気まぐれシネマレビュー

#194 伏線回収のお手本がこれだ！ ～ラストマイル～

　テレビドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の監督・塚原あゆ子と脚本家・野木亜紀子が再タッグ、両シリーズと同じ世界線で起きた連続爆破事件の行方を描くノンストップサスペンス。
　主題歌も両作に続き米津玄師が担当。


・主人公・舟渡エレナ：満島ひかり、梨本孔：岡田将生
・捜査担当の刑事：「アンナチュラル」の大倉孝二と「MIU404」の酒向芳
・他に「アンナチュラル」から石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、松重豊、「MIU404」から綾野剛、星野源、麻生久美子らが出演。

【あらすじ】
流通業界最大のイベントである11月のブラックフライデー前夜、世界規模の大手ショッピングサイトから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生し、やがて日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展。センター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔とともに事態の収拾にあたる……。

　この作品の特徴は、なんといっても予告編が超がつくほどつまらないこと。
　なんというか、主人公の満島ひかりが大企業のために粉骨砕身で働く社畜みたいで感情移入できないし、「アンナチュラル」や「MIU404」とのシェアードユニバースという売り出し方も、それだけ中身がないことの表れかとつい勘ぐってしまいたくなる感じで…。
　まあ、それでも、あの傑作テレビドラマ『アンナチュラル』の脚本家＆監督の作品だから、きっとそれなりのものなのだろうと、半分賭けの気分で見に行ってきたのですが…。
　なんと、これが、大正解！

　野木亜紀子さんの脚本、さすがですねえ。
　先が読めない展開にどんどん引き込まれて行ってしまう上に、伏線回収の見事さと言ったら！
　ミスリードもなかなかだし、暗号みたいなものも登場するし、殺人は起こらないのにミステリ趣向満載。
「これはどうだったんだ、後で突っ込んでやるからな」という筆者の邪悪な企みはラストまでですべて粉砕され、視聴後はもう、うーんと唸ることしかできない始末。
　今まで見てきた途中で眠くなるつまらないドラマや映画の逆を行く用意周到な作り込み具合でした。
　ただ一つ、真犯人の動機が弱い気がしないでもないですが、終盤の凄絶なワンシーンがその疑問をもねじ伏せます。
　また、「アンナチュラル」「MIU404」のメンバーも、思った以上に有機的に物語に絡んでおり、単なるサクラを超えた待遇にはそれなりに満足でした。むろん、この二作を未視聴でも十分本編は楽しめますし、主役のひとり、満島ひかりのキャラ造形も最終的には予告編での印象とは180度変わります。

　しかし、以前、NHKの深夜ドラマで宅配便のドライバー役を好演していた”彼女”が、まさか同じ業界を舞台にしたこの作品で、あのような役を務めることになろうとは…。

　ネタバレになるのでこれ以上書けませんが、これも制作者側の狙いのひとつだったのでしょうかね。