臓物少女

戸影絵麻

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#60 悪魔の契約⑦

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 しぶしぶと言った感じでドアが開く。
 ヒュー。
 明の口から思わず知らず口笛が漏れた。
 矩形に切り取られた空間に、白いTシャツにデニムのショートパンツ姿の紗英が立っていた。
 ボリューミーな肉体美が、ピチピチのTシャツで強調され、下着並に短いボトムのせいで脚が異様に長く見える。
 完全に勃起モノの紗英の肢体に、明のペニスが獲物を見つけたニシキヘビの頭部のごとく角度を上げた。
 全裸の明を目の当たりにして、紗英の眉がピクリと動く。
 とげとげしい視線が、自分を狙うようにそそり立つ肉の大砲をねめつける。
 その大きな目に瞬間怒りに似た光が宿り、明の肝を冷えさせた。
「用って?」
 吐き捨てるような口調で訊いてきた。
 ケダモノを見るような眼が明の肌に突き刺さる。
「わかってるくせに」
 明はへらへら笑い、紗英を挑発した。
 その瞬間、ちくりと心が痛まなかったと言えばうそになる。
 好きな子に意地悪する小学生男子の心理。
 それが今の明の言動を支配していたのだ。
「忘れたとは言わせないよ。ボクたち、あの時、確かに約束、したよね?」
「・・・」
 紗英は答えない。
「キミの言いつけ通り、僕は全裸になり、警官や機動隊員たちの眼をそらすことに成功した。でも、おかげでとんだ変態扱いさ。その後、精神鑑定にも回されちゃって、それはそれは大変だったんだ」
「・・・でもあなた、ガチで変態でしょ?」
 その紗英のひと言が、明の怒りに火をつけた。
「あーあ、言っちゃった。いいのかなあ、スーパーヒーローが差別的なその態度。いくら僕が弱者男性代表だからって、そこまで侮辱するなんて。でもキミは確かに言ったんだよ。どんなに下衆でクズな願い事でも聞いてあげるって、あの時に」
「い、言ったけど、それが、どうしたの?」
 紗英のこめかみにメキメキっと青筋が浮く。
 語尾に「このクズ野郎」と付け加わってもおかしくない、そんな軽蔑的な語調だった。
 この子、よほど俺のことが嫌いなのだ。
 その認識に打ちのめされ、明はますます意固地になった。
「なら、今果たしなよ。その約束ってやつを。何だか知らないけど、僕は曲がりなりにもあの時キミを救ったんだからさ」
「・・・わかった」
 憎々し気に明を睨みつけながら、ややあって紗英が言った。
「何でもいいなよ。いう通りにしてやるから」
 やった!
 と思うより、悲しみのほうが、強かった。
 好きな女子にこれほど短期間にこんなにも嫌われるなんて。
 俺っていったい何なんだ?
 涙がこぼれそうになるのをかろうじてこらえ、明はあえて強がり、へらへら笑い続けたのだったが・・・。
 
 
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