気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#185 1回見ただけじゃわからない…ですよね? ~オッペンハイマー~

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 言わずと知れたアカデミー賞7冠の、クリストファー・ノーラン監督作品です。

【あらすじ】

第二次世界大戦下のアメリカ。
極秘に立ち上げられたプロジェクト“マンハッタン計画”に参加したJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、優秀な科学者たちを率いて世界初の原子爆弾を開発する。
しかし、原爆が実戦で投下され、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩。
その後、冷戦や赤狩りなど、激動の時代の波に飲み込まれていく……。

【感想】
 とにかく、登場人物が多い。
 さらに言えば、さすが「TENET」や「メメント」の監督だけあり、構成が複雑。
 なので、1回見ただけでは、いろいろわからない部分があったな、というのが正直なところでした。
 筆者が特別アホなのかな、と思いましたが、あちこちで同様の意見を聞くにあたり、納得した次第。

 そもそも、映画は2つのパートを交互に語る形式で進みます。
 かたや、物理学者オッペンハイマーが、共産主義者との関連を疑われ、聴聞会で尋問を受けるパート。
 もう一方は、彼と対立する米国原子力局長官ストローズが、商務長官の承認公聴会で聴聞されるパート。
 前者がカラーで後者がモノクロなため、後者が過去の出来事かというとそうではなく、そのように思い込んで見ると混乱します。
 結局、オッペンハイマーは公職を追放され、ストローズは商務長官に承認されずに終わるのですが、その二つの公聴会の合間に、ニューメキシコ州に建設されたマンハッタン計画用の極秘施設、ロスアラモス研究所で原爆が開発されるさまなどが描写されます。

 日本での公開が遅れた理由が様々に喧伝されていましたが、
 原爆実験が成功した時の関係者たちの喜びよう、
 広島・長崎に原爆が落とされた時の米国一般大衆の熱狂ぶり。
 確かにこのあたりの描写にはかなりな違和感を覚えます。
 そこに被爆者たちの姿を重ねて想像するオッペンハイマー以外は、誰一人として原爆投下を悪として見ていない。
 そんな印象を受けてしまいます。
(むろん、アインシュタインをはじめとする一部の科学者などは別なのですが)
 広島、長崎の惨状を描写しなかったのは手落ちだという批判もわからないではないけれど、これはあくまで一人の天才物理学者の伝記なので、彼が内面でそれを痛いほど悟っている以上、その必要はないのかもしれません。

 通して強烈なインパクトを与えてくれるのは、主人公の愛人と妻。
 このふたりの女性の生きざまというか性格というか。
 それがこの難解な映画に並々ならぬ推進力を与えているような気がしたのは、筆者だけでしょうか。
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