VRMMOを引退してソロゲーでスローライフ ~仲良くなった別ゲーのNPCが押しかけてくる~

オクトパスボールマン

文字の大きさ
上 下
42 / 44

第42話 女商人とデート

しおりを挟む
 最低限の自衛の準備をしようと買い物に出かけようとするとフー姉がついてきた。

「このままデートにしましょう」

「いやそれは悪いよ。用事のついでみたいになるでしょ」

「いいのよ。デートは1回しかできないわけじゃないわ。今度は素敵なところに連れてってね」

「……うん、わかった」

 交際経験がほぼないのでこういうフォローをしてくれるのは本当に助かる。俺も甘えてばかりではいられないので良いところがないか探しておかないとなぁ。ゲームだし何もないってことはないだろう。

 まず始めに雑貨屋に向かう。ここでは回復アイテムなどの消耗品を購入するために来た。

「うーん、切り傷程度しか治らない傷薬はこれからのことを考えると微妙ね。もっといいのはないのかしら」

「ウチにはこれ以上のは置いてないね。薬を専門的に扱ってる人がこの村にいないから行商人から仕入れてるけどこれよりいいのは採算合わなくなるからね」

「そうなのね。精霊の件は聞いているわよね?今後やってくるハンター協会の方に必要となってくるのではないかしら?」

「ハンター協会は専属の薬師いるだろうからウチは当てにされないだろうね。あ、食品は買いに来るだろうからコウタ頼んだよ!」

「はい、村長にもそこは頼まれました」

 現状の生産量で問題ないので引き続きよろしく頼むと言われている。また、今後の状況次第で人口が増えるのであれば生産量を増やすように頼むかもしれないとも言われた。ただそれに関しては今すぐどうこうではないこと、無理なら行商人からの仕入れを増やすから気負わなくてもいいとも言われている。

 それから効果としては最低限だが無いよりはマシということで傷薬や軽めの状態異常を治す薬をいくつか購入し雑貨屋をあとにした。次に向かったのは鍛冶屋である。

「武器になるのはナイフ、弓、斧、ハンマー、あと一応農具と包丁もかしら」

「武器として使うならナイフ、弓だな。ほかは武器としての使い方を想定していないから壊れやすいぞ」

 そう答えるのはこの鍛冶屋の主人であるゴードンさん。彼は金髪でもじゃもじゃした髭が特徴の筋骨隆々な男性である。

「防具はないのかしら」

「ないな。今まで必要なかったしな。武器も狩りに使うくらいだからナイフと弓しか置いてない」

「今後は武器を作ってく予定はあるかしら」

「あー、精霊の件だな。状況次第だな。ハンター協会が鍛冶師を連れてくるなら俺はするつもりはない」

「えーー!作ろうぜ、おやじ!」

 ゴードンさんの考えに反対の声をあげたのはゴードンさんの娘兼弟子のカレンさん。彼女は金髪に吊り目の女性である。

「俺は機械を作るほうが好きなんだよ」

「かっこいい武器の方がいいだろ!」

 なにやら親子で言い合いを始めてしまった。

「とりあえずナイフ2本でいいか。ペリカも得意なのは短剣だったし」

「そうね。本当は直剣とかあればよかったのだけど」

「まぁ前の世界のように戦えるわけじゃないから今は良いんじゃないかな」

「そこが少し不安なのよね」

 そこはゲームが違うのでしょうがない。弓はいままでゲームで扱えたためしがないので選択肢にはなく、武器はナイフとなった。

「あら、薬を作成できる機械もあるのね」

「おう調合台だな。150,000Gだぞ」

 調合台ね。俺もそのうち欲しいなぁとは思っていた。すぐに欲しいわけじゃないから後回しにしてたけど。フー姉は調合台が気になっているようだね。元々FWOではポーションなどの薬も扱っていた商会の商会長だったわけだし興味があるのだろうか。

