汚れちまった悲しみに、きょうも血潮が降り注ぐ

戸影絵麻

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プロローグ

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 寒かった。
 パジャマ一枚の身体に、雪混じりの風が容赦なく吹きつけてくる。
 比奈は膝を抱え、身体を小さくした。
 狭いベランダには、風を防ぐ場所もない。
 空腹で思考が半ば麻痺していた。
 きょうもスープ一杯しか飲ませてもらえなかった。
 お風呂にもここ1週間入っていない。
 どうして?
 お母さん、どうしてなの?
 前はあんなにやさしかったのに…。
 何度自問しても、答えは出ない。
ーおまえなんか、産まなきゃよかったー
 木枯らしに混じって、あの言葉が耳によみがえる。
 思わず両手で耳をふさいだ。
 だが、声は止まなかった。
ー私だって、産みたくて産んだんじゃないんだよ!-

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