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#55 事情はわかるんですが… ~空母いぶき②~
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さて、『空母いぶき』本編の感想です。ちなみに、原作未読。
あらすじは、謎の武装集団が、突如日本の領域内の島を占拠。それを『いぶき』が助けに行く話。
正直、序盤のリアリティのなさが、映画全編の致命的な足かせとなっている。
そんな感じ。
武装集団の正体は、『東亜連邦』なるテロ国家(?)。
どうやら東アジアにあるらしく、地図にはフィリピンあたりに『東亜連邦』なる文字が。
もうこの時点で私の頭には「?」が浮かびっ放し。
なにこれ東亜連邦って?
連邦というからには、フィリピンも入ってるのだろうか?
でも、フィリピンって親日では?
ひょっとして、これ、ASEAN(東南アジア諸国連合)の発展形?
原作は、中国が尖閣諸島や与那国島を占拠するという設定だそうで、当然のことながら、そっちのほうが断然面白そう。
村上龍の『半島を出よ』もそうだったけど、漫画や小説ではこういうシミュレーションが可能なのに、映画ではできないというのは辛いですね。スポンサーサイドの問題とか、色々あるのでしょうけれど。
次に、「防衛出動」に至るまでの官邸のゴタゴタが描かれるのですが、『シン・ゴジラ』を見てしまった目には、これが中小企業の経営会議にしか見えない。まず、出席者数が少なすぎだし、特にしつこく「防衛出動」を総理に迫る外務大臣は、カイシャのパワハラ上司みたいで本当に嫌。だいたい、一介の大臣が総理にこんなため口きいていいのだろうか?
それから、敵艦隊といぶきとの戦闘シーン。
かつて、『ローレライ』という潜水艦映画がありました。3発目の原爆の東京投下を阻止するという絶対不可能な任務を遂行するために、役所広司演ずる艦長に率いられた特殊潜水艦が、単身真珠湾に乗り込む話です。
荒唐無稽な設定ではありながら、危機に次ぐ危機を満身創痍になりながら切り抜けていったローレライに比べると、護衛艦や潜水艦に守られたいぶきはほとんど余裕です。
だから、敵の攻撃と攻撃の間が間延びしていて、つい眠くなる。
攻撃の仕方も防御方法も、毎回同じだし。
そして掟破りのラストのオチ。
確かに、一応現実的ではあるし、所々に伏線も貼ってあったけど…。
華々しく有終の美を飾って海に消えていったローレライに比べると、「え? それでいいの?」「結局、それって他力本願すぎでは?」と思わず突っ込みたくなること請け合いです。
なんか、外務省が陰の立役者みたいな扱いになっていたけど、垣根涼介の『ワイルドソウル』を読んでる最中の私には、どうにも納得がいきませんでした。あの大臣、ほんと、最悪だったし。
ほかに、「降ります!」と言った舌の根も乾かぬうちに「やっぱり乗せてください」と急に態度を変える本田翼の謎の行動。
艦長の西島をどう思っているのかわかりにくいサイコな表情の副艦長佐々木蔵之介など、色々突っ込みどころの多い映画ではありました。
コンビニ店長中井貴一のクリスマスメッセージが結果的に世界を救う、という構図も悪くはなかったんだけど。
リアリティにこだわらなければそこそこ楽しめる映画なのかもしれませんが、根底が「?」設定のせいで、主人公たちの台詞が机上の空論めいて聞こえ、私にはどうも最後まで説教臭くてなりませんでした。
あらすじは、謎の武装集団が、突如日本の領域内の島を占拠。それを『いぶき』が助けに行く話。
正直、序盤のリアリティのなさが、映画全編の致命的な足かせとなっている。
そんな感じ。
武装集団の正体は、『東亜連邦』なるテロ国家(?)。
どうやら東アジアにあるらしく、地図にはフィリピンあたりに『東亜連邦』なる文字が。
もうこの時点で私の頭には「?」が浮かびっ放し。
なにこれ東亜連邦って?
連邦というからには、フィリピンも入ってるのだろうか?
でも、フィリピンって親日では?
ひょっとして、これ、ASEAN(東南アジア諸国連合)の発展形?
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村上龍の『半島を出よ』もそうだったけど、漫画や小説ではこういうシミュレーションが可能なのに、映画ではできないというのは辛いですね。スポンサーサイドの問題とか、色々あるのでしょうけれど。
次に、「防衛出動」に至るまでの官邸のゴタゴタが描かれるのですが、『シン・ゴジラ』を見てしまった目には、これが中小企業の経営会議にしか見えない。まず、出席者数が少なすぎだし、特にしつこく「防衛出動」を総理に迫る外務大臣は、カイシャのパワハラ上司みたいで本当に嫌。だいたい、一介の大臣が総理にこんなため口きいていいのだろうか?
それから、敵艦隊といぶきとの戦闘シーン。
かつて、『ローレライ』という潜水艦映画がありました。3発目の原爆の東京投下を阻止するという絶対不可能な任務を遂行するために、役所広司演ずる艦長に率いられた特殊潜水艦が、単身真珠湾に乗り込む話です。
荒唐無稽な設定ではありながら、危機に次ぐ危機を満身創痍になりながら切り抜けていったローレライに比べると、護衛艦や潜水艦に守られたいぶきはほとんど余裕です。
だから、敵の攻撃と攻撃の間が間延びしていて、つい眠くなる。
攻撃の仕方も防御方法も、毎回同じだし。
そして掟破りのラストのオチ。
確かに、一応現実的ではあるし、所々に伏線も貼ってあったけど…。
華々しく有終の美を飾って海に消えていったローレライに比べると、「え? それでいいの?」「結局、それって他力本願すぎでは?」と思わず突っ込みたくなること請け合いです。
なんか、外務省が陰の立役者みたいな扱いになっていたけど、垣根涼介の『ワイルドソウル』を読んでる最中の私には、どうにも納得がいきませんでした。あの大臣、ほんと、最悪だったし。
ほかに、「降ります!」と言った舌の根も乾かぬうちに「やっぱり乗せてください」と急に態度を変える本田翼の謎の行動。
艦長の西島をどう思っているのかわかりにくいサイコな表情の副艦長佐々木蔵之介など、色々突っ込みどころの多い映画ではありました。
コンビニ店長中井貴一のクリスマスメッセージが結果的に世界を救う、という構図も悪くはなかったんだけど。
リアリティにこだわらなければそこそこ楽しめる映画なのかもしれませんが、根底が「?」設定のせいで、主人公たちの台詞が机上の空論めいて聞こえ、私にはどうも最後まで説教臭くてなりませんでした。
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