激甚のタナトス ~世界でおまえが生きる意味について~【虐殺編】

戸影絵麻

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第4部 暴虐のカオス

#12 へヴィ・ローテーション②

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 杏里の体が、少しずつ沈んでいく。

 その度に、ずぶずぶという鈍い音がして、血が滴る。

 杏里はだんだん首をのけぞらせ、硬直していくようだ。
 
 ずぶっ。
 
 ずぶっ。
 
 やがて、杏里の顔が完全に上を向いた。

 口をいっぱいに開いている。

 その口から、尖った棒の先が現れた。

 徐々に伸びていく。
 
 杏里の舌が、だらりと垂れた。

 眼球がくるりと裏返り、白目を剝いた、

 棒は今や、20センチ近く、杏里の喉から突き出していた。

 血にまみれ、肉片をからみつかせている。

 とうとう体を貫いたのだ。

「素敵・・・」
 
うっとりと目を潤ませ、零がいった。
裸の体にからみついている少年と少女を強く抱き寄せる。

「さ、みんなも気持ちよくなりましょ。隣の子を愛撫してあげて。こんなことできるの、今だけよ」
 観客席が異様な雰囲気に包まれ始めていた。
 まだ大人には遠い14歳の少年少女たちが、初めはためらいがちに、が、やがて大胆に、お互いをまさぐり始めていた。

 狂ってる。
 歯軋りしながら由羅は思った。
 しかし、その間にも、ステージでは次の出し物が始まろうとしていた。

 串刺しになった杏里の四肢から一旦ロープをはずすと、零は杏里のスカートとパンティを取り去った。
 太い鉄の棒が、肛門から体内に消えている様子が丸見えになる。
 無毛のつるりとした局部がまるで人形のようだ。

 床には血の池ができていた。
 零が杏里の手足を、4本の別々のロープにつなぎ直した。
 鉄の棒に展翅されたまま、杏里は両手両脚をX字型に大きく広げた格好になった。

「さ、今度は何だと思う?」
 零が場所を移動して、別のハンドルの側に立った。
 前面が開き、中の歯車がむき出しになった鉄の箱から、ハンドルが突き出している。

「中世ヨーロッパで、もっとも残酷な刑罰といわれたのが、これ」

 零がハンドルを回す。

 杏里の四肢を縛った4本のロープが、ゆっくりと伸びていく。

 やがて、4本同時にぴんと張った。

 手足がロープに引かれて放射状にまっすぐになっている。

 そのままじわじわと、ロープが杏里の手足を引っ張っていく。

 鉄の棒につなぎ止められたまま、杏里の体がせりあがる。

「もう、わかったでしょう? これはすなわち、"八つ裂きの刑”」

 くそ。

 由羅はうめいた。

 八つ裂きだと?

 針責め、串刺しの次は、よりによって八つ裂きか。

 どこまで狂ってやがるんだ、あの女は!




 ごきっ。

 肩の関節が鳴った。

 杏里はかすんだような意識の中で、音だけを聞いていた。

 肘と膝はすでに関節がはずれ、脱臼している。

 痛みはなかった。

 串刺しの途中で痛みが閾値を超え、タナトス特有の無痛状態が発動したのだ。

 だが、気が狂いそうだった。

 自分の体が、なぶりものにされ、目の前で次々に破壊されていく。

 それを見て悶え狂う、全裸の少年少女たち。

 少年のペニスを、少女がくわえている。

 ひとりの少女に、2人の少年がのしかかり、まだ膨らみ始めたばかりの乳房を弄んでいる。

 犬のように尻を突き出した少女に、少年がのしかかる。

 猫の鳴き声のような、甘ったるい声があたりに充満する。

 みんな、杏里のクラスメートたちだった。

 全員、杏里のほうを注視しながら、快楽に耽っているのだ。

 ひどい世界・・・。

 確かに、これが終われば彼らは"解放"されることだろう。

 しかし、こんな狂った世界の、狂った住人たちに、果たして救うだけの価値があるのだろうか?

 杏里は絶望の中で、そう思った。

「中世では、罪人の四肢にとりつけたロープを、牛や馬に引かせたそうです。でも、それでは力のかかり方も不均衡で、効率が悪いでしょう? だから私は少し改良を加えてみたのです。このハンドルひとつで、四肢に均等な力が加わるようにね」
 零がいいながら、またハンドルを回す。

 なるほど、4本のロープはいくつもの滑車を巡って、零の手元の装置につながっている。
 歯車が何重にも重なり合った、古色蒼然とした装置である。
 そこから突き出したハンドルを、零は回しているのだった。
 裸の美少女と美少年が、再び零の体にまとわりつく。

 少年に乳首を吸われ、少女に股間を舐められて、零が喘ぐ。
 そのとたん、ハンドルが大きく回った。

 凄い力で、手足が引っ張られた。
 肩と足のつけ根で、完全に骨がはずれるのがわかった。
 
 皮膚と筋肉が、限界まで引き伸ばされていく。
 
 が、体の中心に鉄の棒が入っているので、杏里は視線を動かすこともできない。

 杏里の四肢は、ゴムでできているように伸びきっていた。

「やめろ!」
 泣きながら由羅は叫んだ。
「やめるんだ!」

 そのとき、ずぼっという、嫌な音がした。

 2本の腕と、2本の足を巻き取った4本のロープが中を舞った。

 残されたのは、手足を失い、達磨のような姿になった杏里の裸体。

 両肩と両脚のつけ根から、シャワーのように血しぶきが上がった。

「素敵・・・」

 零が杏里に近づいていく。

「でも、まだよ」

手に、何か持っている。

「これ、何かわかる?」

 先が4鋭く4つに割れた、パンなどを挟むトングのようなもの。

「『スペインの蜘蛛」っていうんだけど、使い方はね、こうするの」

「畜生!」
 由羅はまた叫んだ。
 杏里の体から、大量の新たな血が噴き出すのを、目の当りにしたからだった。

 
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