気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#153 リアルとファンタジーのカオス ~ブラックパンサー/ワガンダ・フォーエバー~

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『ザリガニが鳴くところ』かこの『ブラックパンサー2』か、ずいぶん悩んだ末、こっちを観ました。

 理由は、最近劇場で鑑賞したものが、地味で渋いミステリーやホラー系ばかりだったからです。


 あらすじはこんなふう。

 謎の感染症で王ティ・チャラ(ブラックパンサー)を失ったワガンダ。

 悲しみに暮れる妹のシュリをはじめとする家族、国民たち。

 そこに、ウガンダが独占するハイパー鉱石『ヴィブラニウム』を狙ってアメリカなどの大国が手を伸ばしてくる。

 そんなウガンダに、同盟を組もうと接近してきたのが、海中帝国タロカンの王、ネイモア。

 シュリにその申し出をはねつけられたネイモアは、ワガンダに攻撃をしかけてくるのだがー。


 正直、「長い!」というのが第一でした。

 予告編とか入れると3時間くらいになる。

 2020年に死去したチャドウィック・ボーズマン(前作『ブラックパンサー』の主人公を演じた人)に対する制作陣の追悼の意は十分伝わってくるし、誠意をこめて作られた映画だとは思います。

 だがしかし、やたら長く感じられるのはやはり、

 前作が破綻なくしっかりまとまっていた良作だったのに比べて、如何せんアラが目立つというか…。

 これは好き嫌いのレベルの問題かもしれませんが、やはり一番引っかかるのが、新たな敵、海中帝国タロカンの設定。

 大航海時代、アステカやマヤみたいにスペイン人に追われたメソアメリカの原住民族が、神に導かれて謎の草を食べ、水陸両用の躰になって海中に逃げ、そこで一大帝国を築いた・・・。

 まあ、元がアメコミなんだから設定などどれだけ突飛でもいいわけですが、ならば別にアトランティスやムーの子孫でもよかったのでは?

 それに王様のネイモアのビジュアルが、”踵に羽根の生えた海パン一枚のおっさん”というのが、どうにも冴えない。
(実際問題として、DCのアクアマンのほうが強そうなんだが・・・)

 そして肝心の新ブラックパンサー。

 体格があまりに華奢で細身なため、ネイモアとの格闘シーンなど、『美少女仮面ポアトリン』でヒロインが怪人にボコられている場面を見るようで、そこはかとなくサディスティックな倒錯心をくすぐられてしまうほど。

 終盤、新たなキャラクター、アイアンハートやミッドナイトエンジェルなんかが画面に花を添えてくれますが、どっちも小粒感は否めないような…。

 個人的によかったのは、序盤の国連総会のシーンとオコエのキャラ、そしてエンドクレジット後の真のラスト。

 総合的に言えるのは、前作がすごく好きな人にはたまらない映画なんだろうな、ということでしょうか。 
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