臓物少女

＃24 敵か味方か④

　ニョウモレ！
　ニョウモレ！
　尿漏れ！
　明の頭の中で甲高い幼女の声がこだまする。
　それにしてもなぜ、”NO　LIMIT”が『尿漏れ』に聞こえるのか。
　俺の耳が悪いのか。
　それともあのCMにはサブリミナル効果でも仕掛けてあるのだろうか。
　その証拠に、明は事実、尿意を感じていた。
　それを意識にのぼせ、口に出したことで、尿道口のすぐそこまで小便が登ってきたのが感覚的に分かった。
　ヤバい。
　このままではマジでちびってしまう！
「これは･･･コスプレです」
　明の苦悩をよそに、紗英が重い口を開いた。
「何のコスプレだ？」
　老刑事の追及は容赦ない。
「ちょっと、椅子から立って、見せてくれないか？」
　しぶしぶ立ち上がる紗英。
　黒い縁取りの白のタンクトップとマイクロミニのプリーツスカートは、まさにボッキもののファッションだ。
　しかも、紗英は少女ながらプリっぷりの体つきをしているから始末が悪い。
　髪ノイドとの死闘の名残りか、タンクトップとスカートには、なんだか肉汁の染みみたいなものがついている。
「後ろを向け」
　刑事に命じられ、紗英がイヤイヤこちらに臀部を向ける。
　滅茶苦茶短いスカートからはちらりと白いパンティが覗き、そこから黒光りする尻尾が生えていた。
　鈍い光沢のあるそれは途中で上を向き、スペードの形をした先端で天井を指している。
「おい、笹原、おまえも一応ギリZ世代とかの一員だろ？　これ、何のコスプレかわかるか？」
　明はモジモジ太腿をこすり合せた。
　太腿と太腿の間では大根のような硬く熱いものが育っている。
　むろん、紗英のお尻を拝んだせいだ。
　しかもそこに尿意が加わって、冷や汗が止まらない。
　なんで誰も俺にかまってくれないんだ？
　ちゃんと大声でおしっこしたいって言っただろ？
「ええ、まあ･･･。うーん、モリガンでしょうかね。なんか女悪魔って感じですけど」
「モリ、なんだって？　なんだそりゃ」
「ゲームのキャラです。でも、けっこう古いですよ。時代的には昭和かも」
「まあ、どっちにしろ、嘘だろう」
　むっつりした顏で紗英を睨んで、老刑事が決めつけた。
「白状しな。あんたも培養人間なんだろ？　つまり、あの惨劇は、培養人間同士の殺し合いだったってわけだ」