気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#151 倍速視聴に最も向かない映画 ~RAMB(ラム)~

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 RAMB(ラム)はずっと気になっていた映画なのですが、なんとまだ上映されていたので、ついに観てきました。
 
 公式サイトの紹介はこんなふう。


「話題作を次々と世に送り出す気鋭の製作・配給会社「A24」が北米配給権を獲得し、カンヌ国際映画祭で上映されるやいなや観客を騒然とさせた衝撃の話題作がついに日本上陸!

ある日、アイスランドで暮らす羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”の誕生を目撃する。2人はその存在をアダと名付け育て始めるが——。

主演・製作総指揮を務めるのは『プロメテウス』、『ミレニアム』シリーズで知られるノオミ・ラパス。監督は、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの特殊効果を担当、本作が長編デビューとなる北欧の新たな才能ヴァルディミール・ヨハンソン。衝撃的な設定の中にもリアリティを持った世界観を構築したことで世界から称賛を浴び、第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門で《Prize of Originality》を受賞、アカデミー賞®国際長編部門アイスランド代表作品にも選出されるなど批評家からも高い評価を受けた。

その存在はなぜ産まれてしまったのか?前代未聞の衝撃展開が、あなたの想像力を刺激するー。」

 A24というのは、新しいホラーとして話題になった『ヘレンダリー/継承』や『ミッドサマー』を配給した会社。
 ですから、この『ラム』もその系統です。

 この前触れた『渇きと祈り』のオーストラリアに続き、今度はアイスランドが舞台です。
 主人公夫婦はふたりっきりで羊飼いをしているのですが、土地がとにかく広い広い!
 『渇きと祈り』には少なくとも隣家や町が出て来たのですが、本作にはそれも一切なし。
 よくまあこんなところで暮らせるなあと途方に暮れるシーンが延々と続きます。
 その夫婦のもとに、首から上が羊で躰は人間という子供が産まれ(産んだのは飼っている羊の一頭ですが)、ふたりはそれを我が子として育て始めます。子供はアダと名付けられ(かつて二人が失った娘と同じ名前)、しばらく幸せな日々が続きますが、そこに夫のごくつぶしの弟が現れたことから事態が動き始めます…。

 ともあれ、ストーリー自体は非常にシンプルで、説明はほとんどありません。

 我々はわずかな会話の断片などから背景を推測するのみ。

 ですので、おそらくこの先この作品がアマプラなどで見られるようになっても、倍速で視聴したら何も面白くないということになりそうです。

 また、何も説明がないので、「会話で説明してくれないとわからない」という人にもまるで不向きです。

 つまりはこれ、どこが見どころか説明が難しい、ホラーなのに妙にアートな香りのする不思議な作品なのです。

 ともあれ、ところどころ挟まれるペットの犬や猫の視点で描かれる”災厄の到来”の気配は面白いですし、突拍子のないラストもなかなかです。

 神話的に解釈するレビューもいくつか見かけますが、ほぼ予定調和でないストーリー展開は、やっぱり海外の作品(ハリウッド映画を除く)ならではですね。

 やたら音だけ大きい、先の読めてしまうアニメ主流の邦画やアメコミヒーローものに飽きた方におすすめです。
 
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