気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
111 / 191

#108 泣けるガメラスピンオフ ~小さき勇者たち ガメラ~

しおりを挟む
 昭和ガメラはユニークな敵怪獣造形とゴジラにない残虐描写で子供たちの度肝を抜き、平成ガメラ三部作は、その圧倒的リアリティで大人怪獣ファンをノックアウトしました。

 そしてその7年後、2006年に封切られたのが、この『小さき勇者たち~ガメラ~』です。



あらすじ​[ウィキより]はこんなふう。

1973年、三重県志摩でギャオスの群れとガメラが戦い、ガメラは自爆し相打ちとなった。それを見た人々は、ガメラが自爆して人間を守ってくれたと感じた。その人々の中に相沢孝介少年の姿があった。 

それから33年後の2006年、孝介の息子・透は母親を亡くして初めての夏休みを迎えた。緋島に赤い光を認めた透は、赤い石とその上の卵を見つけ、掌の上で孵化したカメを部屋に連れ帰りトトと名付ける。 

トトは空中に浮かぶ能力を持ち、極めて成長が速かった。隣家に住む幼馴染み・西尾麻衣はトトが飛ぶカメ=ガメラではないかと疑うが、透はそれを否定しようとする。透に懐いたトトは数日で1メートルを越えるまでに成長したが、ある日透の前から姿を消す。 

落胆する透らを人を食う怪獣ジーダスが襲う。そこに立ちはだかったのは更に成長したトトであった。トトは満身創痍になりながら辛くもジーダスを撃退するが、自衛隊によって名古屋の研究機関に連れ去られてしまう。巨大化したトトを見た孝介はガメラだと確信する。 

名古屋には心臓手術のために入院していた麻衣がいた。麻衣はお守りとして透から渡された赤い石がガメラにとって大事なものであると感じる。これを聞いた透とその友達・石丸兄弟は避難所を抜け出して名古屋に向かい、書き置きを見た孝介も彼らを追って車を走らせる。その時ジーダスが名古屋港に現れた。これ以降、傷付きながらも立ち上がるガメラ、ガメラを助けようとする子供達、透と孝介の関係、透の決意を織り交ぜながらクライマックスを迎える。 

 
 トトの造形は、リクガメを元にした丸っこいもので、園子温監督の『ラブ&ピース』に出てきた亀怪獣にそっくり。
 ファミリーがターゲットのジュブナイルだから仕方がないと言えばそうなのですが、平成ガメラの精悍さを期待すると、肩透かしを食わされてしまいます。
 ただ、見どころは色々あります。
 まず、敵怪獣のジーダスはなかなかキモくていいです。初代ウルトラマン初期の怪獣や『シン・ゴジラ』第二形態をちょっと連想させる汚らしいキモさです。(褒めてます)
 それから、ヒロイン麻衣(夏帆)の透明感あふれる少女っぽさが何気に官能的です。
 そして何よりも感動的なのが、ガメラ(トト)にエネルギーアイテムの”赤い石”を届ける方法。
 名古屋の病院に入院している麻衣の手から、見知らぬ少年、少女たちの手から手へと、赤い石はバトンタッチされ、最後に危機に瀕しているガメラのもとへ。平成ガメラでは、人々の思いがマナとなって瀕死のガメラを復活させましたが、そのシーンが後半のメインになったようなもの。

 クライマックスの舞台は名古屋市内だし、テーマソングも美しく、なかなかの拾いものだと思います。
 
しおりを挟む

処理中です...