臓物少女

＃42 四天王 その一⑤

　明の悲鳴には理由がある。
　紗英の服装である。
　いや、それをそもそも、服装とよんでいいのかどうかー。
「紗英ちゃん、それ、レオタードじゃない？」
「･･････」
　紗英は耳朶まで真っ赤になっている。
　そうなのだ。
　紗英が身に着けているのは、かなりハイレグ気味の、白いレオタードなのである。
　布地があまりにぴっちり肌に貼りついてしまっているので、Sの字に近い身体のラインが丸出しだ。
　特に豊満な胸と尻の出っ張り具合がいけなかった。
　それらはまさに、若い男性にとっては凶器と言ってもいいほどの破壊力を秘めていた。
「露出度が高ければ高いほど、有利なんです」
　ややあって、意を決したように、紗英が言った。
　明にとっては、前にも聞いた台詞である。
　が、なぜそうなのかは、依然としてわからない。
「ニュースは自分のスマホで見ました。尻ノイド。あれは、人肉厨房四天王のひとりです。相当手強い相手と見て間違いありません」
「レオタードは、そのための、露出過多だというわけね」
「ええ、その通りです。何も、そこいらにうじゃうじゃ生息する変態クズ男どもを喜ばせるためじゃありません」
　むろん、紗英が”変態クズ男”のくだりで明に視線を投げたことは、もう、いうまでもない。
「じゃあ、出動してくれるんだ」
「はい。やつらの狙いはこの私です。他の人たちをこれ以上巻き込むわけにはいきません」
　潔く言い放つと、形のいい桃尻をもりもり左右にくねらせながら、紗英が大股に玄関へと歩いて行った。
　ぬ、抜ける･･･。
　その後姿にたちまち勃起してしまう明。
　熟れたバナナを埋め込んだようにパンパンに張ったジーンズの前が痛くてたまらない。
　そのぶざまな膨らみにいち早く気づいて、心配そうに笹原刑事が訊いてきた。
「だいじょうぶ？　歩ける？」