散らない桜

戸影絵麻

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#6 奇妙な依頼②

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 待てど暮らせど編集長は来ない。

 あの道楽息子め。

 ったく、いい身分である。
 
 くう。

 留守番なんて、ひきうけるんじゃなかった。

 今日に限って、電話一本かかってこないじゃないか。

 こんなことなら、適当にネタをでっちあげて、取材と称し、街に出るべきだった。

 せめて闇市でも散策すれば、ずいぶん気も晴れるに違いない。

 

 暇を持て余した私は、例の紳士が置いて行った書類の中身を確かめてみることにした。

 二つ折りにして輪ゴムで止めてある紙の束が、特攻兵の手記というやつだろうか。

 読むのに骨が折れそうなので、それは脇に置いておいて、一枚の紙を引っ張り出す。

 名簿は三段に分かれていて、それぞれ見出しがついている。

『ミッドウェー海戦・回天』

『ガダルカナル戦役・桜花』

『ニューギニア戦役・伏龍』

 その下に並ぶ人名は、上から順番に、30人、20人、10人と、だんだん減っていく。

「あれ? これ、なんかおかしくない?」

 ふいに違和感を覚え、思わず口に出してそうつぶやいた時、たてつけの悪い玄関扉がまた開き、

「なんだ? 何をひとりで騒いでいる?」

 モジャモジャ頭の青年が、ぬうっと顔をのぞかせた。
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