気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#159 凄いものを見てしまった・・・ ~仕掛人 藤枝梅安~

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 TVドラマ『必殺シリーズ』でおなじみの仕掛人梅安。

 今回は豊川悦司主演でのリニューアルです。

 昔、小説も何冊か読んだのに、今回映画を見て、え、こんな話だったのかとびっくり。

【あらすじ】

 鍼医者の表の顏と仕掛人の裏の顔を持つ藤枝梅安。

 相棒は楊枝職人の彦次郎。

 ある時、元締めからとある有名料亭の女将を始末する仕事を請け負った梅安は、ターゲットの女をひと目見て驚愕する。それは幼い頃生き別れた妹のお吉だったのだ。
 かたや彦次郎は、別の元締めからの浪人殺しの依頼を引き受けるが、その浪人を調べるうちに、彼が元主人の藩主の暴虐から娘を救い出し、逃亡中の身の上であることを知るー。

【感想】

 いやはや、久しぶりに本物のドラマを見せてもらった気分です。
 複雑ながら筋の通った瑕瑾のないストーリー。
 本格時代劇らしい暗いトーンの落ち着いた画像が、重厚なドラマにぴったりです。
 豊川悦司の梅安は、テレビシリーズの第一作で緒形拳が演じたどこかおちゃめな梅安とは違い、終始淡々とした大人の雰囲気を漂わせています。
 彦次郎との関係性も、テレビシリーズのように掟だなんだと格式張ったモノではなく、互いに料理をごちそうし合ったり、「今夜は泊っていきなよ」と相手をいたわったりと、なんともいえずほのぼのとしていていい感じ。
 それでいて二人が背負う過去はあまりに陰惨で、時折挟まれる梅安の子供の頃のエピソードなどは、あの『砂の器』を見ているようで涙なしには見られません。
 おなじみの鍼を使った殺しの場面も、テレビ版と似ているようで違うのは、これはいかにも殺してるなと思わせる緊迫感のある刺し方。耳になじんだあのBGMはむろんありませんが、ああでもやっぱりこれは間違いなく仕掛人なんだと妙に納得してしまいます。
 梅安が実の妹を手にかけるラストシーンは本当に感涙もの。
 2部作なので、続編では梅安たちが命を救った例の剣術使いの若者が仲間になりそうです。

 ドラマ性といい、エンタメ性といい、芸術性といい、
 まさにどこにも文句のつけようのない至高の一品とでもいいましょうか。


 なんか、アニメに押されてこういう良作の上映会数が減らされるのは納得がいきませんが、とりあえず、4月公開の続編が楽しみです。
 
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