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#8 奇妙な依頼④
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「誰ですか、その、蒲生さんって?」
怪しい。
第一、陸軍中野学校とは、悪名高い戦時中の諜報員養成学校である。
「昔の同僚だよ。中野学校分校で、一時一緒だったんだ」
フケが舞い散るのも構わず、もじゃもじゃ頭をわしゃわしゃやりながら、編集長が答えた。
「それにしてもなんでこんなものを俺に? ああ、特攻の時期なら、諸説があってね。ミッドウェー海戦の時にはすでに企画立案されていたというのは確からしい。資源も物資も人材も圧倒的に米国に劣っていることは、我が国の軍部もあらかじめ知っていた。だから特攻は戦争が始まる前から作戦の一部として織り込み済みだったのさ」
「そんな、ひどい…」
戦後五年の間に、徐々に明らかになってきたのは、当時の軍部の無策ぶりだ。
一億総玉砕、皇国死守の洗脳が解けると、私たちの中に燃え上ったのは陸軍・海軍上層部に対する拭いきれない不信感と消せない怒りだった。
「まあ、誰が悪いというより、あの頃は軍部だけでなくマスコミも国民も全部狂っていたからね」
あたしの心の内を見透かしたかのように、編集長がため息をつく。
「それにしても、蒲生氏は今頃なぜこんなものを?」
「なんでも、そこに恐ろしい事実が隠されているとか…」
客人の言葉を思い出して、私は言った。
「編集長ならきっと関心を持つだろう、みたいなこと、おっしゃってましたけど」
「恐ろしい事実? 何だろう?」
首を傾げながら、編集長が事務机の上に油紙の中身をぶちまけた。
怪しい。
第一、陸軍中野学校とは、悪名高い戦時中の諜報員養成学校である。
「昔の同僚だよ。中野学校分校で、一時一緒だったんだ」
フケが舞い散るのも構わず、もじゃもじゃ頭をわしゃわしゃやりながら、編集長が答えた。
「それにしてもなんでこんなものを俺に? ああ、特攻の時期なら、諸説があってね。ミッドウェー海戦の時にはすでに企画立案されていたというのは確からしい。資源も物資も人材も圧倒的に米国に劣っていることは、我が国の軍部もあらかじめ知っていた。だから特攻は戦争が始まる前から作戦の一部として織り込み済みだったのさ」
「そんな、ひどい…」
戦後五年の間に、徐々に明らかになってきたのは、当時の軍部の無策ぶりだ。
一億総玉砕、皇国死守の洗脳が解けると、私たちの中に燃え上ったのは陸軍・海軍上層部に対する拭いきれない不信感と消せない怒りだった。
「まあ、誰が悪いというより、あの頃は軍部だけでなくマスコミも国民も全部狂っていたからね」
あたしの心の内を見透かしたかのように、編集長がため息をつく。
「それにしても、蒲生氏は今頃なぜこんなものを?」
「なんでも、そこに恐ろしい事実が隠されているとか…」
客人の言葉を思い出して、私は言った。
「編集長ならきっと関心を持つだろう、みたいなこと、おっしゃってましたけど」
「恐ろしい事実? 何だろう?」
首を傾げながら、編集長が事務机の上に油紙の中身をぶちまけた。
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