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#19 戦禍の影に蠢くもの③
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「まあね」
当事者のくせに、編集長には危機感というものがない。
「ただしそれは、犯人が人間だった場合のことさ」
「え? そ、それ、どういうことですか?」
わらにもすがる思いで、私は傍らの優男を見た。
「一応は女性であるうずらの前で、こんなことを口にするのもあれなんだが」
やおら紙巻き煙草に火をつけると、編集長が話し始めた。
一応って、失礼な。
でも、こんなふうに煙草を吸い始めたのは、事件に興が乗ってきた証拠だろう。
「被害者の様子は、かなり不自然でした。ズボンと下着を脱がされ、股間が血だらけになっていた。そう、明らかに性器を引きちぎられていたのです」
「ああ…確かに」
痛ましそうな顔つきで、警部がうめく。
「切り取られたのではなく、千切り取られていた。それはさきほど、鑑識からも報告を受けましたな」
「もし犯人が獣なら、食いちぎられた可能性が高い。死体の周囲を調べた限りでは、千切り取られた性器の類いは見当たらなかったので」
「でも…」
ふと思いついて、私は横から口を挟んだ。
「今、編集長がおっしゃったように、あの死体、ズボンと下着が脱がされていましたよね? 犯人がケダモノ、そう、たとえば野犬とかだった場合、そんなことするでしょうか? ていうか、ケダモノにそれは、不可能だと思うんですけど?」
当事者のくせに、編集長には危機感というものがない。
「ただしそれは、犯人が人間だった場合のことさ」
「え? そ、それ、どういうことですか?」
わらにもすがる思いで、私は傍らの優男を見た。
「一応は女性であるうずらの前で、こんなことを口にするのもあれなんだが」
やおら紙巻き煙草に火をつけると、編集長が話し始めた。
一応って、失礼な。
でも、こんなふうに煙草を吸い始めたのは、事件に興が乗ってきた証拠だろう。
「被害者の様子は、かなり不自然でした。ズボンと下着を脱がされ、股間が血だらけになっていた。そう、明らかに性器を引きちぎられていたのです」
「ああ…確かに」
痛ましそうな顔つきで、警部がうめく。
「切り取られたのではなく、千切り取られていた。それはさきほど、鑑識からも報告を受けましたな」
「もし犯人が獣なら、食いちぎられた可能性が高い。死体の周囲を調べた限りでは、千切り取られた性器の類いは見当たらなかったので」
「でも…」
ふと思いついて、私は横から口を挟んだ。
「今、編集長がおっしゃったように、あの死体、ズボンと下着が脱がされていましたよね? 犯人がケダモノ、そう、たとえば野犬とかだった場合、そんなことするでしょうか? ていうか、ケダモノにそれは、不可能だと思うんですけど?」
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