気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#86 北米で酷評される理由は? ~ターミネーター・ニューフェイト~

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『ターミネーター』は1~3を観て、4と『ジェネシス』は見ていません。

 だから、前作との比較は難しいのですが、ひと言で言って、『2』の美少年ジョンがお猿さんになっていて度肝を抜かれた『3』よりは数倍面白かったです。あれはあれで、女ターミネーターは格好良かったんですけどね。

 ストーリーはこんなふう。

 ある日ダニエラは未来から来た新型ターミネーターに襲われるが、同じく未来から彼女を守るためにやってきた強化人間グレースに助けられる。逃げる途中、弟を殺され、窮地に陥ったところにサラ・コナーズ登場。バズーカ砲みたいなのをぶっ放して敵を足止め。新型ターミネーター出現の情報を送ってきた情報元を訪ねると、それはなんと、ジョンを殺した旧型ターミネーターT-800の隠居所だった…。

 今作の見どころはなんといっても、強化人間グレースのカッコよさ。演じる女優さんは中性的な感じの背の高いキリンみたいな白人ですが、アクションがものすごい。同じくキャメロンの『アニータ』もアクションがすごかったけど、あちらが全編アニメチックであったのに比べ、こっちは見るからに痛そうな肉弾戦。彼女はロボットではなく人間なので、怪我をすると痛みを感じるし、長時間戦うとダメージが蓄積され、薬なしでは動けなくなる。そのグレースが、『2』の時のシュワちゃんのように命がけでダニエラを守ろうとする姿に感涙必至です。敵は『2』『3』同様、液体金属ターミネーターですが、これがまた無茶苦茶強く、それだけにボロボロになってまで戦うグレースの雄姿が引き立ちます。グレースやサラ、そしてシュワちゃんたちに支えられながら、ダニエラが徐々に将来世界を救うリーダーとなる資質を開花させていく過程などもよく描かれており、傑作だった『2』の熱さを思い出させてくれる好編だったと思います。

 ところがこの新作、お膝元の北米ではかなり不評で、評論家からも酷評が続いているとのこと。なんで? こんなに面白いのに? と原因について考えてみたのですけど、それはおそらく、白人の美少年ジョンが殺され、その後を継ぐ主役のダニエラがメキシコ系の有色人種だったからじゃないかと思い当たった次第。国境の壁の描写も出てくるし、トランプ政権の下でこの設定は鬼門だったのかもしれませんね。

 ともあれ、そんな事情には無縁の我々日本人が見る分には良質のアクション映画ですので、『1』『2』がお好きな方は、ぜひご覧ください。


 
【追記】
 
『ドラクエ』を卓袱台返ししたあの山崎監督が、今度は3Dで『ルパン3世』を制作したとのこと。恐るべし。まったく、懲りない人だ…。

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