気まぐれシネマレビュー

戸影絵麻

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#72 心底びっくりした映画 ~エスター~

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 ミステリでもホラーでも、慣れてくると大抵のことでは驚かなくなるもの。

 そんな私ですが、心の底からびっくりした作品が2つあります。

 ひとつはミステリ小説で、依井貴裕の『歳時記』。

 (この作品のぶっ飛んだトリックは、一生に一度ものの、ホントとんでもない一発ギャグなのです。)

 映画では、今回ご紹介する、この『エスター』です。



 ウィキによるあらすじは、以下の通り。


かつて3人目の子供を流産したケイト・コールマンとその夫のジョン。彼らはその苦しみを癒すため、孤児院からエスターという9歳の少女を養子として引き取る。少々変わってはいるが年齢の割にしっかり者で落ち着いており、すぐに手話を覚えて難聴を患う義妹のマックスとも仲良くなるエスター。だが共に生活する中で、やがて彼女は常に手首や首にリボンを着けていたり、入浴の際は必ず入り口を施錠したりと、謎の習慣を垣間見せ始め、それらと同時に徐々に恐ろしい本性を見せ始めるのだった。 

 これを読む限りでは、「なーんだ、よくあるネタじゃん。要は『オーメン』の焼き直しでしょ?」

 そう思われるかもしれません。

 ところがどっこい。

 この作品には、オカルト要素は一切ありません。

 なのに、終盤、エスターの正体が暴かれると、

「おおーっ! そう来たか!」

 と思わず感動してしまいます。

 そこに立ち現れるのは、なんとも歪んだエロティシズム。

 ファミリーものの雰囲気を一気に塗り替えるそのダークな世界観には、本当に鳥肌が立つほどです。

 その落差のすさまじさは、『オーメン』が、ディズニー映画に見えてくるくらい。

 ちなみに始終陰惨で血まみれのこの映画。

 唯一の救いは、エスターの義妹のマックスのけなげな可愛らしさ。

 マックスは補聴器の外せない難聴の幼女で、会話も手話でしかできないのですが、いくらエスターにいじめられてもめげることなく、最後は母親を救うために彼女に立ち向かっていきます。

 まあ、これは実際に見てもらうしかないのですけど、このマックス、もう、無条件に可愛いとしかいいようがありません。
 
 良質のホラーサスペンスをお好みの方には、おすすめの一本です。

 ちなみに、エスター役を務めるイザベル・ファーマンは、『ハンガー・ゲーム』なんかにもチョイ役で出ていましたね。とにかく、芸達者な女優さんであることは間違いないと思います。
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