「フー姉、調合に興味あるの?」

「ええ、そうね。元々私のところの商会のはじまりって薬屋でしたからね」

 それは初耳だった。薬屋から徐々に日用品とかに手広くなってあの規模の商会になったのか。

「購入しようか。元々俺も興味あったし、資金も余裕はあるから」

 調合台を買ってもこのあとの中級魔法はまだ買えるだけの資金はある。

「調合台を置くスペースってあったかしら」

「あー……このあと増築の依頼もしておこう」

 部屋のことを忘れてた。1室くらいならまだ何とかなる。

 それから調合台は増築後にまた購入しにくることにして鍛冶屋をあとにした。そして大工屋に増築のことを依頼し、広場に向かう。

「おうコウタ。今日は何の用だ?」

「リック、今日は中級魔法を買おうと思ってね」

「中級魔法なら前に伝えた通り取得者登録に50,000G、各種の魔法書150,000Gだよ」

「コウちゃんは何の魔法にするのかしら」

「うーん、水か土かな?火だと森で火事になると困るし、普段の農作業で初級がそれなりのレベルだからね」

 両方は出費が痛いな。それに中級魔法がどんな感じか知らないからまず一つ試してから他の属性を考えてもいいかなって思うし。

「リックさん。中級魔法というのはどういったものか教えてくださるかしら」

「ああ、いいよ。中級魔法は武器などの形を模して動かすことができるようになる。そして動かし方も速度を早くしたり回転させたりとできることが増える」

 なるほど。初級はただ水や土を出して移動させることができる。レベルが上がってもそれの規模が大きくなるだけで勢いよく噴出させたり特定の形に変えることはできなかった。中級になるとそういったことができるということか。

「魔法で出したものが消えないのは中級も一緒?」

「ああ、一緒だ。中級を覚えると初級のレベル次第では、初級だけを覚えてる時と比べて規模がさらにでかくなるから扱いには気を付けてくれよ」

 ああ、水や土を出せる規模もさらに増えるのか。その辺に適当に土を大量に出すだけですごい迷惑になるよね。だからこそ取得者登録させたり値段が高くしているんだろうね。

「だったら水のほうがいいのかな。水なら地面に染み込むだけだし扱いやすそう」

「でもコウちゃん、水だと咄嗟の守りとして不安があるわよ。土だったら壁を作ったりできるから身を守りやすそうじゃないかしら」

 たしかに水だと壁を作ってもすり抜けてくるよね。森で戦うなら土の方が良いのかな。本格的に戦うわけではなく自衛がしたいだけだしそれを考えると土の方が自衛に向いているのか。

「それじゃあ中級土魔法を買うよ」

「取得者登録はコウタでいいのか?」

「うん、それでよろしく」

「それじゃあこの金属板に手を置いてくれ」

 俺は差し出された黒い金属板に手を置く。ちょっとひんやりとしている。リックはそれを確認すると手元でなにかの機械を操作している。

「それは何をしているか聞いていい?」

「ああ、これは魔法管理局にコウタの情報を送っているんだ。……よし登録完了。これでコウタは中級魔法を使えるよ」

「ありがとう」
 
 それから他の商品を見ていくつか購入した。

「準備はこれで終わりだね。あそこのベンチで少し休まない?」

「ええ、いいわよ」

 俺たちは広場にあるベンチに座って休むことにした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役貴族に転生した俺が鬱展開なシナリオをぶっ壊したら、ヒロインたちの様子がおかしいです

木嶋隆太
ファンタジー
事故で命を落とした俺は、異世界の女神様に転生を提案される。選んだ転生先は、俺がやりこんでいたゲームの世界……と思っていたのだが、神様の手違いで、同会社の別ゲー世界に転生させられてしまった! そのゲームは登場人物たちが可哀想なくらいに死にまくるゲームだった。イベボス? 負けイベ? 知るかそんなもん。原作ストーリーを破壊していく。あれ? 助けたヒロインたちの目のハイライトが……? ※毎日07:01投稿予定!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...