上 下
4 / 44

第4話 とある王女の想いと計画

しおりを挟む
とあるVRMMO内の出来事 

 サザランド王国の王城の一室で一人の女性が物思いに耽っていた。
 絹のようにサラサラとした色鮮やかな金色の髪は背中まで伸びており、優しそうな印象受けるたれ目に王族の証である碧い瞳を持つその女性は、この国の王女リリアーヌ・サザランドである。

リリアーヌ視点

 私はある日からこの世界を去った一人の男性を思っていた。彼との出会いは私の誘拐事件がきっかけだった。

 私は城下町へお忍びで出歩き、民の姿を見て実際に話すことを趣味としていた。ほとんどの人には王女であることはばれてはいたけど気づかないふりをしてもらっていた。

 そんなある日、その趣味を利用してとある貴族の差し金により誘拐されてしまった。私は周りが優しい人が多かったため平和ボケしていた。お忍びでも護衛の一人や二人つけるべきだった。そんな後悔をしながらこれから自分はどうなってしまうのかと恐怖でいっぱいだった。

 そんな私を助けてくださったのが「コウタ様」だった。

 私はコウタ様の活躍のおかげで無事に元の生活に戻ることができた。最初はただひたすらに感謝の気持ちでいっぱいだった。

 今回の事件をきっかけにお忍びの際は護衛をつけることになった。その護衛を都合のいい日だけはコウタ様にお願いするようにした。

 それからコウタ様に護衛されながら好きなことや夢など多くのことを語り合い、たまに景色のきれいなところに連れて行ってもらった。そんな楽しい日々も少しずつ違和感を感じるようになった。私と話している間は笑顔なのに別れ際やふとした時に暗い顔が見えるようになった。

 はじめは私の護衛がつまらないのかと思っていたため、少しショックを受けた。けれども私のわがままでこのままコウタ様に苦痛を味合わせたくないと思い、思い切って聞いてみた。

「コウタ様、勘違いかもしれませんが何かお悩みでもあるのでしょうか」

「…んー。心配かけてごめん。最近忙しくて疲れてたんだよね」

「……」

「いや。今のウソ。本当は悩んでるんだ。聞いてくれるかな」

 聞き始めは言いにくそうにしていたため、ああ…やっぱり…と思いました。そんな私の顔を見たからかコウタ様は慌てた顔をしながら暗い顔をしていた本当の理由を話してくれました。

 本当の理由は他の異界人からの嫌がらせでした。知り合いでもない異界人から持っている情報を話せだの持っている貴重なアイテムをよこせだの、中にはPKをおこなってくるものが頻繁に来るようでした。
 異界人はこの世界で本当の死が無いというのは周知の事実ですが失うものがゼロではありません。それに知らない人でも悪意に晒されるというのはとてもつらいことです。

 私はどうにかコウタ様の力になれないかと思い、街での兵士の巡回を増やしコウタ様が困っていたらすぐに助けに行くようにしました。
 他にできることがなかなか思いつかず、護衛しているときだけでも心癒されるような時間になってほしいとおいしい食事のできる店やきれいな景色のところにいくぐらい。

 そんなことぐらいしかできない私は本当に無力でした。兵士の巡回も町中が限界、異界人であるコウタ様は街に居続けるわけではない。街の外に出ればそれだけで守れなくなってしまう。

 そして、とうとうコウタ様からお別れを告げられてしまいました。今まで巡ってきたお店や景色の思い出話、街中での兵士のフォローの感謝など聞かせていただきました。私から多くのものを受け取ったありがとうって。しかし、私こそコウタ様から返しきれないものを受け取っています。

 ああ、このままコウタ様に一生会えなくなるのかと絶望しながら話を聞いているとき、一つ気になる事を聞きました。なんと現地民を違う世界に連れていく方法があるというのです。
 しかし、この世界を管理している上位存在から許可を得られず連れていくことができないようです。

 何か手掛かりはないかと違う世界に行く方法についてコウタ様が知っている範囲の話を全て聞かせていただき、コウタ様とお別れになりました。

「コウタ様、待っていてください。絶対に会いに行きます」

「……ありがとう。待ってるね」


・・
・・・

 さて、いま私は2つの計画を立てております。
 1つ目はコウタ様のいる世界へ移動する方法を見つける。現状分かっていることはコウタ様がやり取りを行った上位存在とこの世界を管理している存在は一致していないということ。
 上位存在はこの世界の大まかな仕組みや流れをこの世界を管理しているものに指示しているだけであり、管理しているものに直接お願いすればコウタ様のもとへ行けるのではないかと予測しています。

 2つ目はコウタ様をこの世界から去るきっかけを作った他の異界人への復讐。こちらに関しては、異界人への徹底的な嫌がらせを行います。まずは、国内にいる異界人を排除します。
 そして、私の国の主要産業であるミスリルの供給を異界人限定で制限します。もっといい案があるかもしれませんので今後も検討していきます。

 ただし、あくまで最優先事項はコウタ様のもとへ行くこと。異界人へ復讐することで世界の管理者の機嫌を損ね、コウタ様のもとへ行けなくなるのは困ります。

 そのため、まずは世界の管理者を探し接触をはかり、コウタ様のもとへの行けるか聞きだします。そして、異界人との関係性を探り、復讐を実行するか決めます。

 コウタへの想いと今後の計画について再確認したリリアーヌは、世界の管理者について文献を調査しに行った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

僕は一軍アルファの性奴隷

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

過去に仲間を失った男は支える冒険者を目指し、超一級サポーターとなる

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:118

病弱な私はVRMMOの世界で生きていく。

SF / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:529

【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

SF / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:1,963

“元”勇者がまた勇者として召喚されたけど…

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:954

ラムネ瓶の底に沈む

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:45

砂漠にて

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...