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第4部 暴虐のカオス
プロローグ
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全面緑色の蔦で覆われた、見るからに異様な建物だった。
玄関のある正面だけが3階建てで、左右に2階建ての棟が翼のように伸びている。
建物の前は広い空き地だった。
元はこの病院の駐車場だったのだろうが、今は剥がれたアスファルトの間から雑草が生え、見る影もない。
その空き地に、大きなコンテナ車が停まっていた。
運送会社の男達が、人の背丈ほどもある段ボールを汗だくになりながら中に運び入れている。
姦しい蝉の声に混じって、かすかな潮騒が聞こえてくる。
海が近いのだ。
「一応掃除はさせておいたが、本当に内部の改装はしなくていいのか」
廃病院から少し離れた砂利道に、黒塗りのベンツが停まっている。
その後部座席に座った白髪の老人が、真夏の午後の日差しに目を細めながらいった。
老人の右手は、傍らに座る黒髪の少女の胸元に消えている。
下着をずらし、乳房を愛撫しているのだ。
「いいの。雰囲気が壊れるから」
乳房を執拗に弄ばれながら、顔色ひとつ変えることなく、黒野零は答えた。
真っ白な肌。
日本人形のような細面の顔。
切れ長の双眸が、ねっとりとした光を帯びている。
「しかし、驚いたな」
息を喘がせながら、老人が続ける。
高級な素材のズボンのチャックが開き、しなびた性器が垂れ下がっている。
それを零の細くて長い指が、ゆっくりとしごいていた。
「この21世紀に、中世ヨーロッパの拷問道具をまだ製造している会社があるとはな。経済界に半世紀根を張って生きてきたわしだが、おまえに教えられるまでまったく知らなかったよ」
「そうね」
零が薄く笑った。
「きっと、私と同じ嗜好の人が、まだ世界にはたくさんいるのよ」
「そのようだな」
老人が、切なげにため息をつく。
零の掌の中で、陰茎が半立ちになっている。
感じているのだ。
「それで、おまえはいったい、何をするつもりだ?」
うっとりと目を閉じてシートにもたれ、老人が訊く。
「ここにお化け屋敷でもつくるつもりか」
少女のもう一方の手が、老人のシャツのボタンをはずした。
骨ばった胸板が顕わになると、陥没した茶色い乳首を中心に、円を描くようにして撫で回し始める。
「ま、そんなところかな」
両手で老人の老いさばらえた肉体を愛撫しながら、笑いを含んだ声で零はいった。
「ふたりほど、招待したい子がいるの」
「まさか、あれを実際に使うつもりではあるまいな」
「ふふ。もし、使うといったら?」
「馬鹿な。そんなことをしたら、生身の人間なら確実に死んでしまうぞ」
老人が目を開き、傍らの少女を見つめた。
零の瞳が、蛇のそれのようにすうっと細くなる。
「万一のときは、死体の処理、頼めるでしょ?」
甘えるようにいった。
老人の皺だらけの顔に、そこだけ血を吸ったように赤い唇を近づけていく。
老人が、一瞬、恐怖にとりつかれたような表情になった。
見開かれた瞳に、少女の妖しい微笑が映っている。
蛇に睨まれた蛙とは、まさにこのことだった。
「ね。おとうさま」
硬さを取り戻した老人の肉棒を握る手に、零は力を込めた。
何かに取り憑かれたように、ゆるゆると老人がうなずいた。
玄関のある正面だけが3階建てで、左右に2階建ての棟が翼のように伸びている。
建物の前は広い空き地だった。
元はこの病院の駐車場だったのだろうが、今は剥がれたアスファルトの間から雑草が生え、見る影もない。
その空き地に、大きなコンテナ車が停まっていた。
運送会社の男達が、人の背丈ほどもある段ボールを汗だくになりながら中に運び入れている。
姦しい蝉の声に混じって、かすかな潮騒が聞こえてくる。
海が近いのだ。
「一応掃除はさせておいたが、本当に内部の改装はしなくていいのか」
廃病院から少し離れた砂利道に、黒塗りのベンツが停まっている。
その後部座席に座った白髪の老人が、真夏の午後の日差しに目を細めながらいった。
老人の右手は、傍らに座る黒髪の少女の胸元に消えている。
下着をずらし、乳房を愛撫しているのだ。
「いいの。雰囲気が壊れるから」
乳房を執拗に弄ばれながら、顔色ひとつ変えることなく、黒野零は答えた。
真っ白な肌。
日本人形のような細面の顔。
切れ長の双眸が、ねっとりとした光を帯びている。
「しかし、驚いたな」
息を喘がせながら、老人が続ける。
高級な素材のズボンのチャックが開き、しなびた性器が垂れ下がっている。
それを零の細くて長い指が、ゆっくりとしごいていた。
「この21世紀に、中世ヨーロッパの拷問道具をまだ製造している会社があるとはな。経済界に半世紀根を張って生きてきたわしだが、おまえに教えられるまでまったく知らなかったよ」
「そうね」
零が薄く笑った。
「きっと、私と同じ嗜好の人が、まだ世界にはたくさんいるのよ」
「そのようだな」
老人が、切なげにため息をつく。
零の掌の中で、陰茎が半立ちになっている。
感じているのだ。
「それで、おまえはいったい、何をするつもりだ?」
うっとりと目を閉じてシートにもたれ、老人が訊く。
「ここにお化け屋敷でもつくるつもりか」
少女のもう一方の手が、老人のシャツのボタンをはずした。
骨ばった胸板が顕わになると、陥没した茶色い乳首を中心に、円を描くようにして撫で回し始める。
「ま、そんなところかな」
両手で老人の老いさばらえた肉体を愛撫しながら、笑いを含んだ声で零はいった。
「ふたりほど、招待したい子がいるの」
「まさか、あれを実際に使うつもりではあるまいな」
「ふふ。もし、使うといったら?」
「馬鹿な。そんなことをしたら、生身の人間なら確実に死んでしまうぞ」
老人が目を開き、傍らの少女を見つめた。
零の瞳が、蛇のそれのようにすうっと細くなる。
「万一のときは、死体の処理、頼めるでしょ?」
甘えるようにいった。
老人の皺だらけの顔に、そこだけ血を吸ったように赤い唇を近づけていく。
老人が、一瞬、恐怖にとりつかれたような表情になった。
見開かれた瞳に、少女の妖しい微笑が映っている。
蛇に睨まれた蛙とは、まさにこのことだった。
「ね。おとうさま」
硬さを取り戻した老人の肉棒を握る手に、零は力を込めた。
何かに取り憑かれたように、ゆるゆると老人がうなずいた。
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