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#22 敵か味方か②
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刑事ドラマでよく見る鑑識課員たちが到着して作業を始めると、明と紗英は建物の裏手に連れていかれた。
そこは従業員用の区画で、あちこちに段ボール箱が積み上げてあり、なんだか薄暗い。
女刑事がふたりを押し込めたのは、事務所みたいな殺風景な部屋だった。
イオン側の係長のオッサンがここを使ってくださいと案内したのである。
取り調べに当たったのは笹原と名乗った若い女刑事とヤニ臭い初老の男刑事だった。
男刑事はニラサキとか名乗り、ドア横に立ったまま、苦虫を嚙み潰したような顔をして壁にもたれている。
明は事務机を挟んで向かい合う女刑事を盗み見た。
けっこういい女だ、というのが第一印象だった。
歳は明と同じか、少し下くらいか。
中背だが、紗英と張り合うほどボリューミーな体つきをしていることが、ピチピチのスーツから窺える。
スーツの上着の前が、胸が大きすぎてしまらず、白いブラウスを押し上げる隆起がはみ出ているのだ。
その胸元から眼を離せないでいると、机の下で紗英に足を蹴られた。
「何見てんの、このカス」
明に対する紗英の言葉遣いはどんどん悪くなっていく。
年上への敬意どころか、普通の人間扱いすらされていない気がする。
天才博士の息子というメッキがはがれ、あちこちでダメ人間の地金が出てしまっているからだろうか。
「人肉厨房というのですね」
メモを取りながら、笹原刑事がうなずいた。
「天津さん、あなたはそこから大神博士という人に助けられ、逃亡した。そして博士の家で、明さんと出会ったと」
あえて隠す必要もないので、明は出来事の一部始終をそのまま語った。
ただ、紗英自身も培養人間であることは、本人のためにもさすがにぼかしたままである。
ただ、紗英は話を振られてもほとんど何も答えない。
「どうせ信じてもらえないとは思いますけど」
汗だくになりながら、無言でうつむく紗英の代わりに明はなんとかフードコートでの一幕を語り終えた。
しかし、徒労感しかなかった。
こういう時、ドラマでは主人公たちは最初犯人扱いされ、警察に捕まり、投獄されてしまうものなのだ。
なんやかんやで疑いが晴れるまで。
が、この場合、その保証はない。
佐平亡き後、ふたりには味方と呼べる第三者がいないからである。
コミュ障の俺に取り調べは荷が重すぎるだろ。
しかもこんな美人刑事を前にして。
そんなことを思いながら諦め顔で天井を仰いだ時だった。
「そうでもないですよ」
妙にあっさりと笹原刑事が言い、壁際の老刑事のほうを振り返った。
「ニラさん、聞いてました? やっぱりこれ、例の腸詰帝国の案件です!」
そこは従業員用の区画で、あちこちに段ボール箱が積み上げてあり、なんだか薄暗い。
女刑事がふたりを押し込めたのは、事務所みたいな殺風景な部屋だった。
イオン側の係長のオッサンがここを使ってくださいと案内したのである。
取り調べに当たったのは笹原と名乗った若い女刑事とヤニ臭い初老の男刑事だった。
男刑事はニラサキとか名乗り、ドア横に立ったまま、苦虫を嚙み潰したような顔をして壁にもたれている。
明は事務机を挟んで向かい合う女刑事を盗み見た。
けっこういい女だ、というのが第一印象だった。
歳は明と同じか、少し下くらいか。
中背だが、紗英と張り合うほどボリューミーな体つきをしていることが、ピチピチのスーツから窺える。
スーツの上着の前が、胸が大きすぎてしまらず、白いブラウスを押し上げる隆起がはみ出ているのだ。
その胸元から眼を離せないでいると、机の下で紗英に足を蹴られた。
「何見てんの、このカス」
明に対する紗英の言葉遣いはどんどん悪くなっていく。
年上への敬意どころか、普通の人間扱いすらされていない気がする。
天才博士の息子というメッキがはがれ、あちこちでダメ人間の地金が出てしまっているからだろうか。
「人肉厨房というのですね」
メモを取りながら、笹原刑事がうなずいた。
「天津さん、あなたはそこから大神博士という人に助けられ、逃亡した。そして博士の家で、明さんと出会ったと」
あえて隠す必要もないので、明は出来事の一部始終をそのまま語った。
ただ、紗英自身も培養人間であることは、本人のためにもさすがにぼかしたままである。
ただ、紗英は話を振られてもほとんど何も答えない。
「どうせ信じてもらえないとは思いますけど」
汗だくになりながら、無言でうつむく紗英の代わりに明はなんとかフードコートでの一幕を語り終えた。
しかし、徒労感しかなかった。
こういう時、ドラマでは主人公たちは最初犯人扱いされ、警察に捕まり、投獄されてしまうものなのだ。
なんやかんやで疑いが晴れるまで。
が、この場合、その保証はない。
佐平亡き後、ふたりには味方と呼べる第三者がいないからである。
コミュ障の俺に取り調べは荷が重すぎるだろ。
しかもこんな美人刑事を前にして。
そんなことを思いながら諦め顔で天井を仰いだ時だった。
「そうでもないですよ」
妙にあっさりと笹原刑事が言い、壁際の老刑事のほうを振り返った。
「ニラさん、聞いてました? やっぱりこれ、例の腸詰帝国の案件です!」
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