臓物少女

戸影絵麻

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#3 美少女

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 めまいがした。
 ふいにめまいに襲われるほど、つまりは明にとって破壊的なくらい、その少女は美しかった。
 耳の下で切りそろえたシンプルな髪型。
 ほどよく丸みがかった、アーモンド形の顏。
 今は閉じられているが、その目は切れ長で、驚くほど睫毛が長い。
 そしてー。
 明はおそるおそる少女の肢体に視線を移す。
 いけないと思いつつも、無意識のうちに品定めしてしまう。
 高校生だろうか。
 それにしては、めっちゃ発育がいい。
 血しぶきの飛んだ白いブラウスの胸は、小柄な体に似合わぬほど豊かに盛り上がり、ひそかに息づいている。
 そして何より、極端に短いプリーツスカートから露わになったむっちりした太腿の艶めかしさといったら・・・。
 その艶やかな太腿にも、べったりと鮮血が貼りついている。
 けど・・・。
 視界に妙なものが映った。
 パンツが見えそうなあのお尻・・・。
 なんか生えてるように見えるのは気のせいか?
 尻尾?
 まさか、そんなの、あり得ない。
 こんなダイナマイトボディの美少女に、尻尾だなんて・・・。
「アキラ、お願いがある」
 喉をぜいぜい言わせながら大神佐平が口を開いたので、明は今初めてその存在に気づいたかのように、父のほうに目を戻した。
 10年ぶりに会う父は、ずいぶん具合が悪そうだった。
 死相が出ている、というのはこういうことを言うのだろうか。
 その土気色の顏は、墓場から蘇ったゾンビと大差ない。
「はあ?」
 語尾を思いっきり吊り上げる発音で言い、明は小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「あんたが本物の親父だとしても、今更俺に、お願いってどういうことだよ?」
 ブイヤベースを作るつもりでザリガニを煮ている最中だったので、明はおたまと菜箸を両手に握っている。
 腰には100均で買ったエプロンだから、そんなふうに威嚇しても迫力はかけらもない。
「わかっている。おまえには本当にすまなかったと思っている。だが、研究のためには、仕方がなかったのだ。知っているだろう? 私の研究が、この国の未来にとって、どんなに重要なものだったのか、ということを」
 気を失ったままの少女を地面に横たえると、佐平は正座をし、深々と頭を下げた。
「そんなの、知るかよ」
 明はおたまを振り上げ、菜箸の先を父の薄い頭頂に突きつけた。
「何だかんだ言って、あんたは俺と母さんを捨て、海外に・・・」
「行く先は南極だった。むろん、家族を捨てるつもりなど、なかった。ところが、現地で思わぬトラブルに巻き込まれて・・・」
 顔を上げた父の眼には、涙が光っている。
「トラブル?」
「ああ、我々の任務は、南極の氷の下にある湖から、とある特殊な生命体を採取することだった。運のいいことに、採取は成功した。しかし、そこに、組織・・・人肉厨房の魔手が伸びて来たのだよ」
「はあ? 人肉厨房? なんだそれ?」
「世界征服を企む、いわゆる、『国境のない悪の組織団』だ。私は今まで10年間、その人肉厨房に捕らえられ、おぞましい実験を続けさせられてきたのだ」
 
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