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1 再会

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 早朝の駅の構内。
 さすがにこの時間帯だと、人の姿は少ない。
「いるかな。ちゃんと来てくれたかな」
 小走りに駆けながら、私は無意識にそう口に出してつぶやいていた。
 角を曲がる。
 柱の陰にたたずむ人影。
 いた!
 安堵のあまり、危うくその場に座り込みそうになる。
 この2ヶ月、必死で準備したマリとの旅行。
 これを逃したら、私は…。
 だって、私に残された時間は、もう、ほんのわずかしかないのだからー。
「マリ!」
 叫ぶまでもなく、マリが私を見つけて破顔した。
 今日のマリは、白いサマーセーターに淡いピンクのミニスカート。
 長い髪を束ねてポニーテールにしている。
「久しぶり! 会いたかった! 元気にしてた?」
 駆け寄ると、
「ほんとに久しぶり~。ナナ、なんか大人っぽくなったね」
 にこにこ笑ってマリが言う。
「マリって、やっぱりかわいいね。もう、なんて色が白いの!」
 むき出しの二の腕をぷにぷにしてやると、なによそれ~? とマリが悶えてみせた。
 マリと会うのは2年ぶり。
 大学の卒業旅行以来である。
 それぞれ就職して、この2年間、会えない日々が続いていた。
 でも、私は忘れていない。
 あの日のことを。
 あの夜起こった、特別なできごとを…。
「とにかく切符買お。こっちこっち」
 言いたいことはいっぱいある。
 でも、何から話せばいいのかわからない。
 照れくささも手伝って、私はマリの手を引いて歩き出す。
 きょうはゴールデンウィーク初日。
 旅行の計画を立て始めたのは3月の半ばで、時期的には遅すぎてどうなることかと気をもんだものだった。
 奇跡的になんとか宿は取れたけど、新幹線の切符は自由席しかなかったのだ。
「座れるといいね」
 手を引かれて小走りになりながら、息を切らせてマリが言う。
「始発だからなんとかなるよ」
 答える私は期待で胸が張り裂けそうだ。
 マリとふたりだけの温泉旅行。
 2年前の卒業旅行と違い、ふたりになれる時間はたっぷりある。
 変わってないといい。
 心の底からそう思う。
 今はマリが変わっていないことを祈るしかないのだ…。

 
 
 

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