですよ」

「僕の寂しいは、寂しい、ですけど、好きな人の寂しいは、辛い、です。僕の辛いは……復讐です」

「復讐……ですか?なんで、辛いが復讐になるんですか?」

「好きな人の寂しいを救えたら、僕は辛くなくなります。どんな方法を使ってでも好きな人を寂しくさせてたやつをどん底に突き落とすんです。その復讐は、結局は、自分の辛いを救いたいだけかもしれません」

 あれ?
 東堂さん、意外と曲がってる?
 さっき純粋な人だとか思ったけど。
 なんか私より怖いこと言ってない?
 分からなくもない自分が一番怖いとも思うけど。

「なんか、初めて東堂さんの人間らしいところ見れた気がします」

「いやぁ、僕は手に入れたいものはそうやって手に入れてきたところもありますよ。今の社長の座もそうです。僕がのし上がった時、誰かは崖から落ちてるんです。……今、誰かを思って寂しいですか?」

「はい……寂しいです」

「怒ってますか?」

「呪い殺したいくらいには怒ってますね」

「そうですか。分かりました」

 しばらく抱き締められて、頭を撫でられてた。
 分かりました、のその声がすごく怖かった。
 ただの励ましではないような、東堂さんも一緒に怒ってくれてるような、そんな声。
 だけど、窓硝子に映った東堂さんは笑ってた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...