臓物少女

戸影絵麻

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#66 驚愕の真実⑤

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 ああ、なんということだろう・・・。
 明の脳裏に昔読んだ水木しげるの漫画じみた台詞が点滅した。
 目の前でホカホカ湯気を上げているのは、粘液と脂肪でヌルヌルに濡れた肉の積み重なりである。
 よく見るとそのひと房ひと房は肺だったり胃袋だったり肝臓だったりと、人体解剖図で見た内臓そのものだ。
 中心には脊椎が垂直に通っているらしく、そこから鈴なりに臓器が生えてぶら下がっているというわけだった。
 天辺のひと際大きい灰色の物体は明らかに脳髄で、気味悪いことにその根元に一対の眼球が埋まっている。
「あ、あ、あ、あ、あ」
 意味のないうめき声を垂れ流す明に向かってその眼球がぎょろりと動くと、その下に唐突に口が開いて、
「どう? これが本当のあたしの身体。約束通り、好きにさせてあげるわよ」
 可愛らしい澄んだ声でそう言った。
 確かに外観は様変わりしてしまっている。
 だがその声質は、間違いなく紗英のものだった。
 しかし、理性は受け止めても、感情がついていかなかった。
「よ、寄るな。ば、化け物・・・」
 後退る明。
 ついさっきまでガチガチに勃起して、天井に向けて聳え立っていたペニスは、今やすっかり萎びてしまっている。
「化け物? ひどい言い方ね」
 豹変した明を、紗英だったモノがなじってきた。
「あたしの身体、いつもいやらしい目で見てたの、知らないと思って?」
「だだだから、それは・・・」
 たじたじとなる明の前で、肉房の塊からにゅるにゅると半透明な触手みたいなものが立ち上がった。
 神経なのか血管なのか、数は無数で、あたかも意志を持っているかのようにくねくね蠢いている。
 触手の先からは正体不明の液体がぽたぽた滴り落ち、堕ちた先のカーペットからは白い煙が上がっていた。
 消化液?
 これか。
 本能的に明は悟った。
 神経でも血管でもなく、これは消化器官から分岐した枝みたいなものではないだろうか。
 そしてこの触手みたいなものが、化け物の腕代わりなのだ。
 紗英はこれを使って、人肉厨房の培養人間たちを倒してきたに違いない。
「あたしをこんな姿にしておいて、約束を果たさないつもり?」
 ずるっ。
 明のほうへ滑るように動き出し、化け物と化した紗英が言い募った。
「あんた、あたしとセックスしたかったんでしょ? なら、早くしたいようにしなさいよ。まさか、逃げるつもりじゃないでしょうね? 乙女を辱めておいて、いくらなんでもそれはないわよね。早くあたしを犯しなさいよ。逃げたら殺すから。いいわよね?」

 
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