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♯91 四天王その四⑤
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「私、寝ないでよ~く考えてみたの」
なるほど、言われてみれば紗英の大きな目の下には涙袋みたいな黒いクマができている。
「そして、わかったの」
見つめられ、思わず息を呑む明。
以前なら、コンマゼロ秒の速さで勃起しているところである。
「な、なにが…?」
辛うじて声を絞り出すと、かすれてしまって蛙の屁みたいな音が喉から漏れただけだった。
「私の正体を知っても逃げなかったニンゲンは、博士を別にすると、博士の息子の、あなただけだったって」
「い、いや、それは…」
明は言葉を濁し、ぽりぽりと頭を掻いた。
明が紗英の正体を目の当たりにしたのは、このマンションでの1回と、この前の膣ノイド戦の時の2回である。
そのどちらも、単に逃げ出したくても腰が抜けて動けなかっただけ、というのが正しい。
紗英に感謝される筋合いはサラサラない、というのが事実なのだ。
けれど、たとえ勘違いであるにせよ、紗英の態度が軟化するのはうれしかった。
同居する女性に生涯の仇敵を見るような目で見られ続けるというのは、正直地獄の鍋に放り込まれた気分なのだ。
「そりゃあ、あなたは、見るからに変態で、よく街角で女子中学生や女子高生に、モロ出しの下半身を触りながら、『ボクと淫らなこと、しませんか?』って声をかけてるゴミクソみたいなやつにそっくりだけれども、でも、ひょっとして、他の男にはない、良い所がどこかあるんじゃないかって、私、遅まきながら、思い始めてたんだ…。確かに、モロ出ししても、肝心の生殖器官は未発達で皮をかぶっていて、本当に役に立つのか疑問なとこはあるけれど…。まあ、どちらにしても、私のほうも、バイオノイドだから、生殖能力、ないわけだしね…」
何の話か、途中からわからなくなった。
明には紗英の言葉の一つ一つが、とてつもなく残忍な誹謗中傷に聞こえたからだった。
だが、懸命に心を落ち着かせてその言葉を反芻してみると、後半は、紗英が明との生殖行為を容認しているように思えないこともない、という気がしてきて、少し気分を持ち直した。
が、最悪なことに、何を言われても、今の明には、無理なのだ。
「ゴメン…」
いきなり土下座してすすり泣き始めた全裸の明。
「俺、マジで勃たないんだ…。変態どころか、もう、男ですら、なくなっちゃったんだよ…」
なるほど、言われてみれば紗英の大きな目の下には涙袋みたいな黒いクマができている。
「そして、わかったの」
見つめられ、思わず息を呑む明。
以前なら、コンマゼロ秒の速さで勃起しているところである。
「な、なにが…?」
辛うじて声を絞り出すと、かすれてしまって蛙の屁みたいな音が喉から漏れただけだった。
「私の正体を知っても逃げなかったニンゲンは、博士を別にすると、博士の息子の、あなただけだったって」
「い、いや、それは…」
明は言葉を濁し、ぽりぽりと頭を掻いた。
明が紗英の正体を目の当たりにしたのは、このマンションでの1回と、この前の膣ノイド戦の時の2回である。
そのどちらも、単に逃げ出したくても腰が抜けて動けなかっただけ、というのが正しい。
紗英に感謝される筋合いはサラサラない、というのが事実なのだ。
けれど、たとえ勘違いであるにせよ、紗英の態度が軟化するのはうれしかった。
同居する女性に生涯の仇敵を見るような目で見られ続けるというのは、正直地獄の鍋に放り込まれた気分なのだ。
「そりゃあ、あなたは、見るからに変態で、よく街角で女子中学生や女子高生に、モロ出しの下半身を触りながら、『ボクと淫らなこと、しませんか?』って声をかけてるゴミクソみたいなやつにそっくりだけれども、でも、ひょっとして、他の男にはない、良い所がどこかあるんじゃないかって、私、遅まきながら、思い始めてたんだ…。確かに、モロ出ししても、肝心の生殖器官は未発達で皮をかぶっていて、本当に役に立つのか疑問なとこはあるけれど…。まあ、どちらにしても、私のほうも、バイオノイドだから、生殖能力、ないわけだしね…」
何の話か、途中からわからなくなった。
明には紗英の言葉の一つ一つが、とてつもなく残忍な誹謗中傷に聞こえたからだった。
だが、懸命に心を落ち着かせてその言葉を反芻してみると、後半は、紗英が明との生殖行為を容認しているように思えないこともない、という気がしてきて、少し気分を持ち直した。
が、最悪なことに、何を言われても、今の明には、無理なのだ。
「ゴメン…」
いきなり土下座してすすり泣き始めた全裸の明。
「俺、マジで勃たないんだ…。変態どころか、もう、男ですら、なくなっちゃったんだよ…」
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