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#29 捜索③
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「連続殺人事件? なんですか、それ?」
初耳だ。
時節柄、新聞の発行も、ようやく元のペースに戻り始めたばかりである。
しかも、戦時中に大本営の宣伝機関と化した負い目があるのか、以前に比べ、ずいぶんと報道も控えめだ。
だから、そんな記事、みかけた覚えはない。
編集長ったら、いつのまにそんな事件、追いかけてたのだろう?
「国鉄のガード下でさ、この一週間で三人」
タバコをくゆらし、編集長が言った。
「被害者は戦災孤児、浮浪者、復員兵。時刻は夜。みな蒲生氏と同じ状況で死んでいる」
「一応、変質者の通り魔の線で捜査中だ。まだ新聞社にも嗅ぎつけられてないはずなんだが」
「まあ、僕にはいろいろツテがあるんで」
編集長はにやりと笑うと真顔に戻り、
「それにしても、こんな変質者、いるんですかね。男性の局部だけを食いちぎり、死に至らしめるだなんて」
「え?」
私は素っ頓狂な声を上げずにはいられなかった。
「蒲生氏と同じ状況って、そこですか?」
初耳だ。
時節柄、新聞の発行も、ようやく元のペースに戻り始めたばかりである。
しかも、戦時中に大本営の宣伝機関と化した負い目があるのか、以前に比べ、ずいぶんと報道も控えめだ。
だから、そんな記事、みかけた覚えはない。
編集長ったら、いつのまにそんな事件、追いかけてたのだろう?
「国鉄のガード下でさ、この一週間で三人」
タバコをくゆらし、編集長が言った。
「被害者は戦災孤児、浮浪者、復員兵。時刻は夜。みな蒲生氏と同じ状況で死んでいる」
「一応、変質者の通り魔の線で捜査中だ。まだ新聞社にも嗅ぎつけられてないはずなんだが」
「まあ、僕にはいろいろツテがあるんで」
編集長はにやりと笑うと真顔に戻り、
「それにしても、こんな変質者、いるんですかね。男性の局部だけを食いちぎり、死に至らしめるだなんて」
「え?」
私は素っ頓狂な声を上げずにはいられなかった。
「蒲生氏と同じ状況って、そこですか?」
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