臓物少女

戸影絵麻

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♯93 四天王その四⑦

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「ちわ~、宅急便で~す」
 ドア越しに声がする。
「なんだ、宅急便か」
 脱力して玄関に向かいかけた明に、紗英の鋭い声が飛ぶ。
「待って。何かおかしい。ここには私とあんたしかいない。私は何も頼んでないし、あんたはどうなの? 例えばエロいDVDとかアダルトグッズとか」
「い、いや、そんなことは…言っただろ。俺、インポなんだって」
「だからインポ治そうとしてとか、あり得るでしょ」
「ないよ、ないない」
 首を振っているうちに、明の内面にも疑念の雲が沸き上がってきた。
 さっきなんて言った?
 宅急便?
 宅配便じゃなくってか?
 宅急便といえば、黒猫大和の商標であって、普通名詞ではない。
 てことはもし相手がほかの社名を名乗れば、それは即、インチキを露呈したということになる。
 ここは一丁、やってみるとするか。
「おつかれっす~。佐川急便さんですよね~」
「はあい、そうですー。こちらに、天津紗英さんってお住まいですよね~。天津さんに小包で~す」
 ピキン。
 明のこめかみに青筋が浮き立った。
 やはり。
 こいつは偽物だ。
 佐川急便の従業員が、宅急便なる固有名詞を使うはずがない。
「えーと、人違いじゃあ、ありませんか?」
 鼻をつまんで作り声を出し、明は答えた。
「ここには女の子なんて住んでませんけど。俺はただの引きこもりニートで、大神明って言いま…」
 そこまで言った時だった。
 ガキーン!
 チェーンロックが吹っ飛んで、鋼鉄の扉がドア枠から軽々と引きはがされた。
「げ」
 目の前に出現したものを一目見るなり、腰を抜かす明。
「うっせえわ、このクソガキめが。つべこべ言わずに紗英を出せ」
 怒声とともに黒々とした影が明の上に落ちた。
「お、おまえは、人肉厨房の…」
 何ノイドかは、聞かなくともわかった。
 相手があまりにもそのもの過ぎる姿かたちをしていたからだ。
「左様、俺様は人肉厨房四天王その4、その名もー」
「言わなくてもわかるよ。このチンポコ野郎!」
 遮ったのは、いつの間にか明の後ろに来ていた紗英だった。
「チンポコ野郎、だと?」
 明の目と鼻の先で、等身大の男根が怒りの静脈を浮き立たせて、みるみるうちに勃起する。
「このくされまんこ娘が! よくもこの四天王最終兵器、ペニスノイドさまをコケにしやがったな!」
 そうー。
 宅配業者を装って急襲をかけてきたのは、首から巨大な陰茎を生やした、見るも卑猥な人造人間だったのだ。
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